虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

いじめ――ひとりぼっちの戦い――

 私は、いい年こいて、「いじめられた」ことがあります。それは、私が30代後半、シリコン(シリコーン)を大きなドラム缶から小さなドラム缶に入れ替える会社にいたときのこと。作業グループのリーダーは、ある女性従業員と仲が悪く、それを尻目に私が彼女とガーデニングの話題に盛り上がっていたことがありました。翌日から、私は一人での作業を強いられるようになりました。グループの他の4人はなかよく和気藹々と作業をしていましたが、私は受け入れられなくなったのです。幸い、私はそのときには作業を一通り自力で出来るようになっていたので、その点はOKでしたが、食事の際も「のけ者」にされました。


 さらに、そこは3K職場で、ドラム缶からドラム缶にシリコンを分けるポンプは、部品にまで分解して、トリクロロエチレントリクレン:発ガン性物質)で洗って次の工程に備えなければなりませんでしたが、当時の主任(我々メンバーより格上)は、この健康に有害な物質を防ぐマスクをなかなか購入してくれませんでした。私は、在庫の有効なマスクがなくなった時点で会社を辞めました。くやしいなあ。その後、私の家の近くのコンビニでそのリーダーに会い(彼はそこだけで求められるタバコを買いに来ていたのですが)、「あなた、いじめやっていたでしょう?」と話しかけると、以後そのコンビニには来なくなりました。うん、いじめる奴って、こんな程度の者なのでしょう。



 さて、学生の間で行われる「いじめ」って、どんなものでしょうか?私は「いじめ――ひとりぼっちの戦い――」を読んでみました。著者は「五十嵐かおる」(ちゃおコミックス:小学館)。



 このコミックスには5話、女子生徒間のいじめにまつわるお話が収められていますが、特にひどい事例だと思ったのは「きみに届く声」。女子中学生の集団万引のお話です。リーダー(灯村奈美江:ひむらなみえ)が、主人公(水野唯:みずのゆい)をむりやり万引団に誘い込み、万引を強要するお話です。実際主人公は万引きに手を染めますが、それでもあきたらず、みんなが店外に待機しているなかでの万引を強要されるのです。たとえ、それが悪の集団であろうとも、主人公はそれへの帰属を強要されるのです。「単独で万引をしなくては、仲間と認めない」というのです。これ以上なくエグイお話です。やらないと仲間でないと脅して万引をさせ、ババを引かせるのです。でも、店当局が、グループ全体の犯罪を、この哀れな主人公から暴露されたら、みんな捕まるのではないか、と思えるのです。まあ、浅知恵ですね、このリーダー。でも、主人公は、本当の友達(七瀬マキ:ななせまき)に助けられ、この悪の連鎖から逃れ得ます。



 このコミックス上、(作話的な要請からかも知れませんが)いじめをする側にはかならずリーダーが居り、すべて彼女の思い通りになってしまいます。(中には、親の社会的地位を学校に持ち込み、親が破産するとともに威光がなくなり、外の学校に転校して、ぼんやり過ごすという事例も描かれます。:「いけにえの教室」)そこでは、リーダーの威光の及ばない範囲にいる人が主人公を助けるというお話が多いです。だから、「ひとりぼっちの戦い」と副題をつけるより、「ふたりの共同戦線」としたほうがよりコミックスの内容に相応しいと思われます。現実に今も起きている「いじめ」の実態はどんなものなのでしょう?



 思い返すと、私には共同戦線を張れる仲間がいませんでした。遺憾です、くやしいです。



##五十嵐かおる(いがらし かおる、本名・五十嵐薫。1979年1月5日 - )は、日本の漫画家。新潟県糸魚川市出身。
1999年、「ちゃおDX 夏の増刊号」(小学館)に掲載の『はっぴい2フェスティバル』でデビュー。篠塚ひろむと同期。
「ちゃお」本誌登場当初は今井康絵に変わるタイアップ要員と見られたこともあった。しかし、その今井がタイアップ要員に戻ったことから、本誌でもオリジナル作品を描くようになったものの、伸び悩んでしまった。
その後、原明日美(「なかよし」)やももち麗子(「デザート」)の作品のような、問題提起型の作品を発表し、活路を見いだそうとしたが、結局本誌では上手くいかず、増刊枠の「ちゃおデラックス」に絞り込んでこの路線を続けていく模様。##
  以上引用はWikipediaから。


いじめ ―ひとりぼっちの戦い― (ちゃおフラワーコミックス)

いじめ ―ひとりぼっちの戦い― (ちゃおフラワーコミックス)


今日のひと言:今回とり上げたコミックは、群馬県の地方紙・上毛新聞(じょうもうしんぶん)の書評にとり上げられていたのを、面白いと思い買い上げたものです。