虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

再びタンタルについて・・・ケータイ電話を支えるもの



皆さん、タンタルって知ってますか?知ってるわけないですね。もし知っていたらあなたは鉱物マニアか、NHKスペシャルを見た人でしょう。

タンタルというのはレアメタル(稀少鉱物:プラチナとかもレアメタル)の一つです。主に携帯電話などのCPUに安定した電流を送るために、超小型コンデンサーとして使われています。

このタンタル、どこで採れるかというと→アメリカ・カナダ・オーストラリア・コンゴ民主共和国(旧ザイール)などです。コンゴと聞いてピンと来る人は一般教養オッケーです。そう、1998年からコンゴは内戦状態にあるのです。総人口5000万人のうち300万人以上がすでに戦火の犠牲となって帰らぬ人となっています。そして僕たちが何気なく使っている携帯電話の中のほんの小さな部品が、この内戦の原因の一つでもあるのです。


タンタルは主にスズ鉱石の中に含まれているのですが、コンゴではこれを手で掘り出しています。内戦前、彼らは主にイモ類などの食物を作って生産していました。しかし、世界的にタンタルの需要の高まる中内戦が勃発。もはや畑仕事などできなくなった彼らにとって、タンタル採掘は生活そのものなのです。3ヶ月以上何も採れないこともあります。内戦以前に比べて安全対策も適当になり、常に生き埋めになる可能性をはらんだ危険な仕事です。しかし彼らが生きていく為にはそうするしかないんです。

最底部に位置する採掘者たちは3ヶ月に一度ほど、家から5〜10kmほど離れた市場に取ったタンタルを売りに行きます。相場としては1kgで3000円程です。ちなみに僕たちの携帯の中に入っているのは数g。しかし内戦下、しかも今や内戦を長引かせている一番の要因ともいえるタンタル。売りに行くだけでも容易ではありません。

こlれは、平和ということ」というブログにあった記述です。
http://www.ne.jp/asahi/sho/kcl/Y's/heiwatoiukoto.htm

 このように、レアメタルであるタンタル(Ta)は、原産国であるコンゴの治安にも影響を与えるのですね。私は以前、投資家の目からタンタルを取り上げましたが、
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080310
:私はどうゼクシイを読んだか?

その視点というのは、原産国での不条理に支えられたメリットなのですね。私もとっぷりと資本主義社会に漬かっているのだな、と思います。それにしても、畑作を放棄せねばならぬほどの戦災なのでしょうか。まるで、足尾鉱毒事件の被害農民が、足尾精錬所で働くことに当たるような気がします。また、


 国連の専門家により準備された報告書には、コンゴ資源の収奪に直接参加した西側企業が挙げられ、欧米への原料の運搬図式が提示された。全ては、現地指導者(彼らは、1kg当たり平均10ドルで採掘者から鉱石を買い付けている。)から始まり、通常、ロシア人及びウクライナ人飛行士が乗った民間機がチャーターされ、ルワンダキガリ)又はウガンダの首都(カンパラ)に貨物が運搬される。その後、その所有者が例外なくウガンダ(ヨヴェリ・ムセヴェニ)とルワンダ大統領の親戚(ポール・カガメ)及び軍高官である「国営」企業により購入された貨物は、輸送機(例えば、航空会社SabenaCargo)で、欧州の首都及び再加工工場に運搬される。

 世界には、コルンブ・タンタル鉱石の耐熱性タンタル粉末への再加工に従事する数社の企業、H.C.Starck(ドイツ)、Cabott Inc.(米国)、Ningxia(中国)及びウスチ・カメノゴルスクのウリビン冶金コンビナート(カザフスタン)が存在する。再処理後、タンタル粉末は、コンデンサーその他のハイテク産業の構成要素を生産する会社に売却される一方、製品は、移動体電話の組立工場に納入される。
 

以上の引用は
http://www.asyura2.com/0403/hasan35/msg/493.html
タンタル鉱石の主要な鉱床」より


今日のひと言:このように、タンタルは、世界に流れていくのです。そして、もっとも大きな需要は、携帯電話のコンデンサー。私たちもその恩恵に与っているのですね。これこそ、収奪および被収奪なのだと思います。ケータイ電話一台には、そんなドラマがあるのです。


図解入門よくわかる最新レアメタルの基本と仕組み (How‐nual Visual Guide Book)

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レアメタル資源争奪戦―ハイテク日本の生命線を守れ! (B&Tブックス)

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