虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

中国・大芬村(だいふんむら)は、偽造絵画のメッカである

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11月27日だったろうか、TV朝日のイブニングニュースで、中国深圳市(しんせんし)龍崗区にあるアーティスト村のことが報道されていた。それによると、「画工」が流れ作業式に、西洋油絵を模写していた。あくまで「画家」ではなく「画工」である。ここは、西洋油絵を量産する工場なのである。
 この産業によって、以前は200人ほどだった大芬村は、現在1万人を数えるほどの盛況ぶりだという。


 彼らがやるのは、実際の絵画の写真などを元に、まがい物の名作を作り出すことにある。だから、同じ作品を模写するときには、画工の「癖」が出ないように、分担して行うとのことである。同じ絵を何枚も。「流れ作業」で絵画を量産するのだ。


 思えば、モネにせよ、ゴッホにせよ、ピカソにせよ、彼らの画法を編み出すために、どれほどの試行錯誤の苦しみがあったことか・・・・それを思うと、大芬村の事業自体が「まがい物」に見えてしまうのである。一つの色のおき方、タッチ・・・すべては、オリジナルの画家の著作権に帰すのだ。ただ、その足あとを技術的にたどるのは、大して困難なことではあるまい。


 一つの画像がある。出典は「中国現代アート」(牧陽一講談社選書メチエ)。
この本の中では、中国の体制の抑圧下にあった芸術家たちの悪戦苦闘が描かれているけど、やっぱり情けない作品が多いのだ。上の絵は有名なフランス絵画「民衆を率いる自由の女神」(byドラクロア)をパロディーにしているんだろうけど、みんな同じ顔をした「カエル男たち」が醜く映ってしまう。パロディーにもなっていない。これが中国アートの現状なのだろう。絵画の世界でも、中国はパクリ大国だ。



今日のひと言:模倣をしているうちに、本物になれる、と大芬村の関係者は語っていたが、志のない「画工」では、無理だと思うぞ。もっとも、オリジナルな絵画も売っているそうだが。なお、ここで絵を買う一般人旅行者は、「にせもの」なのを承知で買っているのだから、責めることもできまい。ただ、死後50年経っていないピカソの模造品などは、著作権上、完全にアウトである。

中国現代アート (講談社選書メチエ)

中国現代アート (講談社選書メチエ)

中国・美の名宝―日中共同出版 (2)

中国・美の名宝―日中共同出版 (2)

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