虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

物作りの会社の社長は理科系出身者が相応しいのでは?


最近、弟が買ってきた「ヤカン(ケトル)」、1000円弱の値段で2.5l入りで、しかも中国製でした。
 品質はいいようです。このようなローテクの製品の製造ノウハウは、あっさり中国に移転させているのですね。
 私は、物作りを行なう会社の社長は、理科系の人が文科系の人より向いていると思います。技術の凄さ、怖さを本当に知っているのは、理科系の人であるとおもっていまして、技術を中国などに安易に教えるのは、文科系の感覚かと思うのです。



 試しに調べてみると、奥田碩(ひろし)氏(前トヨタ社長、日本経団連会長)は一橋大学商学部御手洗富士夫氏(前キャノン社長、日本経団連会長)は中央大学法学部・・・と、ばりばりの文科系でした。
カルロス・ゴーン氏はフランスのエコール・ポリテクニクという理科系大学卒業なので例外ですが。理系も理系、理系のエリートですね。


 アメリカで土下座せんばかりだったトヨタの現社長・豊田彰男氏は慶応大学法学部・・・あまり期待できないようです。ユニクロ柳井正氏は早稲田大学政経学部安倍晋三内閣で、雇用をめぐるトンデモ発言の数々で物議を醸した(「格差論は甘えです」「労働基準監督署はいらない」「祝日もなくすべき」など)奥谷禮子甲南大学法学部出身です。まあ、この奥谷という人は人材派遣会社の社長なので、理科系の会社の社長とは言えないでしょうけど、理科系の学生を派遣するのであるなら、その意味で理科系出身者に関わるでしょう。


 また、これは「物作り」を標榜していたソニーが、ハワード・ストリンガーという、カーネル・サンダースのような顔つきの、オックスフォード大学で歴史を学んだ元ジャーナリスト、メディアプロデューサーに会社の実権を渡し(社長兼会長のCEO)、いいように会社に寄生することを許しているのも、「物作り」の基本を忘れたからでしょう。


ここで挙げた社長たち、カルロス・ゴーン氏を除き、全員文科系でした。


文科系の社長がダメだった例として、2000年の6月から7月まで、日本を震撼させた「雪印集団食中毒事件」があります。wikipediaより。


事件直後の7月1日に行われた会社側の記者会見では、大阪工場の逆流防止弁の洗浄不足による汚染が明らかにされた。大阪保健所も、それ以上の原因追及は行わなかった。
しかし、大阪府警のその後の捜査により、大阪工場での製品の原料となる脱脂粉乳を生産していた北海道の大樹工場(北海道広尾郡大樹町)での汚染が原因であることが判明した。2000年3月31日、大樹工場の生産設備で氷柱の落下による3時間の停電が発生し、病原性黄色ブドウ球菌が増殖して毒素が発生していた事が原因であった。同社は、1955年(昭和30年)にも八雲工場(北海道山越郡八雲町(当時))で同様な原因による雪印八雲工場脱脂粉乳食中毒事件を起こしており、事故後の再発防止対策にも不備があったと推測される。

 (中略)

その際、報道陣にこの事件を追及された当時社長だった石川哲郎は、エレベーター付近で寝ずに待っていた記者団にもみくちゃにされながら、会見の延長を求める記者に「では後10分」と答えたところ「何で時間を限るのですか。時間の問題じゃありませんよ。」と記者から詰問され、「そんなこと言ったってねぇ、わたしは寝ていないんだよ!!」と発言。一方の報道陣からは記者の一部が「こっちだって寝てないんですよ。そんなこと言ったら食中毒で苦しんでる人たちはどうなるんだ!」と猛反発。社長はすぐに謝ったが、この会話は広く配信され、結果的に雪印グループへの不信をもたらす結果となってしまった。


この社長、石川哲郎氏は、経理畑の出身で、当時の雪印は、現場の責任者、営業、経理から替わりバンコで社長にしており、上述の不祥事は、文科系の社長のもとで起きたのです。もちろん、製造現場でなにが起きているか把握できない・お飾りの社長だったのですね。



この文章、文科系の良さについては特に触れませんでしたが、いいところはあると思います。交渉が上手いとか、すぐ友人を作れそうとか。
なお、こんな記事を書いたのは、日本で出来る仕事を安易に中国に移転することによって、人件費はやすくあがっても、日本国内の同一産業は衰退していったという、お先真っ暗な事実があるからです。秘すべきもの、それは技術。



今日のひと言:大学でやる勉強量では、文科系の学生は理科系の学生にとても及びません。(←司法試験を目ざす人は別として)その理科系の学生が社会にでると目立たなくなるのが世の常ですが、それはもったいないことだと思います。もっと理科系の学生の活躍する場が必要だと思います。理科系に薄い社会では、理科系の優秀な人材は海外に流出してしまい、国力が衰えてしまいますね。グーグル創立者の一人、ブリン氏も、ロシアから頭脳流出した口ですね。そうまでの人でなくても、自分の持つ技術を中国などに教える「渡りの職人・技術者」にはことかかなくなるでしょう。

 今回のブログは FTGFOPさんのブログ
http://d.hatena.ne.jp/FTGFOP/20100906

へのコメントをもとに、膨らませたものです。



 なお、今、福島第一原発で矢面に立っていて、現在入院中の東電社長の清水正孝氏は慶応大学経済学部卒、代役に立った東電会長の勝俣恒久氏は東大経済学部卒、東電は物つくりの会社ではありませんが、本来理科系の社長がふさわしいはずであるこのケースも、私の主張の範囲に入るか、と思います。

理系バカと文系バカ (PHP新書)

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今日の一首


嘴(はし)絡め
睦み合いたる
鴉(からす)二羽
歩く犬みて
散り散りになる

  (2011.03.29)