虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

円周率π(パイ) 雑感 (ゆとり教育のほころび)

           教育特集その1
 数学科志望だった私も、小学生のころ2度、算数の試験でほぼ0点を取ったことがあります。一回目は、足し算引き算の問題で、「適当にやっていいから」という先生の言葉の通り、本当に「計算せずに適当に答えを当てはめたため」、正解できるわけがなく、5点くらいになりました。(100点満点)
 もう一回が、確か小学校3年生のとき、家族揃って遠隔地の人を訪問し、その家で私の弟が病気になり、かなりの期間療養してしまい、その間学校の授業は私とは無関係に進み、帰ってきて試験を受けると、見事に0点となってしまいました。その単元こそが「円と円周率」だったのです。あまりの出来の悪さに、父が家庭教師をしたのですが、必ず登場する「3」という数字の意味するところが全く解らず、しまいには父はカンカンに怒り、授業を打ち切りました。確か、父は「3」の意味を一回も教えてくれませんでしたがねえ。
 「3」とはもちろん円周率π(パイ)のことで、
         (円周の長さ)/(直径のながさ)
を意味します。その具体的な数字は
  3.1415926・・・・・・
と無限に、しかも数字が循環せずに続く無理数ですね。
 まあ、私が小学生のころは円周率=3と教えられていたのですね。途中から3.14となったと思います。
2002年度から導入された文部科学省の「新指導要領」=「ゆとり教育」でも円周率を3ないし3.1と教える、との方針がありました。「ゆとり教育」自体は基本的に教える内容を3割カットするという暴挙でしたが、この円周率についても齟齬があります。3.1というのは、工学的には無意味な近似です。自然現象とか工学現象を記述する数字、いわゆる「有効数字」は3桁が普通です。だからπ=3.14と教えるのが当然なのです。小数計算は小数点以下1桁のみ、有効数字の概念は教えないという、実生活上無意味なテーゼを墨守するから、こういった齟齬が起きるのです。
 「ゆとり教育」は「亡国の教育」でした。早々に指導要領を練り直すべきでしょう。もっとも、これらの愚策を推し進めた文部科学省のメンバーには、その子女を私立の学校に進学させる輩もいるようですし、メンバーのひとりの文部官僚であり広島県の教育の責任者(教育長)をやって、広島県の東大進学率を暴落させて有名になった寺脇研氏は、週刊新潮のインタビューにこう答えています:「私には子どもはいません。学力低下と言われれば、ごもっとも。授業時間減に熱心だったのは反省すべきだが、それぞれの学校が夏休みなどをつかって授業時間を弾力的に運用してくれればよかった。文科省は教師に対しては性善説に立っているのですが、教師は公務員なので働かなくても降格がないから・・・・・。これが最大の悩みです」(06.4.27号60ページ)自らの責任はどこ吹く風。こんな官僚たちには教育は任せられないと思います。

今日のひと言:過去、円周率πをめぐって、あまたの科学者、数学者が研究をしてきまし       た。もは
       や文化遺産と言ってもいいでしょう。その文化を切り捨てるのが、ゆとり       教育の一
       面です。