虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「冷蔵庫のうえの人生」と「危険な関係」(書簡体小説の系譜)

* 「冷蔵庫のうえの人生」と「危険な関係」(書簡体小説の系譜)



 今年はじめの週刊文春で紹介されていた小説に興味を持って購入しました。それが「冷蔵庫のうえの人生:Life on the refrigerator door」(アリス・カイパース:Alice Kuipers/文藝春秋)。母と娘の2人きりの親子が、冷蔵庫のドアの上にメモを貼り付けてコミュニケーションをとる、というスタンスで書かれています。思春期の少女らしい行動をとる娘を牽制する母。「まだ15歳」だと娘を称する母と、「もう15歳だ」と主張する娘。やり取りの全てはメモでなされます。だから、直接、人間は登場せず、やり取りされたメモだけを切り取っているわけです。
 話が進んでいくにつれ、母が乳がんに冒されていることがわかり、メモのやり取りも煮つまっていきます。母は寝ていることが多くなり、娘は強く生きていくことを要求されるようになります。最後は、母が自分にとってかけがえのない人だったことを確認して、ドラマは終わります。

こんな感じのやり取りです。