虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

超地域流通貨幣・ガロア


 (以下は、2005年12月1日から12月4日の記事に手をくわえたものです。私にとって重要なのであえて再録します。)


スーパーのレジで。


「はい、1524円になります。」とレジの係員に言われたとき、あなたならどのように払いますか?たいていの場合、1000円札を2枚出すか、1000円札2枚と24円を出すと思います。私は、断然1000円札2枚派です。そうすると、コインで476円返って来ますね。1000円札2枚と24円では500円返ってきます。
 あたりまえですよね。
ところが、この2つの選択は大違いなのです。私は以前、コインの原価計算をしてみたことがあります。その結果、原価的には小額コインのほうが高いのです。500円コインなんて、原価は5.5円、10円コインは3.6円もあります。すると、500円コイン1枚より10円50枚のほうが断然!!原価が大きいことが解かります。紙幣に至っては原価はただみたいなものです。
 一国の経済が破綻するとき、通貨は「無意味」になります。でも、物としての価値だけを問えば、小額コインがベストであることになるわけですから、・・・・
   つまり、私は「小額コインを貯めているのです!!」まあ、こんな意識の主婦は、皆無でしょうがね。
地域流通貨幣」あるいは「地域通貨」という言葉をご存知でしょうか?ほら、あちこちの商店街とかグループで、「擬似貨幣」を流通させる運動です、と言えば解かりやすいかな?実は私も、目論んでいるのです。コインを媒介とした「地域流通貨幣」を。その名は「ガロア(Galois)」。ガロアとはフランスの数学者で、「群論」という飛びぬけた理論を構築しながら、20歳で女性を巡る決闘で落命した、数学史上、奇跡の人と呼ばれる人なのです。偉大な業績を残しながらも、単位にさえなっていないので、私が単位にするのです。(「アホか、お前は・・」と言われそうですが。例えば、パスカルは気圧の単位に、ガウスは磁気の単位になっています。)次回は、その構想の概略をお話ししますね。
 なお、ちょっと似た話ですが、私の家の近くに公園があり、秋には木々の落ち葉が沢山出ます。焼却用に袋にいれられた落ち葉を持ってきて、落ち葉を庭に撒いたり、袋に水を入れて発酵させ、借りている畑の堆肥にしたりしています。この場合、落ち葉=紙幣みたいなものです。人がやることの逆をやる・・・これが私の流儀です。

 

   ガロア着想への序曲


エンデの遺言」(河邑厚徳グループ現代NHK出版)は、ここ数年出版された本の中で、傑出した本の一つです。まずはこの本を読むことをお薦めします。「地域通貨=地域流通貨幣」のアウトラインが解かります。エンデは、「モモ」とか「終わりのない物語」で名高い童話作家ミヒャエル・エンデのことで、彼が晩年通貨について考察していたことはあまり知られていません。そこでこのような書名になりました。この本には続編があり、ミュージシャン・坂本龍一氏が河邑氏と作っています。余談ですが、私が学生だった頃、坂本氏の若い頃を直接知っている人に、「君は坂本くんに似ている」と言われたことがあります。もちろん、私はあんな美男子ではありませんが、雰囲気が似ているということだったのでしょう。
 この本の中で、特に注目されるのは、シルビオゲゼルという経済学者です。彼は、「全ての物の価値は、時間とともに下がるのに、お金(マネー)だけは上がる(利子がつくこと)。これはおかしい!」と考えて、「時間とともに価値の下がる通貨」を考案します。この突飛な発想は実際にドイツやオーストリア自治体で試され、大成功を収めます。使わなければお金の価値が落ちるため、人々はこぞってその通貨を使い、大不況がふっ飛んだのです。ところが、その試みは中央銀行の横槍で中止に追い込まれます。この事例が、「地域通貨=地域流通貨幣」の初の例です。現在は、世界各地、日本でも、さまざまな試みが行われています。その際の通貨になるのは、独自に作った「模擬紙幣」とかコンピュータ上のポイントなどです。何らかの形で「中央管理者」を置きます。
 私は、拙著「災害の芽を摘む」のなかで、「金利(利子)」を否定していましたが、「エンデの遺言」における、ゲゼルの「マイナスの金利」には度肝を抜かれました。それで、この種の問題をマジに考えるようになったのです。そして「ガロア」を着想します。
     To be continued・・・・・
PS 高名な経済学者・ケインズは、「後世に与える影響は、マルクスよりもゲゼルのほうが大きいだろう」と予言していたそうです。(「エンデの遺言」より)


ガロア」の着想


2003年春、父がアルツハイマー病(認知症のひとつ)を発病しました。森下家は、父、私、弟の、男3人の家族です。独身の息子2人で父の介護をしなければなりません。当時私は無職、弟は会社員でした。弟は会社に辞表を出したのですが、休職扱いになりました。

 そうすると、「円」としての収入は、父の年金しかありません。十分な経済力のある弟に比べ、私にはそれがありません。まして、介護のため働きには出られません。男2人で、つきっきりで父を見なければならない大変な状況でしたから。
 それでは私の収入はどうすればいいのか?――との難問が立ち塞がっていました。日常必要な商品はなんとかなります。でも、私の自由になるお金がありません!
 そこで、父の介護のため働いた「行為」を点数化して、父の年金から貰うしかなかろう・・・ということに落着きました。言って見れば、肉親が介護施設の職員の働きをするのだから、その「行為」に父が対価を払うのはむしろ当然だと思われました。私設介護職員です。
 その行為は、しかし、商品の対価の「円」ではなく、なにか別の通貨が必要だろう、とも考えました。そこで「地域通貨」の存在を思い出し、自分もそれをやろう、と決めました。これが「ガロア」着想の経緯です。
 父は、アルミニウム二次精錬会社の工場長でした。私は工学部出身で「紙漉き(かみすき)」を趣味としています。だから、金属と紙の両方についての知識は充分持ち合わせていました。そこで、両者を比較し、金属を通貨単位にするのが良かろう、と決めました。ゲゼルの理屈から言っても、より熱とか水に安定な金属が「ガロア」の通貨に相応しいのではないか、と。
 次は、具体的な「ガロア」の設定をお話しします。
 なお、アルツハイマーの原因として、1円玉の原料アルミニウムが有力な原因の一つとされています。そのアルミニウムに数十年晒された父が、アルツハイマーを発病したのは有り得る話です。

今日のブログを読まれた方は、「なんてドライな息子か!」と思われるかもしれません。確かにドライです。でも、普通の家族が実はドライな関係なのに、表面上ウェット、フレンドリーなことだって有り得るのではないかと思います。それに比べれば、「からっとしているでしょう?」と主張します。ドライにならざるを得ない状況が森下家にはあったのです。



ガロアのありかた


 これまで書いてきたことを思い浮かべながらお読みください。
@何人かのメンバーの信頼関係がベースになります。
@1円=1Galois(ガロア
@1対1の取引が基本です。
@「行為」の交換のメディア(手段)として、既存のコインを使います。そして、コイン
 の意味を読み替えます。たとえば、経済が混乱して、大根1本1万円になったとしても、
 大根をくれるという行為に100ガロアを支払います。インフレ・デフレを回避するの
 です。
金利はありません。
@中央管理者はいません。
@誰でもやれます。
@商品化社会以前のコミュニティーをモデルとします。
@円の機能のいいとこ取りができます。遠隔者同志のガロアによる決済には、既存の円の
 システムを利用し、その後ガロア(コイン)にすればいいのです。
@最低15人程度のメンバーで、完結できるコミュニティーが作れます。いろいろな能力、職能の人が集まるのが望ましい。その根拠は、15人から2人を取り出す組み合わせは15C2=105(高校数学で教わる組み合わせの記号を使いました。)。100通り以上の取引が出来るからです。
@「ガロア」と名付けた理由:経済学が「交換」という概念を中心に据えた学問である以上、ガロア群論の初歩(たとえば「互換」という考え方)で言い尽くせるからです。
 (この主張はとても過激だと自分でも思います。これについては、今後もとり上げる積もりです。)
最後に、ガロアは、営利とは無関係な通貨であり、今私は考え方を開示しているのであって、会員を募っているのではないことをお断りしておきます。
 また、新しい類型として、糖尿病にかかるおそれのある私が、大福もちを食べたくなって、スーパーなどで100円で買い、あるひとに、その過半数の6割食べてもらったとします。このとき通貨はどのくらい動くでしょうか?単純に考えれば60円、私が相手からもらうことになるでしょうが、私の心はそうではありません。「大福もちを食べるという行為」をしてくれたのだから、20ガロア私が払うということになるわけです。
  最近話題の「電子マネー」たとえば「PASMOパスモ)」とか「nanaco(ナナコ)との比較ですが、「電子マネー」はひたすら「軽く」、コンピュータの不具合で狂う危険性があります。また、他のカードサービスと組み合わせた際にトラブルが起きやすいとも思います。私の提唱するガロアの場合、かさばりますが、確実な取引ができると思います。ただし、ある程度大きな取引きには向かないか、とも思います。
そうそう、アラブのことわざに「小額貨幣は身を助ける」というのがあるそうですよ。


今日の一言:同じ釜の穴のムジナ。


なお、一円玉に描かれた植物って、何だかわかりますか?↓のブログに載っています。
http://env.at.webry.info/200701/article_8.html
(環境を意識した日々)

http://ap.bblog.biglobe.ne.jp/ap/tb/e741551308