虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「日本語の教室」(大野晋):かな文学は男性作家も敬遠する?

私が高校生だったころ、国語学者大野晋氏の「日本語の年輪」を興味深く読んだことがありますが、他にどんな著作があるか図書館の蔵書を見たところ、今回取り上げる「日本語の教室」がありました。大野さんの概略はwikipedia から。


大野 晋(おおの すすむ、1919年(大正8年)8月23日 - 2008年(平成20年)7月14日)は、日本の国語学者。文学博士。学習院大学名誉教授。


東京府東京市深川区(現・東京都江東区)生まれ。古代日本語の音韻、表記、語彙、文法、日本語の起源、日本人の思考様式など幅広い業績を残した。特に『岩波古語辞典』の編纂や、日本語の起源を古代タミル語にあるとしたクレオールタミル語説で知られる。ほかに上代特殊仮名遣の強調、係り結びの倒置説、品詞の割合とジャンルとの関連性を指摘した大野の法則なども知られる。主著は『日本語の起源』『日本語の文法を考える』『日本語の形成』『日本語練習帳』など。


大野氏は、日本語の3つの時期における外国語の受容と変化について述べています。最初は、大和コトバが形成される時期のタミル語伝来説、次が漢字の伝来、最後がアルファベットによる欧米の言語の受容。


タミル語とは、南インドスリランカで使用されている言語で、大野氏はタミル語が遠く離れた日本で受容されたとしていて、その例証となる単語とか文法的な類似点を挙げています。たとえばアガム(崇む)アソブ(遊ぶ)アツム(集む)アフ(合ふ)など多数。でもこの学説は比較言語学の学者に厳しく否定されています。私も眉唾ものかと思います。


次に、漢字を受容したあと、紫式部などの女流文学者は、漢字の意味表示能力の高さに驚嘆しつつも、独自のかな文字でいろいろな情感を表す表現を生み出しました。これらの業績は素晴らしいものです。では、明治期の2人の文豪(アルファベットを用いる言語と漢文両方に精通していた二人)・夏目漱石森鴎外ですが・・・漱石は三角関係を描写する作品に没頭していましたが、彼は漢文の素養はあっても、平安女流文学は苦手だったらしいです。森鴎外は、確かに女流文学の素養は漱石よりはありましたが、源氏物語の文体には(援用しつつも)辟易していたらしいですね。


この難解な「源氏物語」の精神を受け継ぎ、才能を開花させたのが樋口一葉である、とこの本に書かれていました。


最後にアルファベットの受容についてですが、欧米には「ソシオロジー社会学」とか「サイコロジー:心理学」「エコロジー:環境科学」など、「・・・ロジー」という学問名があり、もとはと言えば「logos:ロゴス」、・・・論理という言葉が付くのですが、日本語には本来そのような学問を表示する言葉がなく、あくまで「学ぶ」・・・「真似ぶ」、マネするという言葉があるだけでした。この辺は文明の発達形態の差異なのでしょう。明治の日本人は、その差異を埋めるために漢字をいろいろ組み合わせ、漢字の元祖・中国にもない訳語を創出しました。これは日本人が誇ってもよいことかと思います(私の意見)



今日のひと言:この本では、大野氏は難解な「係り結びの法則」について解説しています一例を挙げれば

わが庭に花ぞ咲きたる

は、「ぞ」が連体形を要求する係り助詞ですが、本来

わが庭に 咲きたる[モノハ]は花ぞ

という文を倒置した、というのですね。

さすが、日本語学者、綺麗な解説です。


日本語の教室:岩波新書 2002年発行



日本語の教室 (岩波新書)

日本語の教室 (岩波新書)

古典文法質問箱 (角川ソフィア文庫)

古典文法質問箱 (角川ソフィア文庫)

老いの整理学 (扶桑社新書)

老いの整理学 (扶桑社新書)




今日の料理


@豚ソテー肉の角煮風味






ソテーにする豚肉を、角煮風にしてみました。煮汁は、冷凍庫で保存してある角煮の残り汁を使います。汁の量が6割くらいになり、ちょっと塩分が多めに肉に移動したか、という疑念がありましたが、どっこい、美味しく仕上がっていました。

 (2015.01.07)




@車麩のステーキ・バター味





以前の料理で良い味が出た残り汁を使い、それを5時間ほど車麩に吸わせ、吸い切ったところでバターで焼きました。そして黒胡椒を振り、・・・麩は、いろいろな味を吸収し、自分の味にしてしまうのがスゴイですね。美味しく頂きました。


http://d.hatena.ne.jp/iirei/20150108#1420688254  ヒバの煮物(↑その残り汁を取った料理)

 (2015.01.08)




@ラム肉の八丁味噌炒め・玄米フレーク散らし





弟作。あらかじめ茹でたラム肉(臭いが減るという)を、ちょっと薄めた八丁味噌、トウキビ糖、すりショウガで炒め(味が薄かったので醤油も少々追加)、盛り合わせるときに玄米フレークを散らしました。良い香りが加味され、美味。

 (2015.01.09)




@ニンニクの芽のクコの実、卵炒め




以前、ニラ、クコの実、卵を炒め、「ニラ、クコの実、卵のラスタカラー炒め」と称しましたが、今回はニラでなく、ニンニクの芽を使いました。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130315#1363342581

 

「ニンニクの芽」は、正しくは、ニンニクの花の穂のことです。ニラ、ニンニク、クコの実、卵、またレバーなどは目の健康によいらしいですね。

 (2015.01.10)




今日の一句


銀翼を
広げ翔び立つ
皇海山





皇海山(すかいざん)は足尾山地の盟主たる山で標高2144m。雪化粧が美しいです。写真の中央に小さく映っているのが、皇海山です。


過去ログでも取り上げています:

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20131115#1384455195

 (2015.01.12)