虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

私が出会った3つの大きな人格:サカキナナオ氏:槌田劭氏:丹下哲夫氏


 私がこれまで出会った巨大な人格を持つ方々を紹介します。


 サカキナナオ氏(ナナオサカキ氏)は、全世界を自分の庭であると心得ていた大詩人です。いわゆる「ヒッピー」運動のリーダーでした(もっとも、ヒッピーの人たちは「部族」と自称していましたが)。60代を過ぎて英語をマスターし、アメリカの大学で「俳句」の講義をしたりしていました。

 ナナオ氏と出会ったころの私は「農」を主眼に据え、自分でどんなことができるか模索していて、彼との出会いは、その道が間違えでないことを示すものでした。また、私に詩才がある、と人づてに励ましてもらいました。なに、言語の秘密のひとつを解き明かす詩を彼に贈ったのを受けての励ましでした。


ナナオ氏は詩人のゲーリー・シュナイダーアレン・ギンズバーグ谷川俊太郎たちとは交流はありましたが、日本の詩壇からは完全に無視されていました、そんなことは意に介さず、わが道を突っ走り、2008年12月24日、長野県大鹿村コミューンでその一生を閉じました。彼の英語の詩と日本語の詩をふたつ。


PLEASE

Sing a song
or
Laugh
or
Cry
or
Go away.

    ”REAL PLAY” より

ナイフを研ぎながら



ナナオよ  ナイフを錆びつかすな
ナナオよ  心を錆びつかすな


海の風は  ナイフに悪いぞよ
海の風は  心に善いぞよ

海の風は  悪くない
ナイフを  研げばよい


海の風は  善くも  悪くもない
海は  心の砥石


磨かれた  ナイフの心
磨かれた  心の海


ナナオよ  
今夜は  ゆったり眠れ


咲きほこる  浜木綿のかげ
サンゴの砂の上
南十字の星を  枕に


 1976.2月  沖縄 西表島

       “犬も歩けば”  野草社

(注:この詩の「ナイフ」とは、人を殺める武器ではなく、森羅万象と対峙する際に要求される「心構え」のことだと思っています。)


槌田劭(つちだ・たかし)氏は、元京都大学工学部の助教授、学園紛争のさなか、理性の府である大学が暴力の場になったことが信じられず、また折からの「使い捨て」の風潮に納得がいかないため、京都大学を去り、「京都・使い捨て時代を考える会」を設立し、ゴミの回収に汗水たらす・・・という運動を主導しておられました。そんな調子で生活自体を「原理的に」見直す厳しい営為もなさっていました。私たち自主講座「グループ水」のメンバーは、東大の自主講座に彼を招き、おおきな感銘を受けました。まるで「読心術」を心得ているかのように人の考えていることが読めるような人でした。じつは、先ほど挙げたサカキ・ナナオ氏にもそんなところがありました。サカキ氏は文科系の代表、槌田氏は理科系の代表的なひとですが、突き詰めると同じような境地に行くようですね。

参考過去ログ:沈むアヒル  http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070828



丹下哲夫氏は「備中和紙」:(岡山県倉敷市)を漉く紙すき屋さんです。彼は見事な和紙を漉きます。東大寺の昭和大納経で、あまたの書家、日本画家が使用した雁皮紙(がんぴし)を漉いたのは彼です。


 もともと、備中(びっちゅう)の国、清子内紙(せいごうちかみ)を漉いていた川の上流の部落で生まれ育った丹下氏、請われてその部落の紙すき屋さんに婿入りします。ところがこの地域がダムによる水没地域に指定され、ろくな保証金も貰えずに紙すき屋をやめる家もありましたが、「せっかくこれまで続いてきた紙漉きを、養子の自分の代で廃業するのは申し訳ない」と、倉敷市に転居し、「水質が上流と同質だったので、紙すきを続けられたのだ」と彼は言っていました。不屈の人です。養子だからこそ頑張るという感覚は、養子になったことのない私には良くわかりませんが。



今日のひと言:私一代の人生で、これほど優れた方々と知り合いになれたのは、極め付きの僥倖です。


今日の一句


線路上
カラスついばむ
むくろキジ



私の住む地域には、キジ(雉)が住んでいますが、そのうちの一羽が
鉄道のレールの内側で死んでいて、目ざといカラスがその美い光沢の体をついばんでいました。
「むくろ」とは「死体」のことです。 

この句は「写生句」というように、見たままを詠ったものです。( 2010.11.09)



糖尿病の気のある私、改善のためこれまで冬は牡蠣(かき)夏は根昆布を食べてきましたが、昨日掛かりつけの病院で季節ごとの血液検査の結果を聞いたところ、甲状腺の異常をしめす3つの指標のうち、2つに要警戒データがでていました。「TSH」と「FT3」。前者は標準が「0.4〜4.0μIU/ml」なのに対し、「0.1以下」、後者は標準が「2.2〜4.1pg/dl」のところ「4.3」と、標準値から外れています。甲状腺異常・・・バセドウ病橋本病などの疑いがあります。

http://d.hatena.ne.jp/iirei/20100316:糖尿病を海産物(牡蠣、根昆布で改善する

 ここは、やはり半年ほど夕食時に決まった量根昆布を食べてきた副作用のように思います。この間、確かに血糖値は低く抑えられましたが(今回103mg/dl)、甲状腺には、根昆布に含まれるヨード沃素)のため、異常が現れたとみるべきで、根昆布を毎日たべるのは控えるべきであろうとの結論に至りました。7月に検査を受けたときは異常なかったのですが・・・以上、緊急のお知らせです。(2010.11.12)

共生の時代―使い捨て時代を超えて

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犬も歩けば

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