虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「一かバチか」・・・易経占いの驚き

太極図

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 「一かバチか」という言い回しがあります。「バチ」とは「八」に通じるため、このコトバは「一か八か」という言い回しに直せます。こういう表記には、諸説あるようですが、このブログでは2通りの謎解きをしてみたく思います。

1)サイコロ博打丁半博打:ちょうはんばくち)で、「丁」「半」の、前者から「上の1本棒から一」を、後者から「上の2点の開き方を変えて持ってきた八」を持ってきて、「一か八か」としたというのです。


一応、上の解釈でそれなりに納得できますが(出典多数)、ほかの解釈もありますね。たとえば「一かバチか」と同義に使われるコトバに「乾坤一擲:けんこんいってき」というのがあり、これは乾(ケン)が天を表し、坤(コン)が地を表し、それらをすべて投げ出し賭けにでることという意味ですね。これは易経(えききょう)から取った表現です。この本、英語で言うと「The Book of Change」(変化の本)、「The Book of Chameleon」(カメレオンないしトカゲの本)と呼ぶのがふさわしく思えます。
 それで・・・


2)もちろん、易経哲学書としても読めますが、占いとしての易経は、私の体験上、ほかのどの占いより的中率が高い気がするスグレモノです。中筮法(ちゅうぜいほう)という、手続きがもっとも妥当な占いを例にとります。(煩雑でもない、簡素すぎもしない)


 まず、タケヒゴ(筮竹:ぜいちく)を50本用意します。そして1本は太極として使わずに置いておきます。
また、残った49本を「念を込めながら」2分割し、右手に残ったタケヒゴ(地策)から1本取っておき(小指と薬指に挟む・人策)、左手のタケヒゴ(天策)から、8本づつ取り除いていきます。そうすると、最終的に手許に残るのは0本〜7本。ただし、これに先ほどの人策を加えますので、実際は1本から8本になります。その残った本数に応じて、コウ)を割り当てます(陰陽に応じて一本)。以上の動作を6回繰り返し、(け)が決定されます。そのうち、1本とか8本とか残った場合は、時間とともに被験者の運勢が大きく変化するとされます。
3本残ったら「少陰」を示す。といった感じですね。これは「陰の爻」を意味し、陰をおきます。そしてこのようにして、下から上に向かい、6回の操作で6爻重ね、現在の運勢とし、1,8本でた場合には爻の陰陽が変わり、未来の運命を知ることができます。2^6で64卦なわけです。八卦八卦で8*8=64といってもよいです。

      (中国の思想 第7巻 易経徳間書店より)

  
 八卦の数々(http://koinu2005.seesaa.net )より

 ただ、解決すべき問題をよく考えてから占い、暗殺の成否など「不正」なことを占ってはならず、一回目の占いが気に入らなくても、2度、3度と占ってはならないとされます。(初筮は告ぐ、再三は涜る易経には64個の卦がありますが、どの卦が良い悪いということではなく、卦が告げるメッセージを素直に聞くという態度でおれば、易は必ず的中するということなのです。この辺、俗な宗教とは物がちがいます。ただ、易経儒家あるいは儒教道家あるいは道教の共通する経典なので、宗教の一種とも言えるかもしれません。その辺は否定できませんが、そうであるなら、その経典としての完成度は高いと言えます。私には、老子荘子と同じく一種の科学のように思えます。老荘思想では、老子荘子易経を「三玄の書」とよびます。


その卦の読み方は易経のなかに書いてあるので、タロットカードのように霊感をあまり必要としません。集中して易占をするとき、無心になって手が動き、運命というものに接触できるのだ、と思います。いわゆる「暗在系」への接触です。(この用語が妥当なのかは私にはよく解りませんが。)

 
 私は以前、「農業高校に進学したけど、それでよかったのでしょうか?」と易占いをリクエストされ、「雷水解」・・・「解決済み・悩みは無用」という卦が出て、当人も納得したようでした。
これは、易占いの際立って鋭い側面です。それから、家庭教師先で成績不良で高校を辞めたがっていた生徒を占ってみたところ、現在「山風蠱:さんぷうこ」(最悪の状態である)から「雷天大壮」(努力が必要)と変わり、この占い後、高校を辞めた彼の未来は彼の努力にかかっている、ということになりました。また、私の知人が職場であまり仲のよくなかった同僚を易で占ったところ「ちかぢか辞める」と出て、的中したそうです。


 さて、なんの話だったかというと、「一か八か」のことでしたね。今述べたとおり、中筮法における、残ったタケヒゴの数・・・それが1から8までの可能性があり、1と8とは両極端である・・・そんなあたりがこの言い回しの根源にあるのかも知れません。1は「陽極まる」8は「陰極まる」といった意味になるでしょう。


今日のひと言:「太極図」というマークを知っていますか?白と黒の図形が、御互いを抱き込むように回転しているような図ですが、この図は、いい加減な着想から生まれたのではなく、むしろ、卦・陰陽の有様を数学的に突き詰めたものです。以下のHPを参照して下さい。面白いですよ。

 http://www.maroon.dti.ne.jp/uqmk/ekigaku/004.html

この形をした太極図は、陰陽太極図、太陰大極図ともいい、太極のなかに陰陽が生じた様子が描かれている。この図は古代中国において流行して道教のシンボルともなり、今日では世界中に広まった。韓国の国旗にもなっている。白黒の勾玉を組み合わせたような意匠となっており、中国ではこれを魚の形に見立て、陰陽魚と呼んでいる。黒色は陰を表し右側で下降する気を意味し、白色は陽を表し左側で上昇する気を意味する。魚尾から魚頭に向かって領域が広がっていくのは、それぞれの気が生まれ、徐々に盛んになっていく様子を表し、やがて陰は陽を飲み込もうとし、陽は陰を飲み込もうとする。陰が極まれば、陽に変じ、陽が極まれば陰に変ず。陰の中央にある魚眼のような白色の点は陰中の陽を示し、いくら陰が強くなっても陰の中に陽があり、後に陽に転じることを表す。陽の中央の点は同じように陽中の陰を示し、いくら陽が強くなっても陽の中に陰があり、後に陰に転じる。太極図は、これを永遠に繰り返すことを表している。魚眼の位置は下記で述べるように古来のものでは左右に置かれていたが、現在流行のものは上下に置かれることが多い。

Wikipediaより。


なお、「易経の謎」(今泉久雄:カッパブックス)には、大変面白い記述があります。全ての生物の設計図である「DNA」、二重ラセンの中核にあたる4つの塩基「アデニン:A」「グアニン:G」「シトシン:C」「チミン:T」のうち、AとGを陰、CとTを陽と配当するとき、それらが三つ組みで一つのアミノ酸・・・ひいてはタンパク質を決定するのですが、なかでも、遺伝子を解読する際の出発点を示す記号がATGであり、易では坎(カン:陥る)の卦に相当し、TAA,TAG,TGAが解読の終了を示す記号で、艮(ゴン:止まる)の卦に相当するそうです。遺伝子情報が3つ組みであるのと八卦(はっけ)が三つ組みであることには、深い関係があるという趣旨の本でした。


また、私は空海があまり好きではありませんが、それは彼が若いころ書いた「三教指帰:さんごうしいき」で、儒教道教を貶めて、仏教がベストな宗教であるとした点です。もちろん易経も意識したうえでしょうが、空海が本当に易経を理解していたかは疑問です。そのかわりに、やたら煌びやかなだけの真言宗を始めたわけですね。


 それから、ドイツの万能の天才(特に数学)、ライプニッツは、易経の原理を聞き、0と1からなる2進法を着想しました。この2進法は、後世、コンピュータの作成の理論的支柱になりました。


易経に関連した過去ログ:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060109 (のコメント欄)

易経 (中国の思想)

易経 (中国の思想)


今日の料理

 昼ごはんとして、お好み焼きを食べました。私の場合、薄力粉、卵、キャベツ、ネギ、紅ショウガ、揚げ玉、干しエビ、豚肉などを入れます。今日は思いつき、プラスアルファで青シソの葉を一枚ちぎって入れました。そこはかとない香気が漂い、なかなかの一品になりました。


 ちょうどピザならバジルにあたるのがシソなのですね。バジルもシソもヒマラヤ山麓の原産で、西に伝播したのがバジル、東がシソなのです。赤い葉の品種があるのでも似ています。(ダークオパール・バジル、赤シソ)ただ、アジアには青シソと形態がそっくりで香の違うエゴマがあります。英語名は「perilla」と共通です。区別されないのですね。


ただエゴマは韓国料理で焼き肉を巻いて食べるので有名で「beefsteak plant:ビフテキの植物」とも呼ばれます。我が家でもその目的でエゴマを栽培しています。(エゴマの種からオイル(アルファ・リノレン酸)が採れるのも有名です。EPAとかDHAなど、青魚に含まれる成分に変化するので、山間地で魚が思うように摂取できない地方では、よく栽培されています。)

              (2011.08.07)