虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

バジリスク甲賀忍法帳(Basilisk)の2考察

iirei2006-08-26

 *バジリスク甲賀忍法帳(Basilisk)の2考察
 バジリスク甲賀忍法帳(Basilisk)は、故・山田風太郎原作、せがわまさきマンガの、人気忍法帳シリーズである。いまは廃刊となった「ヤングマガジンアッパーズ」に連載され、2005年、仲間由紀恵オダギリジョーが主役を演じ、「SHINOBI」として公開された映画も、同じ山田風太郎の小説をもとにしている。徳川家の跡取りを決めるため、代理戦争を強いられた甲賀、伊賀の忍軍の抗争が話の軸になる。中には、息で殺人的なカマイタチを発生させる忍者、「イク」時の吐息で男の忍者を殺すクノイチ、保護色を使うカメレオンのような忍者、倒した相手の顔と声を奪う忍者など、奇想天外なキャラクターが多数登場する。まるで週間少年ジャンプのマンガのようでもある。

(1) 恋人同士であるにも関わらず、甲賀、伊賀のあととりとして10人対10人の忍者同士の消耗戦を戦わなければならなかった甲賀甲賀弦之介と伊賀・朧(おぼろ)。おたがい両軍団最強の忍者だが、その必殺技の優劣はどうか?
     甲賀弦之介の技は、攻撃の意図を持って攻めてくる敵の技をはね返し自滅を強いる、いわば「鏡」の技である。(「瞳術(どうじゅつ)」。)朧(おぼろ)の技は、敵の忍法をすべて無効にする「破幻の瞳」である。さて、両者が戦えば、どんな事態が起こるのか?ただし、朧はめったに敵意を抱かない。(朧が女性。)また彼女の技は生まれつきのもので、忍者としての他の技量は持ち合わせていない。弦之介は、忍者として必要な技量は全て持っている。

    
(2) 伊賀の副将格の「薬師寺天膳」は、一度倒されても蘇える「不死」の術を持つ。
それは、薬師寺天膳が本来双子でうまれるはずだった兄弟の命も持つからとされる。なにやらウルトラマンゾフィーの関係のようだが、どうしてか?

(解答例)薬師寺天膳が斬られれば、もう一つの命も同時に死ぬはずである。一度に2つの命が奪われる。中国の易経(えききょう)という占い書に「再三は瀆す(けがす)」という言葉がある。一度「負けを認めておとなしくなった敵」をおもしろがって嬲れば、再び敵意を抱く。薬師寺天膳は、敵があっさり1回だけ倒した行為を、2回倒した行為に意図的にすり替え、蘇えるのだ。

(1) については、このブログを読んだ方への挑戦とする。コメント欄に解答をどんどん書き込んでください。



今日のひと言:甲賀甲賀弦之介と伊賀・朧(おぼろ)の関係によく似ているのが、シェークスピアの悲劇の主役ロメオとジュリエットである。甲賀忍法帳の下敷きになったのかも知れない。やはり「蘇り」の話も出てくるし、2人とも死ぬという結末も共通している。とても良く似ているが、偶然だろうか?それはそうと、「SHINOBI」の感想で、「何で始めから2人が結ばれるのか?」という的外れで偏差値の低いものを読んだことがあるが、結ばれた2人が引き裂かれる話だから問題ないのである。なお、今年はじめ、NHKの「知るを楽しむ」という番組でフランス文学者の鹿島茂氏によって、山田風太郎が取り上げられていたが、山田は、歴史の要点だけはつなげて作話するさい、「このようであってもいいのではないか、あのようにあってもいいのではないか」と大胆な空想力を以って話をデフォルメしていった作家である、ということだった。週間少年ジャンプのマンガに似ているのも頷けるというものだ。