「君」と「お前」(散文詩)
私が幼いころの無二の親友だった男の話です。
お互いを「もりった」「まつった」と呼び合い、よくお互いの家に遊びに行った間柄です。
「まつった」の実家は「雑貨商」であり、私(もりった)が彼(まつった)の家に行った際、私は駄菓子を買い、店主(まつったの父)が店の奥に行ったさい、「手間を省いてあげようと」レジに手を掛けたとき、店主に見咎められ「何をする!お前、手癖が悪いぞ」と叱られ、遊びもそこそこに「まつった」の家をあとにし、以後「まつった」とは疎遠になりました。(小学校低学年のころのお話です。)
そして、成人してからずっとあとに、私は「まつった」とTELで会話をすることがあり、あのことについて話したところ、彼は「あのオヤジならありそうだ」と言っていました。
それからまた何年かして、「まつった」にTELしたところ、こんどは、私のいまは亡き母が、家に友達を上げる際、「足を洗わせていた」という話を「まつった」から聞きました。
お互いの両親に振り回されつつ私たちは交友していたというわけですね。その時のTELでは、話題が「音楽」になりましたが、お互いを、私は「君」、彼は「お前」という人称代名詞で通しました。
私から見て、「まつった」は「お前」ではなく「君」というのが妥当に思えたし、
彼からは「もりった」は「君」ではなく「お前」というのが妥当に思えたのでしょう。
この食いちがいは何なのか、気になるところです。小学校低学年以降、接点がなかった私たちは、それぞれ違う道を歩んできたことは確かなようです。お互い、誠意を尽くして会話が出来たのだから、それはそれでいいのかも知れませんね。
- 作者: 三輪正
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2000/02
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 野坂昭如,秋山駿
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1988/10/03
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る