横文字単語の使用の実際:使用する心理
以前私は、工学部が「how」:(どのように)を扱う学部であるなら、理学部は「why」:(どうして)を扱うと、拙ブログで書いたことがありますが、この表現に噛み付いてきた人がいます。曰く「これらの言葉(how、why)には、ちゃんと対応した日本語がある。どうして日本語表記にしないのか?」と。これについてはちょっとカチンときて、「how、whyが日本語より先に浮かんだのです。私はこの件について、貴方より考えているのです」と返しました。
このような、横文字単語を多用するのは、比較的インテリな人が多いようです。でも、昨今は、そうでもない人も好む傾向があります。例えば料理の分野で、シェフchef、ソムリエsommelier、ギャルソンgarçon、パテシィエpâtissier、コンシェルジュconciergeのように、いろいろあります。なかでもコンシェルジュは日本語の表現が難しく(対応する言葉がない?)、そのまま横文字で市民権を得た恰好になっています。
もっと難しいケースは、学者、あるいはそれに準じる人の横文字好みです。いろいろありますが、パラダイム:paradigm、バイアス:bias、コンプライアンス:compliance、リーダーシップ:leadership、ガバナビリティ:governabilityなどが代表的でしょう。これらの言葉には大体対応する日本語があります。それでも横文字を使うのは、使う人の自己顕示性がそうさせるのでしょう。(その意味ではこのブログ冒頭のhow、whyのケースも、筆者自身の自己顕示性の表れなのかも知れません。)
なかには、本来日本語としてそれまでなかった言葉が出現してきて、あわてて訳語を作るケースもあります。「記号論」で有名なソシュールの言説、「シニフィエsignifié」「シニフィアンsignifiant」という言葉、それぞれ「所記」「能記」と当てられます。聞きなれない言葉ですよね。この種の言葉は、なかなか日本語になじまず、「ソシュール研究サークル」でのみ有効なものかも知れません。
まあ、考えてみれば、日本文化は、外国の文化を取り入れつつ育ってきたものですから、その外来語を日本語に移植する行為があればこそ、発展してきたものかも知れません。中国文化、欧米文化を取り込み、日本語にする過程で、たくさん「物知りで嫌な奴」が出現したことでしょう。医学用語の「神経」と言う言葉も、ドイツ語の「Nerv」という言葉は、中国医学にはなかったので、ドイツ語から「神経」という言葉をひねり出したのですね。中国も、この日本人が訳した言葉「神経」を受け入れたのですから、明治期の日本の文化人も、なかなかやりますね。
よく考えると、日本と中国、外来文化との付き合う態度が好一対です。「coca cola」というアメリカ発の飲料について、日本では単純に音訳した「コカコーラ」ないし英語そのままで、日本語で通用しますが(このしなやかでいい加減なスタンスはどうです?)中国では漢字に変換し「可口可楽」と、見事な漢字に仕立てあげました。(この自国の文化を守る姿勢も、ある意味スゴイものがあります。)
今日のひと言:今回は日本語には大体同じ意味を示す表現があるのに、あえて英語、フランス語などのまま使うというスノッブな態度について書きましたが(このスノッブというのもそんな言葉ですね、すいません。俗物的な人のことです)、ここで挙げたいくつかの言葉には、確かに現代という時代を切り取る力があることも事実です。興味ある方は調べてみてください。私は言葉一つ一つの解説はしません。
追記:資本主義社会で、ここ10年ほどの間によく聞かれるようになった言葉としてCEO(chief executive officer:最高経営責任者)、COO(chief operating officer:最高執行責任者)、CFO(chief financial officer:最高財務責任者)などのアメリカ発の役職名があります。紛らわしいですね。概ね、CEOが大統領、COOが総理大臣、CFOが財務大臣といったところでしょうか。
- 作者:フェルディナン・ド・ソシュール
- 出版社/メーカー: 研究社
- 発売日: 2016/08/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2019/08/27
- メディア: 単行本
今日の一品
@切干大根と干しシイタケの炒め煮
切干大根、干しシイタケ、クコの実を水で戻し、シイタケ、大根の順に炒め、砂糖、醤油を加えてまた炒め、クコの実を入れて、山椒を加え、火から降ろす。干しシイタケは自家製。
(2020.01.13)
@サバ味噌煮缶と白菜の炒めもの・クミン風味
フライパンに油を敷き、クミン(カレーの香りを出すスパイス)を炒め、白菜、缶詰と続けて炒め、塩をちょっと振ります。クミンは、「スターター・スパイス」と呼ばれ、最初に炒めるのです。
(2020.01.14)
@ロマネスコ(カリフラワーの一種)の料理2品
ロマネスコやミナレットというカリフラワーは、独特の幾何学模様のつぼみを付ける、珍しいものです。数学的には「フラクタル」と言い、「どんなに小さい部分を取ってみても、ギザギザがなくならない図形」のことです。
一口大に切ったロマネスコをコンソメ、塩を入れた鍋で煮、仕上げにオレガノを振ります。
(2020.01.16)
@2:焼きロマネスコ
耐熱皿にロマネスコを入れ、180度、10分オーブントースターに掛け、ちょっと冷えたところで仕上げに電子レンジで1.5分。アオジソドレッシングに浸してたべます。
隙間なくつぼみがついているので、2品分になる、お得なカリフラワーです。
(2020.01.16)
@セリのマヨネーズ和え
セリ畑
和え物
庭に畑のように生やしたセリを摘んで、湯がいてマヨネーズ和え。鮮烈で清冽な風味が光ります。
(2020.01.17)
今日の四句
雨後の朝
自動車ライト
交錯し
(2020.01.15)
逸早く
咲くや蝋梅
春の風
(2020.01.15)
焼畑の
黒を白くす
降霜か
(2020.01.16)
真白にぞ
空を切り裂く
飛行雲
(2020.01.16)