虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

水って、なあに?(6)(最終回) 灰かむり

(ぜんぶで6話、私が1984年から1985年に渡って某ミニコミ誌に書いた記事を載せます。なにぶん古いですが、今でも一定の価値を持っていると自認しています。私の文章修行にあたる記事です。第6話・最終回。)


                 
 最近、洗濯するとき、貫井弁天(小金井市)の湧水を使っています。野川流入する途中、水路があるので、そこでやるわけです。その際、合成洗剤はもちろん、石けんも使いません。水洗いだけ。もっとも、油汚れが気になる時は、灰(炭を燃やしてできたもの)を使って、タライの中で洗います。それで、私は充分満足して、衣服を着ています。


 ここ10年以上、合成洗剤をやめて、石けんに切り換えよう、という運動が続いていますが、どうして、石けんに切り替わらないのでしょうか。合成洗剤より石けんが、毒性も少ないし、良いことは事実ですのに。その理由は、両者の違いが、相対的なものであり、本質的には違わないからだ、と考えます。


 合成洗剤については、石油を無理やり使って生産されるわけで、問題があるのは当然。石油を生き物にブッかけるようなもの。無リンであろうが同様。これは論外。ならば、石けんはどうか―――「生物由来の油脂に、アルカリ(灰)分を加えて作る」。まず、油脂については、台所で、流しに捨てる天プラ油を回収すれば、河川や湖沼は汚さずに済むし、石けんの原料にできるので、一歩前進でしょう。ところが、もう一方のアルカリ分が問題です。通常は、海水を電気分解して生成する「苛性ソーダ水酸化ナトリウム)」を使います。これは、工業的には重要ですが、誤って目に入ると、失明します。また、電気分解の際、片割れとして、塩素ガスが出ます。この毒ガスは、発ガン物質トリハロメタンの原因物質です。(シリーズ2回目参照:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130124#1359021692)石けんを認めるなら、トリハロメタンも、事実上、認めざるを得ないでしょう。なお、石けんにはナトリウムが多く、そのまま液肥として田畑にまけば、塩害を起します。作物が育たぬ不毛の大地。これは杞憂ではなく。自然をそこねる、人為的技術に乗っている点で、合成洗剤も石けんも同類です。


 再び、湧水について。通常の衣服の汚れであれば、ドロ・ホコリ・塩分が大部分。これは、水に溶けやすい。残りは、水に溶けにくい油脂が10%くらい。なお、石けんが泡立ちにくいのは、塩分によりますから、一度水洗いして、本洗いすればいいのは、ご存知と思います。それに、川は海につながっているのですから、塩分は川に戻すのが良いでしょう。(オジイさんは、川に洗濯へ!)私は、通常、汚れの目立たぬ服を着ますので、水洗いで充分。もし、油が気になったら、灰で洗います。灰は、アルカリ分ですから、タライの中でかき回していると、衣服中の油と反応して、石けんができてしまいます!―――そう、油を落とすには、灰だけで充分なのです。


 近くに湧水や川のない人は、どうするか?簡単なことです。まず、自分の手で水洗いする。それから洗濯機にかけてもいいし、最後まで手洗いしてもいい。下水は、処理場を経て海に行くのですから。塩分に関しては、これで良い。海のものは、海に返せばよい。もっとも、下水全体を考えると、そう簡単ではありませんが。(シリーズ4回目参照:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130203#1359885754)決して、できないことではありません。できない?―――あなたは、怠け者。


 また、機械汚れなど、石けんで落ちにくいものは、どうすればいいか?―――私は、そんなところでは働きませんから、考える必要なし。どうぞ、合成洗剤を使って、健康を損ねてください。やりたくもない仕事を、自分を欺して続けることほど、世の中を悪くするものもありませんよ。(著者=筆者注:このあと、私は機械油にまみれる仕事にも就きました。は、は、は・・・)


 これまで目の敵にしてきた、油脂は、本当に悪者でしょうか。野菜や果物は、自分から、ワックス(油脂)を出して、身を包んでいます。これは、あらゆる意味で、自己防衛になります。カビ・ウィルス・発汗・・・・その他。なのに、これを洗剤で、無理やり取ったらどうなるか。病気になります。人間も同様。やみくもに落とす必要なし。落としたがるのは、単に、見栄えを気にする心に過ぎない。「ダテの薄着は、風邪ひくよ」


 さて、このシリーズも、今回で終了。1年書いてきて、私自身もかなり変わってきました。当初、私は、水しか視野になく、火を蔑視さえしてました。(シリーズ1回目:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130119#1358590569)これは、私の間違いでした。今、私は、中国の世界観にいう五行木火土金水・全てと友達になりたい気持です。この中では、水木土については、これまでも書いてきましたから、火と金について、今考えていることを書きます。


 火。最近、私は、友人に勧められ、炭火を使って料理しています。これがまた、素晴らし。炭火は、自分から燃える、決して、他者からの強要は受け付けない。その火力は強い。玄米も、土ナベで充分炊ける。一人の喜びが他に移り、燃え続ける炭をみていると、本当に、そう思います。抑圧されたガスは、爆発もします。炭火はしない。科学的にも、炭火は単なるカロリーを出すのではなく、「遠赤外線」をだし、ホンワカ・ホンヤリ暖める。太陽の恵み―――私たちの生命の糧。火と水があって、全ては始まる。


 また、灰もすごい。灰の成分は、ナトリウムが少なく、カリウムが多い。理想的な肥料になり得ます。さきほどの洗濯の話の中で、タライに受けた灰入り水は、あとで、肥料にする、という寸法です。―――灰の力は、それだけではありません。詳しくは、『灰の文化誌』(小泉武夫著、リブロポート刊)などを参照してください。そう、灰色の人生、万歳!
私は、灰をかぶって生きて行きたい。灰のように生きたい。


 金。これは、「土から取り出したもの」という語源です。単に金属だけでなく、石油やプラスチック、ガラスやらも含みます。現在の使い道は、工業製品―――人為の最たるものです。私は、それを完全否定はしませんが、やりすぎてはならぬ―――金は、希少だから、貴いのです。私自身、工学部出身ですが、金については、慎重になるべきだと考えます。

 これまでの、6回の連載で、どうしても挙げておきたい点を次に書きたいと思います。


(1) 水は単なる物質ではない。生きている。
(2) 水をきれいにする技術は考えるな。水を汚さない生活をしよう。
(3) いかに汚れていようと、水は水であり、飲めることに感謝しよう。
(4) 水を使いすぎてはいけない。それは、大切なものを流し去り、私たちの生命を縮める。
(5) 自分の近くにある水を使うようにしよう。ダムが嫌であっても、自動車で山奥に汲みに行く発想は、間違っている。
(6) 全ては自分を変えることから始まる。

・・・・・・・・・・・・


 私がこれまで触れてきた水は、ほとんど陸水。それは地球上の水の、ほんの0.1%。千分の一。私は、水を、ほとんど知らない。だから、私のこれからの仕事は、楽しい。
 また、お会いしましょう。        (了)


(**次回から通常のブログになります。)


灰に謎あり―酒・食・灰の怪しい関係

灰に謎あり―酒・食・灰の怪しい関係

土佐備長炭 灰の洗剤(洗濯用) 詰替え用 1000ml

土佐備長炭 灰の洗剤(洗濯用) 詰替え用 1000ml