虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

柴田ゆう・絹の手触り

  *柴田ゆう・絹の手触り



みぃつけた

みぃつけた


私は大学当時マンガクラブにいて、マンガを描いたり評論をしたりていました。今ではマンガは描きませんが、読むことはあります。その際、手にしたマンガを読むか読まないかは、そのマンガの描線の出来次第です。たとえば「アニメ絵」とか「少女マンガ」の絵柄はワンパターンで、その描線を見ただけで、私はそれ以上読まずに本棚に返します。「このタイプの絵柄は見飽きたぜ。」というわけです。私の自説ですが、マンガの描線は、マンガの内容をも規定するのです。だから、描線がつまらないマンガは、私にとって、読む価値のないマンガなのです。その意味で、ちかごろ心が動かされるマンガにはめったに出合いませんねえ。週刊少年ジャンプなどの少年誌はもとより、週刊モーニングなどの青年誌でもね。

 ところで私は「週刊新潮」を購読していますが、今年の初めくらいから、連載歴史小説が変わりました。私は基本的に雑誌掲載の小説は読まない人なのですが、その歴史小説の挿絵にちょっと目が止まりました。そして週が進むにつれ、その挿絵に惹かれていきました。(その小説は、6月現在終了していますが。)
 その挿絵は、やや太めの線で丁寧に描かれており、丸いおっとりとしたキャラクターが、まったりとした・マイペースな会話をしているように感じられました。うん、この描線はとても良い。無駄な描線がひとつもない。まるで、周到にしつらえられた絹の手触りです。様式化の程度も見事です。この挿絵作家は柴田ゆう、1973年愛知県生まれで、愛知県立芸術大学デザイン科を卒業しています。小説は、江戸時代の情緒たっぷりに、仲間の妖(あやかし)たちとともに難事件を解決していく大店の病弱な若だんなの活躍を描く「しゃばけ」シリーズのひとつ「ちんぷんかん」。作者は畠中恵。この人も元マンガ家ですが、挿絵は柴田ゆうが担当しているのですね。
 私は、ぜひとも、挿絵画家としてだけではなく、柴田ゆう本人作の単行本マンガとか絵本とかが読みたいものです。この人には巨大な可能性が秘められています。




なお、青年マンガ雑誌の絵柄の分析を以下でやっています。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20061024

絵の描線の分析は
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070614


(この日記はMIXIに書いたものに手を加えたものです。)


今日のひと言:無駄のない描線を描ける人って、意外に少ないものなのです。