写真家・星野道夫の遭難
私は以前過去ログで
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20071017
(ライフルをカメラに持ち替えて・・・写真とは)
というエントリーを書いたことがありますが、そのなかで
ところで、写真の一枚一枚はshot(ショット)と言いますね。これはいみじくも狙撃の一撃(shot)と同じ言葉です。確かに、照準を合わせて標的を狙うという意味で、写真撮影と狙撃は同一視できます。実際、ネットで「写真、狙撃」で検索してみたら、現役のカメラマンが「少女にズームアップすること」を「狙撃」と呼んでいる例がありました。違いは、実弾が飛び出すか、映像を撮るかの差異です。ヨーロッパ人のいう「未開民族」は、写真撮影を「魂が抜かれる」として嫌がったという事例が結構あります。アメリカ・インディアンしかり、江戸時代の日本人しかりです。「魂が抜かれる」=「死ぬ」ことと認識されたのでしょう。
人類が優秀な銃器を手にしたとき、まず行ったのがトラやライオンなどを狩る「猛獣狩り」でした。撃ち殺したトラをうず高く積んで、ほくほくと記念写真を撮ったりしたものでした。素手ではかなわぬ相手を苦もなく殺戮できる快感に酔ったのでしょうね。
上述のカメラマンがカメラではなくライフルを手にしたらどうなるか・・・一つの可能性として、彼はヒグマ狩りをするでしょう。カメラを持つ行為と、ライフルを持つ行為は、近接したメンタリティーに支えられているというのが私の見解で、写真撮影というのは案外残酷な行為だと思います。
ところで、写真家・星野道夫(ほしの・みちお)さんという方がいます。Wikiによると
1952年9月27日 - 1996年8月8日)は、写真家、探検家、詩人。千葉県市川市出身。
主に極地(北極圏)の野生動物の生態を写すのをもっぱらやっていました。
彼は、カムチャツカ半島でヒグマ(グリズリー)に襲撃されて命を落すのですが、
Wikipedia より8月8日の深夜4時頃、星野の悲鳴とヒグマのうなり声が暗闇のキャンプ場に響き渡った。小屋から出てきたTBSスタッフは「テント!ベアー!ベアー!」とガイドに叫んだ。ガイドが懐中電灯で照らすとヒグマが星野を咥えて森へ引きずっていく姿が見えた。ガイドたちは大声をあげシャベルをガンガン叩いたが、ヒグマは一度頭をあげただけで、そのまま森へ消えていった。テントはひしゃげていてポール(支柱)は折れ、星野の寝袋は切り裂かれていた。ガイドが無線で救助を要請し、ヘリコプターで到着した捜索隊は上空からヒグマを捜索し、発見すると射殺した。星野の遺体は森の中でヒグマに喰い荒らされた姿で発見された。
星野は「野生のヒグマは遡上する鮭の多いこの季節に人を襲わない」との考えからテントに泊まり続けた。その知識は基本的には間違いではないが、今回星野を襲ったのは地元テレビ局の社長によって餌付けされていたヒグマで、人間のもたらす食糧の味を知っていた個体であった。さらにこの年は鮭の遡上が遅れ気味で、食糧が不足していた。死の直前まで撮影された星野の映像は遺族の意向もあり、「極東ロシアヒグマ王国〜写真家・星野道夫氏をしのんで〜」と題し、後日放送された。
確かに、その遭難当時、マスコミで報道されたのを覚えています。なんでも、射殺されたヒグマの胃から、星野さんの体のパーツが発見されたというショッキングなニュースを聞きました。
星野さんは、慶応大学卒業後、‘78年にアラスカ大学野生動物管理学部に留学します。以後はアラスカの人びと、自然、野生動物などを撮影し続けます。そして最後には上述の惨禍にあったのですが。・・・私は今彼の執筆した本「CARIBOU」(カリブー:北極にすむ鹿:新潮社)、カリブーの生態を記録した写真集を借りていますが、カリブーの知識が豊富なのには感嘆してしまいます。
この人の場合、このブログで始めに書いたような「ハンター」的な側面はあまり見えません。あくまで野生動物に「暖かく接している」ような気がします。その辺、写真家というより詩人という表現が相応しい気がします。写真で多くを語る詩人。「星空の道を歩くおとこ」と、彼の名前は字解きできますね。天使のような性格であったかも、と思います。しかし、自然の猛威に捕らわれてしまったのですね。無念だったでしょう。
今日のひと言:今回のブログは(id:honmado)さんとのブログ上でのやり取りで星野さんに言及されたことから、作成したものです。
http://d.hatena.ne.jp/honmado/20121007
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今日の料理
@ナスの塩麹漬け
ナスは、近年出回っているサラダでも食べられる品種。塩麹で漬けると、一晩で美味しい一品になっていました。
(2013.05.06)
@豆・ウルイ入りのコールスロー
庭のウルイ(ギボウシ)が大きくなってきたので、少々収穫し、市販の豆類4種の盛り合わせ(大豆、青大豆、ヒヨコマメ、レッドキドニー)とともに細切りキャベツと和え、コールスロー(Coleslaw)にしてみました。ウルイについては以下参照。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20130424#1366769248
(2013.05.06)
今日の一句
しとやかに
花を咲かせる
タイムかな
ハーブであるタイムは、男性を思わせる麝香臭があり、古代ギリシャでは「あの人はタイムの香がする」というのが男性に対するほめ言葉になっていました。それほど男性的だと思われるタイム、自身は華奢な植物なのでした。
(2013.05.06)