虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ネオニコチノイドの恐怖・・・何が安全なのか?


 (化学物質特集  その3)
 以前、と言っても今年発売の「週刊文春」に乗っていたコラムで、要注意な記述がありました。


 それは、最近世界各地で、ミツバチが大量に死んでいるという現象です。


その理由は、複合性も考えられると見られるとの前置きのあと、新しい農薬・ネオニコチノイド(殺虫剤)による寄与が大きいといった感じの記事でした。


 もしも、ミツバチが死に絶えると、ミツバチを受粉のメッセンジャーとしていた植物のほとんどが、全植物に占める植物の80%もの植物が全滅するという大変な結果が予想されるというのです。この事態は、ハチミツという生産物そのものが取れなくなるより危ないと危惧されるのです。野菜が食卓に上らない!!



 そこで、『「悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」』(船瀬俊介:三五館)を読んでみました。


 この本は、ミツバチの大量死(CCD:蜂群崩壊症候群:Colony Collaspe Disorder)の原因はネオニコチノイド(系農薬)であると確信して書かれていて、他の原因についてはあまり記載がありません。(ここは、ちょっと欠点。)


 ただ、2006年4月、フランスの最高裁判所ネオニコチノイドは「黒」だと断定し、使用禁止にした、という事実が挙げられています。CCDに苦しんだ養蜂家たちと、熱心な判事が情報を集め、禁止においこんだとのこと。(150P以降)


 ネオニコチノイドを開発したのはドイツのバイエル社であり、この農薬は、人への急性毒性が低く、有害昆虫の中枢神経に作用するため、これまで使われてきた有機リン系農薬に換わりうるという触れ込みでした。
 

 でも、影響は益虫であるミツバチにも及んだというわけです。


例えば「イミダクロプリド」(ネオニコチノイドの一種)の場合、種を蒔く時点で種にコーティングされており、生長した植物にたかった昆虫はみな害を受けるのです。また、一回空中撒布すると、従来の農薬が100m円内に影響圏が限定されていたのに対し、ネオニコチノイドは4km円内にまで拡散するというのも見逃せません。ハチミツにもしこの危険な農薬が含まれているなら、ミツバチと中枢神経のシステムが似ている我々人間も神経毒でやられるかも知れません。ネオニコチノイドは無味無臭で、ミツバチたちが見分けられないということもあるようです。有機リン系の農薬ならば、違和感があるので、ミツバチは忌避するようですけど。


 ただ、その「薬効」のほどは、自然農法(天敵農法)で栽培した野菜とネオニコチノイドを使用した野菜の収量を比較すると、自然農法のほうがすぐれているという驚愕の事実が語られます。(73P以降)

 

あと、意外とこの農薬が身近である例として、2例挙げておきます。
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/archiv/pesticide/insecticide/neonicotinoidx.htm
ネオニコチノイド」より


1) イヌ、ネコ用の防ノミ、防ダニ薬の「フロントライン」。ここで、一度塗布されると、1,2ヶ月はノミ、ダニがたからないのは、フロントラインもネオニコチノイドの一種だから。これって・・・マダニによって媒介される「バベシア症」が怖いから使用するのですが、イヌにも長期的には悪影響を受けることもあるかも知れません。痛し、痒しですね。


2)シロアリ駆除剤にもネオニコチノイドが使われ、効果が長続きする。でも、これって、「シックハウス症候群」の誘引物質の一つであることを示唆しますね。




今日のひと言:人間が作りだすものはろくなものではないですね。それから、ネオニコチノイド、分解されても毒性は下がるかというと、さにあらず、より毒性のある代謝物になることもあるとか。


悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」―ミツバチが消えた「沈黙の夏」

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