虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

量子力学的世界(散文詩)

よくわかる量子力学 (図解雑学)

よくわかる量子力学 (図解雑学)



私は以前、環境化学分析会社でアルバイト分析員をしていたことがあったが、そこで起きた出来事は、まさしく量子力学的な世界と言えたと思う。
仕事にも慣れ、アルバイトとしては高給な仕事をしていたおり、問題が起きた。分析部長の判断で、分析依頼者(クライアント)の呈示した条件を無視した分析をしたため、分析のやり直しとなった。当然、責任は分析部長と、その行為を容認した所長にある。
ところが彼らは、分析担当者にその責任を転嫁し、徹夜の分析を押し付けた!そして、そのまさにその同じ日、所長が定年退職 → 嘱託、分析部長が所長に昇格することを祝うコンパがあった。責任者たちは美酒に酔いしれ、分析担当者は徹夜!!しかも、この2名は、ねぎらいに来るどころか、「ボーナスはないと覚悟しておけ」と抜かす始末だ。
私は時間限定のアルバイトだったから、特に被害は被らない。でも非常に立腹した。そしてその怒った状態で、私個人の(この会社の業務とは関係のない)企画を立ち上げ、職員たちの机の上にザアアッと無造作に置いて回ったところ、伝えた者がいるらしく(そりゃそうだ、派閥は関係なくデスクごとに1通置いたのだから)、前述の2人に見咎められた。私の企業人としては規格外のキャラクターに苦りきっていた2人は、私を掣肘しようとしたのだ。会談は決裂し、私は会社を辞める、と宣言した。
当時、私はこの会社のある女性分析者に心を寄せていたのだが、そのときは気まずくなっていた。私は42歳、彼女は27歳、年の差15歳だった。
私を送るささやかなお別れ会が開かれた。私は前所長、新所長を思いっきりバカにした文書を用意して、この2人も含む職員に配布した。当時、会社はISOの取得に躍起になっており、その趣旨に則ったという形で、この過激な文書を「合法的に」配布したわけだ。2人はびびったろうなあ。そして彼女には短く「さようなら。」と挨拶して別れた。
さて、私は切り札を隠していた。2名を告発する更に強烈無比な文書も用意していて、それを配達証明付きで、本社社長に送付した。同じ内容の文書を、会社ナンバー2にもメールで送付した。



あとで私の直接の上司に以後の顛末を伺ったところ、確かに叱責はあったとのこと。それから数ヶ月後、私自身が依頼者となり、ある調査を会社に依頼した。その際の報告書には例の新所長の印が押されていた。「ああ、軽い叱責だけだったんだな。」と納得した。
それからまた後で、上司とコンタクトしたとき、あの2人が大チョンボをやらかして、ほとんど首になり、分析所も縮小されてしまったと伺った。この事態は、告発文のなかで私が指摘していたことだった。また彼女は50歳代のアルバイト男性と関係を持ち、流産したけど結婚した、とも元上司から聞かされた。

でも、私は退職後、会社には行っていない。真相は解らない。もしかしたら、あの告発文の直後にあの2人は首になったのかも知れないし、彼女が結婚したというのも虚構かも知れない。50歳代でOKなら、40歳代のあなたは大歓迎よ、とのメッセージかも知れない。
この事態は、まさしく量子力学的世界だ。二つの状態が重ね合わされた、確率の領分だ。その答えを知るには、私が会社なり彼女の家に出向くしかないだろう、そのとき真相は解るのだ。





でも、私は、あの世界は「捨てた」のだ。もう、私にはなんの関わりもない。





今日のキーワード:量子力学クライアント環境化学分析ISO
 

今日のひと言:シュレディンガーの猫電気羊の夢を見るか? ← SFファンならわかるギャグです。


**量子力学については、はてなキーワードとか、wikipediaなどを参照してください。
 私の狭い学識(特に物理学の範囲)では、とても全貌を語ることはできないからです。