紙すきの精神的側面
*紙すきの精神的側面
紙すき特集 3
岡山県倉敷市の備中和紙製造元(086−465−2705)の丹下哲夫氏は、隠れも無い和紙名人です。どんな紙質の紙でも漉け、以前その雁皮紙(ガンピシ)が昭和・東大寺大納経の用紙に採用され、多くの画家、書道家が揮毫したとのことです。
その丹下哲夫氏のところに見学に伺った際、「この男になら上げてもいいかな」と思われたのか、「手漉き和紙の出来るまで」(丹下哲夫・著)という紙のサンプルまで入った分厚い本を頂ました。そのサインにいわく・・・
「紙は心で漉く」――そう、紙を漉くにはそれに見合った精神状態が必要なのです。
また、別の紙漉き屋さんをお尋ねした際、(それまで伸ばしていたヒゲをなんとなくそりたくなってそって行ったのですが、)埼玉県小川町の田中昭作氏は、私の顔をみて
「紙漉きをするやつには、ヒゲを伸ばした奴はいないな」とひと言。これはだいたい当っていると思います。私の経験上。唯一「季刊和紙」(わがみ堂:現在休刊中)で紹介されていた紙漉き屋さんの中に、ヒゲを伸ばした方がいらっしゃいました。
さて、「紙すき」は「刀鍛冶」と同様、もっともランクの高い技術だと私は思います。それは作業の一工程で「物を水のなかに「刺し込む」」作業を含むからです。その一瞬の水のありさまは制御できないのです。不連続性があります。陶芸の場合は連続作業でかたがつきます。
そして一枚すくごとに繰り返される「刺し込み」を含む一連の工程。この繰り返しが「魂を浄化する」と思われてならないのです。
今日のひと言:私は自分の漉く拙い和紙を「Zeus Paper」と名づけましたが、プリンター用紙としては、なかなかいい、と思っています。
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