左前と左ウチワ〜左右をめぐるフォークロア
「左前」と「左団扇:左ウチワ」、よく似た言葉ですが、意味が正反対です。「左前」というのは
左前(ひだりまえ) 1.着物の右の衽(おくみ)を左の衽の上に重ねて着ること。死者に着せる経帷子(きょうかたびら)はそうする習慣がある。 類:左衽(さじん) ★不吉なものとされる。 2.ものごとが順調にいかないこと。特に、金回り、商売などが巧く行かなくなること。落ち目になること。 類:左回り左向き 用例:浮・本朝二十不孝−四「する程の事ひだり前に成て」 例:「会社が左前になる」
で、「左ウチワ」は
左団扇(ひだりうちわ) 1.扇を左手でゆっくり使うこと。2.転じて、安楽に暮らすこと。また、得意になっていること。 類:左扇(ひだりおうぎ) 例:「左団扇で暮らす」 ★利き腕の右手を使う必要もない余裕のある状態をいったもの。
以上、下記ネット辞典より。
http://www.geocities.jp/tomomi965/ko-jien06/ha09.html
こう見てくると、左は右より「劣ったもの」という意識があるようです。古代中国で出来た成語「左遷」も、位を下げる場合に使われる言葉です。
ここで中国の古典・老子の一節を挙げます。
・・・貴人たちはふだんの生活では左を上席とするが、戦いに出れば右を上席とする。武器は不吉な道具であって、貴人の(用いるべき)道具ではないのだ。どうしても用いなければならないときには、貪欲でないのが最もよい。勝利を得ても光栄ではない。それにもかかわらず光栄とするのは、人殺しを快楽とすることである。人殺しを快楽とするような人は、天下において望みをはたすことはできないであろう。
めでたい行事の場合には左を上席とし、不吉な行事の場合には右を上席とする。副将は左に位置し、大将は右に位置する。ということは、葬式の礼法に従うことである。
(老子:中公文庫:小川環樹・訳注 第31章より抜粋)
老子の場合、やはり機能として、右が左に優越するという基本認識はあるようですが、平和な状態では「左」が優先すると言っているようです。この点、中国史のなかでも特異な位置を占める老子らしいです。
日本の場合、中国と左右の価値感が逆転していて、古来、左大臣は右大臣より上位の位置を占めました。この辺、老子的ですね。
それから、インドでは「左手は汚れた手」という認識がありますが、その理由について述べたHPがあるので、引用しようと思います。
インド式
で、問題はトイレの方ですね。
初めてインドにいってまず困惑するのが、トイレに紙が置いてない場合が非常に多いことです。用を済ませてからそれに気づいて、思わず、あの伝説「インド人は手で拭く」が頭をよぎり、気持ちは奈落の底へ・・・。
しかし、落ち着くと便器の脇になにやら見慣れない物が置いてあるのに気づきます。料理用の計量カップを大きくしたような、容量約1リットルくらいの手桶。そして足下にはなぜか蛇口が。なんだこれ。掃除用か?自分で流してくれってことか?しかし真実は深い。そう、インドではこれを使って自分の後始末をするわけです。つまり、右手で手桶を持って左手でお尻に水をかけながら洗い流すのです。
知らずに、近づいてた。
手で拭く、と言われてすぐに私たちが連想するのとずいぶん光景が違いますよね。手で拭くという表現では不充分で、手を使って水で洗う、というのが正確なところでしょう。それでも、実は私は初めてインドにいった時は、水で洗うってのもなあ、とまったく馴染めなかったのが正直なところです。
それが今回は逆に、全然抵抗がなくなっていたのは自分でも意外でした。そう、この8年の間に日本ではウォシュレットが急速に普及して、お尻を洗うということが日常にすっかり定着してしまったのですね。慣れてしまうと、以前インド式に対して持っていた奇異な印象はなんだったのだろうかと不思議にも思います。インドの方がずっと先をいっていたんじゃないか。
http://homepage2.nifty.com/enryuji/howa/howa9703.html 西方に再訪して
こんなわけで、インドではお尻を洗う左手が不浄のものであるとされているようですね。
今日のひと言:右左の議論をするに当たり、「鏡」の概念は不可欠でしょうね。人体は心臓を除けばほぼ左右対称(シンメトリー)であり、右手と左手は鏡を真ん中にして対称ですよね。ただ、人の顔は、左右対称性を完璧に持っているのは100万人に1人くらいと聞いたことがあります。香椎由宇さんがその例だそうで・・・
また、化学の分野では鏡像対称性を持つ「光学異性体」という分子があり、L型、G型とありますが、ノーベル賞受賞者の野依良治さんが、これらを選択的に生成させる技術で受賞されたのです。
今日の四句
しゅくふくを
あたえられしか
みどりごよ
スーパーのレジで、産れたての赤ちゃんが乳母車の上で安らかに寝息をしていたのを見て。「みどりご」とは、葉の芽生えのように若々しい感じの意味合いで、「赤ちゃん」とよぶのと、色が補色になっているのが面白いです。
I happy am ! (ウィリアム・ブレイク)
(2012.10.27)
犬の散歩中、名前の知らない鳥が死んでいたのを見て。体長30cm位。Tpongさん、解りますか?
(2012.10.29)
群雀(むらすずめ)
刈らぬ稲から
飛び立てり
稲の収穫期を過ぎても、まだ刈らぬ田の稲を、スズメが群れなして食べに来ていました。一匹の生き物のように見えました。
(2012.10.30)
柿を締め
咲き誇るかや
アサガオ花
つる性植物のアサガオが、柿の木に絡み付いて咲いているのを見て。
(2012.10.31)
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