虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ワレサ連帯議長の見た日本:特殊な資本主義

ワレサ連帯議長の見た日本:特殊な資本主義


東欧諸国は、ソ連(現:ロシア)の圧政の元に置かれ、労働・生活面で不如意でした。国の指導者は、ソ連の顔色をうかがい、返って国民には過酷でした。そんな中でも、特に歴史的にも大国の意向に翻弄されてきたのがポーランドです。


その国に生れた「独立自主管理労働組合:連帯」の議長:レフ・ワレサ(ヴァウェンサ:ポーランド語の発音に近い)氏(1943-)は、政府に睨まれ拘束もされましたが、民主主義を強く求めたポーランド国民に後押しされ、ポーランドの大統領になりました。ノーベル平和賞受賞者(1983年)。労働者としては電気技師です。その彼が日本にやって来て、日本の労働現場を見学した際、「なんで日本国民は、なにかに怯えたようにおどおどと働いているのか?」・・・と素朴な疑問を発しました。これは、日本社会の異常さを指し示す重要な発言だと思います。(彼がいつ来日したかは、記憶の外ですが。)


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レフ・ワレサ (wiki)


何物かを生産するという意味で、「労働」と言う行為は、本来「楽しい」はずです。ワレサ氏の見た日本の労働現場には、その「楽しさ」が無い、ということでしょうか。日本の資本主義というもの、どこかで道を踏み外したのかもしれません。マックス・ウエーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に書かれたごとく労働を信仰と結びつけ、ひたすらストイックな作業を自分にも他人にも求める傾向が日本人にもあるのかも知れません。(この経緯は、日本と同じく勤勉な国民性を持つと言われるドイツにもあるかも知れません。)


そういった宗教的な観点から日本人を見直すと、2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」というドラマは、典型的に、日本人受けする人が主役です。次期1万円札を飾る「渋沢栄一」。この人は各種事業を育て上げた人物(実業家)として、特に日本人には好まれるようです。だからこそ万札の顔になるのでしょう。でも、それは日本人がかつて称された「エコノミック・アニマル」という蔑称を否定できない精神構造を今でも持っていることの証拠になるでしょう。特に渋沢は、孔子の「論語」に支えられ色色な事業を行ったわけですが、この形式ばった儒教の教え・・・「礼」という徳目が渋沢を縛り上げ、日本国民をも呪縛したと思われます。この呪縛は、同じく「論語」を最高経典と考えた松下幸之助の「松下政経塾」にも「その精神が」流れているのは当然のことでしょう。まあ、日本の実業家には、「論語」をありがたがる傾向があります。同じ中国発の「老子」のほうが、射程範囲がずっと広く、はるかに豊饒な思想が描かれているのですが、頭の固い彼らは、そこが読取れず、「老子」を心の糧とするには至らないのでしょう。


海外に目を転じると、ノルウェイの天才数学者のニールス・ヘンリック・アーベルが長くお札の顔になったり、イギリスのニュートンが最高額のお札の顔になったりと、卓越した自然科学者を紙幣に取り上げることもあるのです。それに比べると、日本のお札の顔は、偏っていると思います。(例外を挙げると、細菌学者である野口英世が1000円札に採用されていますが、私の見るところ、この人、ドラマチックな人生がすぐ思い浮かべられますが、細菌学者としての業績は大したことのない人だったと考えます。学者というより、技術者だと。)



今日のひと言:ラテン国家のように、仕事は昼までやって、充実したランチを食べ、満腹で昼寝(シエスタ)をして、体に無理をかけない生活様式を取る人々・・・人生の目標は「楽しく生きること」と考える人たちに対し、災害で電車が動かなくなっても、出勤しようと駅を埋め尽くす日本人。実際には働き先には出社が無理であると考えていても、「出勤しよう」という心意気だけは示さないと安心できない、ある意味、このような日本人は、「論語」の形式主義「礼」に絡め取られているのだと私は考えます。このような経緯で、ワレサ議長が驚いたというわけなのでしょう。日本の資本主義は、「論語形式資本主義」と呼べるのではないでしょうか?




現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

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こども 論語と算盤 お金と生き方の大切なことがわかる!

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古代の思想―儒家と道家 (中国の古典文学)

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今日の一品


頭脳パン


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東京に本社があり、さいたま市に工場がある「伊藤製パン」は、「ホテル・ブレッド」という食味の良い食パンを製造・販売していますが、もう一つ「頭脳パン」という商品も持っています。ビタミンB1DHAを配合し、頭が冴えるというコンセプトです。なかなかユニーク。

 (2020.01.25)



ザワークラウト


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ドイツの漬物。キャベツを乳酸発酵させた、酸っぱい食べ物で、ザワークラウトも「酸っぱいキャベツ」という意味です。今回は、生のキャベツを千切りにして、製品のザワークラウトを混ぜて漬けてもみました。1週刊後が楽しみ。

 (2020.01.27)



ザワークラウト味噌


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弟作(私の発案)。いつもの味噌汁に、お椀一杯あたり1にぎり弱のザワークラウトを入れて煮込みました。どっしりとした味。

 (2020.01.28)



@レンコンとダイコンの煮物


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一口大にレンコン、ダイコンを切りそろえ、保温調理鍋(新品!!)に入れ、水、トウキビ糖、オイスターソース、醤油を加えてしばし(10分くらい)煮て、山椒を振って外鍋にセット。2時間くらい保温調理してサーブ。

 (2020.01.28)





今日の四句


野草ごと
河原に生ゆる
カキナかな


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カキナは栃木・群馬などで栽培されるアブラナ科の野菜です。

 (2020.01.26)



野焼き黒
カラスも黒の
出会いかな


カラスは、飛び立ってしまいましたので、写真は無しです。

 (2020.01.26)



増水し
されど徐かな(しずかな)
小河川


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 (2020.01.30)



春の使者
梅の花
きっぱりと


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 (2020.01.30)

ブールデルとマイヨール:彫刻あれこれ(2)男性美・女性美

ブールデルとマイヨール:彫刻あれこれ(2)男性美・女性美


この2人の彫刻家は、中学や高校の美術の教科書で紹介されていたと記憶しています。


アントワーヌ・ブールデルはフランスの彫刻家。(1861-1929)「弓をひくヘラクレス」で名高い彫刻家です。Wikipediaでは以下のように紹介されています。


フランスのタルヌ=エ=ガロンヌ県モントーバンで生まれた。13歳のときに、父のキャビネット作成の店で木版工になるために学校を辞めている。その後、モントーバンでアングル美術館の創設者に絵画を学び、トゥールーズの美術学校で彫刻を学んだ。24歳の時にパリのエコール・デ・ボザールの奨学生となった。1888年に最初のベートーベン像を作成した。この作品において、特徴の強調・幾何学・構築と発明の精神などを表現している。


ブールデルは20世紀の彫刻のパイオニアの一人となった。オーギュスト・ロダンブールデルの仕事の賛美者になった。そして、1893年ブールデルはロダンのアシスタントとなる。ブールデルは先生としても人気があり、多くの優れた芸術家が彼のクラスから生まれた。晩年には何度か記念碑作成の依頼を受け、パリのサロン・ド・テュイルリーの創設者兼副社長となった。また、1924年にはレジオンドヌール勲章も受けている。1929年にパリ近郊のル・ヴェジネで死亡。パリのモンパルナス墓地に埋葬されている。

毛並の良い彫刻家だと思います。代表作の「弓をひくヘラクレス」については同じwikiで

ブールデルの名を不朽のものにした作品に1909年の「弓をひくヘラクレス」がある。この作品は、ギリシア神話の英雄ヘーラクレースにまつわる「十二の功業」の一つに主題を借りており、ヘラクレスが怪鳥ステュムファリデスを射るために渾身の力で大弓をひき、今まさに矢を放たんとする瞬間を描いたものである。日本では東京上野の国立西洋美術館に展示されている。


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この作品は、ルネッサンス期・ミケランジェロの「ダビデ像」と好一対のものだと思います。巨大な敵に立ち向かう人類の表象ですね。力強い男性像。(なお、大型本からの写真も用意したのですが:『現代世界美術全集5 ロダン/ブールデル:集英社』。縦40cm、横30cmの本で、持ち運びやコピーが困難な大変な本でした。ただ、著作権上の問題があるので、ここではアップしないことにしました。残念。)


アリスティド・マイヨール(1861-1944)もフランスの彫刻家・画家。



マイヨールは、今日では彫刻家として知られるが、本格的に彫刻を手掛けるようになるのは40歳を過ぎてからであり、それ以前は画家、グラフィックアーティストおよびタピスリー作家として活動していた。近代フランスの彫刻家のうち、ロダンはダンテの文学などに着想を得た文学性の強い作品を作り、ブールデルはモニュメンタルで男性的な肖像や記念像を多数制作した。これに対してマイヨールは、彫刻家としての40年にわたるキャリアを通じて、女性の裸体像をほとんど唯一のモティーフとして制作を続けた。マイヨールの女性像においては物語性や寓意性は抑制され、モデリングは単純化されて古典主義的な調和と空間構成が強調されている。


彼の場合はブールデルと異なり、女性美の静謐さを追求した彫刻家だったのですね。写真の像は「空気」。(wiki)



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今日のひと言:男性像であれ女性像であれ、突き詰めれば優れた芸術になることを、今回の両人は語っているようです。


iirei.hatenablog.com

:彫刻あれこれ:人体美の雛形(円空からジャコメッティまで)






今日の一品

@ハルノノゲシのお浸し


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キク科。花の後、タンポポのように綿毛を飛ばします。茎に赤い線が入っているのが特徴。苦い野草で、それが持ち味。今回は、「ごまわさびドレッシング」で和えました。

 (2020.01.19)



ロマネスコのスープ


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前回のブログで作った「ロマネスココンソメ煮」、こなごなになったロマネスコを捨てずに、他の食材を加えてスープにしました。:オクラ、マイタケ、白菜、ネギ。塩少々。

 (2020.01.20)



@紅心大根のしらす卸し


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植え姿


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真っ二つ


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しらす卸し

 昨秋蒔いた紅心大根(中国野菜)を収穫し、卸して食べましたが、辛みが強く、グッドでした。この赤い色、ドラゴンフルーツの赤い実にそっくり。アントシアニン豊富なのでしょう。

 (2020.01.24)





今日の詩


@ピーラー( A peeler)


収穫した紅心大根、
外の緑の部分を
ピーラーで剥いていた。


ふと手元がずれ、
左小指の皮(ピール)を
剥いてしまった。


――これぞピーラー、
人の皮も大根の皮も
等しく剥く。


植物には血はないけど
人の場合、流血の惨事。
あとの料理は弟に任せた。


いててて・・・

 (2020.01.24)





今日の五句


柔らかき
日差しに伸びて
ホトケノザ


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 (2020.01.19)



タンポポ
綿毛よ飛んで
どこへ征く


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 (2020.01.20)



生きていた
夜空に響く
猫の恋


最近、近所の野良猫が激減しています。久しぶりに聞いた空騒ぎ。

 (2020.01.21)



山体に
雪の降り積む
赤城山


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 (2020.01.21)



常夜灯
主(あるじ)なき家
照らしけり


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かれこれ10年空き家。太陽電池式で、灯りは付き続けます。

 (202001.23)




!!編集しなおしていたら、ブログが消えてしまいました。回復できなかったので、再び公開作業をしましたが、☆をくれた方、コメントをくださったかた、ごめんなさい!!