虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「かわいい」という言葉の美学

私はかれこれ12年ほど前、主に阿蘇山を見たくて九州を旅行したことがあります。阿蘇山麓南側の白川地区で一泊しましたが、さすがNHK、関東近辺と同じように、「課外授業ようこそ先輩」を放送していました。(このころのテーマソングがル・クプルの「縁は異なもの」というお気に入りの曲でした。)・・・前置きはさて置き。


この回のテーマは「かわいいものを見つけよう!」というもので、コピーライターかなにかをやっている女性が「先輩」でした。そうして、「かわいい」ものを探してみると、あるは、あるは・・・続々と「かわいい」ものが挙げられたのです。そのとき挙げられた「かわいい」ものの詳細は忘れてしまいましたが、「まさか、こんなものまで!」といったものも「かわいい」のでした。


「かわいい」といえば、もとヤクザの国会議員・故・浜田幸一さんのようなコワモテの人を指して、女の子たちが「かわいい!」と言っていたこともあります。浜田さんが、確かに人生の酸いも甘いも噛み分けた人であることは当然としても、そのことが「かわいい」という意味内容を含むとは、なかなか思い至りません。


そこで、ちょっと見方を変えて、歴女について考えてみます。彼女らは、もちろん日本史、なかでも戦国時代における武将たちに強く惹かれ、そのうちの一人か二人を「死ぬほど・愛している」わけです。戦国武将のどこに惹かれるかと言えば、おそらくはその「いさぎよさ」・「凛々しさ」なのでしょう。これは男性としての美質かもしれませんが、そんな男性を見る女性には、一種の母性本能が惹起されるように思います。そのような武将は「かわいい」・・・そのようにして「かわいい」と言う言葉は、適用範囲が広くなるのだと思います。


その意味では、徳川家康などは、「狸オヤジ」という言葉で括れるように、「いさぎよく」もなく、「凛々しく」もありませんから、歴女にはおおむね嫌われるのですね。(もっとも、私の見解では、徳川家康は散々苦汁を舐め、そのつどドツボから這い上がり、最終的に戦国の乱世を終わらせ、以後300年ちかくの「平和」を打ち立てたと言う意味で、ある意味「スゴクて」「かわいい」存在です。)


参考過去ログ

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100923

 :徳川家康の魅力・・・歴女に知って欲しいこと


そうなると、戦国武将の持つ「いさぎよさ」「凛々しさ」を受容した女の子にとって、「かわいい」という美学に行き着くのはある意味当然なのかも知れません。その脈絡で浜田さんも「かわいい」ということになるのかな、と思います。


思い返せば、世の中に流行するコトバを生み出してきたのは、大部分女性であるようにも思えます。清少納言の「をかし」(知的な面白さがある、と言う意味)、紫式部の「あはれ」(しみじみとした趣がある、感極まる、と言う意味)などは好例です。いずれも、後世の文学に有形無形の影響を与え続けてきたのですね。そうすると、現代の女の子たちが生み出した「かわいい」というコトバも、もしかしたら、「をかし」とか「あはれ」と言った由緒正しいコトバとともに、後世に残るかも知れませんね。



今日のひと言:流行り廃りの激しい世の中でも、「かわいい」というコトバとその美学は受け継がれると思います。母性本能を持つ女性がいなくならない限りは。そう言えば、最近では「かわいい」という言葉は海外にも伝播・輸出されているようです。「kawaii」という単語に。恐るべき日本女子の造語力。


過去ログで同じテーマを扱っていました。参考までに。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20090101

 :「かわいい」の語源   やまとことば・その4(全4話:完結)



kawaii図鑑

kawaii図鑑






今日の料理


@アカザ(シロザ)のお浸し





アカザ

  シロザ

  シロザのお浸し



アカザアカザ科)はありふれた野草で、見たことのある人も多いでしょう。でもそれだけではなく、食用にもなります。シロザというのもありますが、どちらでも扱いは同じです。(ちなみにホウレンソウも同じアカザ科植物です。)茹でて20分ほど水に浸し(シュウ酸を取るため)、刻んでカツオ節+醤油で和えました。ちなみにゴマよごしも美味しいです。カツオ節もゴマも、カルシウムを豊富に含むのでシュウ酸除去に効果があります。なお、本品を食べすぎると、「アカザ皮膚炎」という症状が出るらしいので、注意が必要です。

 (2014.07.04)