大往生したけりゃ医療とかかわるな(書評)
- 作者: 中村仁一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/01/30
- メディア: 新書
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なにやらただならぬ題名のこの本、際物好きの「幻冬舎」から出版されている幻冬舎新書です。(あの、イギリス人女性を殺害して逃亡生活を送った市橋達也の手記を刊行するとか。)正式には「大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ」で、著者は中村仁一さん。1940年生まれ。京都大学医学部卒。現在社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長、医師。1996年4月より、市民グループ「自分の死を考える集い」主宰。(以上は巻末の著者略歴より)今年かなり売れて、売上ランク上位10位に食い込んだ本です。
この本のスゴイところは、医療、特にガンにかかわる生き死にの有り方において、抗がん剤などの化学療法、放射線療法を否定することにあります。むしろ「死ぬのは「がん」に限る。ただし、治療はせずに。」(本の帯にある文句)という主張をしています。
ガンが痛むのは、ガンを治そうとして施される上述の治療が、体を痛めつけることにあるとしていて、そういえば、以前、佐藤秀峰さんのマンガ「ブラックジャックによろしく」の「ガン医療編」で、患者の女性が抗がん剤を投与されてから、吐き気がとまらなくなったり、髪の毛が抜けたりする副作用が大きく出たという一節がありました。彼女はQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)が大きく低下し、堕地獄の苦しみを味わったのでした。
それでは、どんな死に方が良いか、というと、なんと「餓死:餓え死に」=「自然死」
です。こうあります:
「飢餓」・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される
「脱水」・・・意識レベルが下がる
「酸欠状態」・・・脳内にモルヒネ様物質が分泌される
「炭酸ガス貯留」・・・麻酔作用あり詳しくは次の章で述べますが、死に際は、何らの医療措置も行わなければ、夢うつつの気持ちのいい、穏やかな状態になるということです。これが、自然のしくみです。自然はそんなに過酷ではないのです。(・・・という理屈です:筆者注)
P49
この説が正鵠を射ているのなら、貧乏人の私がガンに罹ったとき、手術を含む高額医療を受けるのは不可能であろうし、せめて死に際にはモルヒネ注射くらいはしてもらいたいと思っていましたが、ただ、なんにも食べずに=餓えて、脳内にモルヒネ様物質が出来るなら、これほどの福音もありますまい。欣然と死に赴けますね。なお、点滴もしない、水も飲まないという選択をすると、ほぼ7日―10日で死ねる、とのことです。
また、昔の人の場合、ガンなどで体調を崩した人は家族から離れて、食も細くなり、前述のメカニズムで安楽に死へと赴く人が多かったろうとのことです。「食べないから死ぬのではなく、「死ぬ時」だから食べなくなる。」・・・とも書かれています。これが中村さんの言う「自然死」です。
近年の医療は、なるべく「患者の死期を遅らせる」という観点でケア技術が発展してきましたが、食物が飲み込めなくなった(嚥下障害)とき、いろいろな手を使って延命を図ってきました。「鼻からチューブ」、「胃婁(いろう)=胃に直接食物を注入する」「ブドウ糖の点滴」・・・これらは患者のQOLを下げるので問題だし、やらないほうが良い、との中村さんの意見です。
ただ、問題なのは、「ガンで自然死」=「医師に看取られない死」の場合、「不審死」ということで、警察の厄介になることが多く、事情を知った往診医を見知っておかねばならない点、「ガンは治療すべきだ」との医学の常識と戦わなければならないのですね。黙っていると家族が「保護責任者遺棄致死の罪」に問われかねません。
今日のひと言:なかなかインパクトのある本でした。ガンを克服するのが餓死・・・逆説的ながら、考えさせられる本です。
あでやかに
トウダイグサの
雨雫
おりしもの降雨、トウダイグサの葉に付いた雨の雫(しずく)がキラキラ光るのを見て、心を奪われ。
(2012.12.17)
- 作者: 塩田芳享
- 出版社/メーカー: 日新報道
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 久坂部羊
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
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