虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

独裁者であれ、首長はいる方が良い。フセインとプミポン


 現在でも、イラク戦争の後始末にアメリカはてこずっていて、第二のベトナム化、泥沼化しています。(戦争自体がまだ続いているとも見られます。)
 フセインは確かにイラク内外にわたって悪事を働きましたが、それなりに治まっていたわけです。それをアメリカが先頭にたって攻めたため、フセイン政権は瓦解し(壊れ)、フセインその人も処刑されました。

 あとに残ったのは何でしょう?スンニ派シーア派の内紛がはじまり、血みどろのテロ地獄になっています。
 この内紛は、もともと宗派の教え(ルール)に違いがあり、フセインに優遇されていたスンニ派とそうでなかったシーア派の意識のギャップもからみ、根深い対立があります。

 このような事態になることは、アメリカの情報機関が分析して、警告していたのに、ブッシュと彼を担ぐ「ネオコン」がごり押しして戦争に踏み切ったという訳です。サダム・フセインが統治していた方が良かったとも言えるでしょう。

 なんとなれば、「大統領」という名の期限付きの国王ないし、議会制民主主義下の国王を、人は求めるようなのです。とにかく「首長」は必要なのです。

 フランスがその革命期に、ルイ16世を処刑はしたけど、あげくの果てに皇帝ナポレオン・ボナパルトを生み出すことに至ったのは、この「国王必要原則」であり、現在では、皇帝ではなく大統領という期限付きの国王を人は求めるのです。

 ところで、軍事クーデターのとき、タイ国のプミポンプーミポン)国王は、タクシン首相を追放した軍の判断を良しとしました。それって、おそらく華僑の出身のタクシン首相が漢民族=中国に莫大な利益を供与していたことが裏にあるのではないでしょうか?現にタクシン氏は2月にタイに戻る前、シンガポールに拠っていましたが、シンガポールは、華僑=中国が後押しする国なのです。
 タイの場合、賢明な国王がいるから、安泰なのだ、とタイ国人は思っているかもしれません。この場合、民主主義という概念は「選択肢」の一つに過ぎないのかも知れません。
 ただ、余りな暗君(=愚かな国王)が治世した場合、改善するのには、もはや内乱、クーデター、革命しか民衆の取りうる手段はありません。だから国王制の場合、王の権限は小さくするべきでしょう。

 期限付きの大統領制がもっとも進化した国王形態なのだけれども、イギリス風の「国王は君臨すれども統治せず」あたりも、一国が安定化する要件でしょう。いずれにしても国王は必要です。



今日のひと言:北野幸伯氏の主宰するメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」によると、ブッシュ政権イラク戦争に踏み切ったのは、フセインが石油を「ユーロ建て」で売ると宣言したため、それによってドルが世界唯一の基軸通貨でなくなることにあせったからであるとのことです。なんのことはない、イラク民主化を求めて行動したなんて、お笑い草です。


変見自在 サダム・フセインは偉かった

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タイ文字入門

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