虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

お茶にごす。・・・イジメの芽

(堂々全五回に渡る新旧マンガ特集その4)



 「お茶にごす。」は、「今日から俺は!!」の作者の西森博之氏が週刊少年サンデーに現在進行形中で連載している作品です。(2009年7月現在9巻出ています)


 「今日から俺は!!」で、主人公が普通の生徒から「ツッパリ」の道を選んで勢力の開拓に邁進(まいしん)するのに対し、「お茶にごす。」の主人公・船橋雅矢(ふなばし・まさや)は、ツッパリの道から「足を洗う」つもりで「茶道部」に、悪たれ仲間の山田航(やまだ・わたる)とともに入部します。部長の姉崎奈緒美さんの淑やかさに惹かれた、という設定になっています。(船橋雅矢と山田航は開架高校1年生)


 でも、「“悪魔(デビル)”まークン」という、有名なあだ名があるため、いろいろなツッパリから勝負を求められていきます。その都度「“悪魔(デビル)”まークン」は対抗者を倒していきます。


 彼が強いのは「生まれつき」という他ないような気がします。ただ、条件反射的に「ツッパリ」が攻撃してきたら、反撃をするのみ、という感じです。喧嘩が天才的に強いのです。

 最も「偉大な」エピソードは、小学生低学年時代、対「小学生」の喧嘩に勝利したあと、兄弟の「小学生の高学年」が仕返しにやってきて、これも返り討ちにします。・・・こんな感じで「大人にも」勝ってしまうのです。


 さて、表題のお話にはいりますが、ここに、ユニークなキャラが登場します。樫沢光輝(かしざわ・こうき)成績バツグン、格闘技(カラテ)に通じ、資産家の息子。軽挙高校1年生。


 かれは、「“悪魔(デビル)”まークン」と戦い(姉崎奈緒美の心を惹こうとしているという意味でも)、「自分の格闘技なら「“悪魔(デビル)”まークン」に勝てると思い」対峙したところ、思わぬ点を「“悪魔(デビル)”まークン」に指摘されてしまいます。樫沢の「ヒゲ」、それも頬ヒゲが濃く、剃っていても、顔半分が「ブルー」に見えるというのです。この観察眼は、なかなかのものです。


 これは肉体的な一特徴に過ぎないですが、ヒゲの毛穴が大量にあり、それを「ブルー」と形容することは、皆がその情報を共有した時点で、「お笑い」のターゲットになってしまうのです。これは「デビルワード」(悪魔の一言)と後々言われたそうで。


 ここに、私は「イジメ(いじめ)の芽」を見出すのです。樫沢は彼の学校のリーダー的存在ですが、この「ブルー」のあだ名は、彼の評価を著しく下げることが予想されます。ましてや、普通の子がこのようなレッテルを貼られたら、学校に居場所がなくなるのではないでしょうか。


今日のひと言:樫沢は、そのあとの戦いで、カラテの型が・・・とか考える間に「“悪魔(デビル)”まークン」に倒されてしまいます。


以後も話に登場しては、「“悪魔(デビル)”まークン」の引き立て役になってしまうのです。


 このブログをエントリーしたときは知らなかったのですが、本作品は最終回を迎えるということだそうです。
良い作品なのだから、もっと続けてもいいような気がします。姉崎先輩が卒業してしまい、茶道部に通うモチベーションが下がるのも解る気もしますが。


なお、参考記事として「いじめ―ひとりぼっちの戦い―」
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20080317
を挙げておきます。(コメント記事から本文に昇格)



天使な小生意気 〔ワイド版〕10 (少年サンデーコミックススペシャル)

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お茶にごす。 9 (少年サンデーコミックス)

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