生きる悪知恵〜〜西原理恵子(書評)
「人生相談」シリーズ その1
私が西原理恵子(さいばら・りえこ)さんを知ったのは、数年前のNHK朝ドラ「ファイト」の終わりに掲載されていたイラストを見て、「面白い」と思ったときからです。
また、今回取り上げる本は、この前エントリーした「ネガポ辞典」に関連した書籍として、私自らが選び掲載したものでした。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130218#1361182013
さて、彼女(1964年生まれ)は、はちゃめちゃな経歴をしています。Wikiで見てみると、
高知県高知市出身。私立土佐女子高等学校中退。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。
入退院を繰り返す程のアルコール依存症の実父と姑問題などに悩まされた母は、西原を身籠っている最中に実家に戻り出産、実父は西原と会う事もなく彼女が3歳の時に亡くなった。
7才の時に母が再婚する。無類のギャンブル好きでさまざまな商売に手をつけて失敗と成功を繰り返す義父との生活は、浮き沈みの激しくて奔放な日々だったが、義父は西原の事を実の子のようにかわいがってくれたという。
私立土佐女子高等学校在学中に飲酒によって退学処分を受けるが、納得のいかない一方的な言い分に不服を申し立て、学校側を訴える(本人曰く「義父からおこづかいを前借りして訴訟に踏み切った。大人のケンカの仕方を教わった」)。その事件を取材に来たフリーライターの保坂展人(のち社民党衆院議員を経て2011年より世田谷区長)と知り合う。初期のカットの仕事などは保坂が紹介したものが多い。
中退後は美大受験を志すが、美大受験の前日に義父がギャンブルで莫大な借金を作った事で縊死を遂げる。その後、19歳で100万円を持って美大受験のため単身上京するも予備校のテストで最下位を取る。これでは美大合格は無理だろうと考え、この頃からカットを描いて売り込みを始める。
縁者にアルコール依存症の者が多く、本人も酒で失敗しています。そして型破りの活動をし続けた西原さん。この本、正式名称は「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」(文藝春秋:文春新書:2012初版)といい、60回にわたり西原さんが迷える善男善女の相談をばっさりやってのけるという「痛快な」「人生相談書」になっています。
本の中から、目ぼしい記述をいくつか追っていきましょう。
@英語熱に浮かされた会社に勤めていて、全社員にTOEIC受験を義務づけられ、英語が苦手な男性がどうしたらよいか、との問いに:
*フィリピン人は、英語・スペイン語・タガログ語が出来るから、フィリピン人の彼女を作るのが一番・・・*「フィリピン・パブに行け!!」(P51)
@モノが捨てられない自分。どうすれば良いか?との女性の問いに:
要らんものを持っているだけで、借家代が高くなる、ならば、古着なら古着家さんに持っていけばよいし、バザーに出しても良い。古本なら古本家さんに取りにきてもらっている。
また、世話好きなオバサンたちに声掛けておけば、自然に「ゴミ」は捌ける。
*「「捨てる」が無理なら「あげる」ですっきり。」(P148)
@事業を興すからと借金を申し込まれて、貸さなかった友人が死んでしまった。もともとその友人はクスリをやる人で、貸すにはためらいがあったのだが、いざ死なれてみると、貸したほうが良かったのかと良心が痛む男性:
間違った判断ではない。相談の内容からみると、その死んだ友人はきっちり仕事が出来る人とも思われない。貸しても貸さなくてもどっちみち無駄になる。もしどうしても貸さなければならないとしたら、
*(先方の要求する)「10分の1の金額をあげる」作戦で。(P193)
(@で導かれる文が相談の内容であり、途中のつなぎ文を経て*で導かれる文が結論です。)
今日のひと言:「正しくないけど」という言辞は謙遜で、案外的を射ている回答が多いように思います(役に立つ)。西原さんのように人生の辛酸を味わった人の場合、人生相談にも一定の説得力があるように考えます。ある意味、私も辛酸を舐めていますが、彼女ほど「ばっさり」というわけには行かないようです。
生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント (文春新書 868)
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: 新書
- 購入: 16人 クリック: 466回
- この商品を含むブログ (66件) を見る
- 作者: 鹿島茂
- 出版社/メーカー: 清流出版
- 発売日: 2013/03/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
今日の料理
@コンフリーの味噌炒め
ムラサキ科のこの植物には、毀誉褒貶があります。コーカサス地方原産のこの植物は一時期、豚の餌に良いというので盛んに栽培され、また健康食品としても一世を風靡しましたが、下火になりました。現在ではピロリジジンアルカロイドを含有するというので、厚生省はコンフリーの青汁を禁止しています。ただ、このアルカロイドは、フキノトウ、ツワブキ、ワラビなどの美味しい野菜にも含まれ、コンフリーについても期間限定でちょっと食べる程度なら、大丈夫だと思います。
この草、全体がキュウリのような甘い香りに包まれ、5月頃咲く可愛い花は取って食べると、ほのかな蜜の甘みに驚きます。
料理については、以前から味噌とコンフリーが相性が合うと思っていましたが、今回はオリーブオイルを敷いたフライパンに4cm位に切りそろえたコンフリーを入れて炒め、最後に溶いて砂糖を少々加えた味噌をいれて、出来上がりです。コンフリーの繊細さがわかる料理です。(本来は、コンフリーのバター炒めを食するのです。春に2回くらい。)
(2013.04.15)
@ノビルのヌタ
ノビル(野蒜)はユリ科の野草で、葉や球根を食べるとピリッとすることで有名です。我が家の一角にも生やしていて、主に冬に食べる野草です。夏には地上部が枯れます。味噌で球根を食すと、ラッキョウのような風味が味わえますが、今回は葉を茹で、球根部をよく洗ったのと合わせてヌタにしました。美味しいです。(我が家では、球根の直径が1cmで大きいほうで、小粒です。葉のほうは60cmくらいに伸びています。やや日陰で栽培しているからでしょうか?)
ただ、紛れやすい野草に「タマスダレ」というのがあり、これは毒草ですから、紛れないようにしてください。タマスダレはヒガンバナ科で、白からピンクの花弁をつけ、葉の色がノビルより濃く、厚ぼったいです。また、ニラ臭、ニンニク臭がしません。
(2013.04.19)
今日の一句
見てくれは
悪いが美味い
タンカンさ
私は柑橘類が好きですが、この時期には温州ミカンは店頭から姿を消し、代わりにオレンジと温州ミカンの合いの子の「タンゴール」類が出回ります。タンカンもその一つで、私が買った商品は、表面が美しくなかったですが、滋味をしっかり持っていました。
参考過去ログ:様々な果物と「温州みかん」(ウンシュウミカン)
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130114#1358141363
(2013.04.15)