虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ある恋の一生〜魔の時間のずれ(散文詩)

私の恋愛遍歴 その1


私はこれまで10指に余る女性に、恋愛感情を抱き、そのうちの70%くらいの女性とは相思相愛だった。


なかでも印象に残る女性の1人、仮にUさんとしておくが、彼女とは、詩人2人を巡って知り合った。最初は山尾三省さんという詩人の朗読会が東京・西荻にあるホビット村で開かれ、屋久島に移住し、自給生活をする山尾さん的な生き方を理想としていた私は、座の前のほうで坐って朗読会開始を待っていた。そのとき、ある女性が私を見て微笑んでいるのが、眼に入ってきた。


朗読会は無事に終わり、山尾さんを囲んでの飲み会になった。その場で、私は、当時の私が考えていたことを必死に伝えようとしたが、山尾さんは「君と話していても詰まらない」と言って、そっぽを向かれてしまった。そのときUさんが「やっぱり言われたわね」と初めて声を掛けてきた。私は「僕もそう思っているから、否定はしないよ」と返すと、やや彼女は驚いた様子だった。


彼女・Uさんは言った:「自分のことを、自分の言葉で雄弁に語りなさいよ!」と歌うかのように・踊るかのように。この言葉にはとてもインパクトを受けたので、以後私はそのようにあろう、と常に心がけた。そして、彼女が飲みかけのグラスを、「これ、飲んで!!」というので私は当然のように飲み干した。彼女の唇がかすかに「うごめいた。」・・・その瞬間、私は「ああ、これは恋に落ちたな」と思った。Uさんの唇に惚れたのだ。(一説に、女性の唇と女性性器には関連性があると言う。)そのUさんは、月刊雑誌某の編集者であった。当時、私も彼女もヒッピーの在り方に大いに関心があったのだが、いわゆるヒッピーの人は、「部族」と自称していた。そんな彼らの道しるべが山尾三省さんであり、あとで述べるサカキナナオさんであった。


このように知り合った私とUさんは、以後、数回朗読会で逢った。山尾さんらとともに、ハイキングに行き、彼女との相互の恋愛感情は確固たるものになった。冷たくしたこともあった。最後に朗読会で逢ったのは、世界を股にかける大詩人・サカキナナオ氏の朗読会。じつは、このとき、暫く環境問題に関わる自主講座の運動をリタイアーしていたG氏が、朗読会に行くというので一緒に行こうと思い、そのときに、我々自主講座・グループ水が企画していた講座の案内ビラに着色しようとしていたのだが、G氏が中々現れず、着色の作業に身が入らなかった。


結局、G氏は現れなかったので、作業も中途半端なまま、朗読会会場(国分寺市)に出かけた。(G氏は、すでに単独で移動し、会場にいた)会場は盛況で、私が坐った席の真向かいにUさんはいた。そして朗読会。私は例の着色作業を、詩の朗読の伴奏のつもりで続け、会場の来客たちに配った。朗読会もほぼ打ち上げの際、Uさんは、私の左に座り、わたしにしなだれかかってきた。私も幸福絶頂で、「Uさんは僕のものだ」と心の中で言っていた。そして彼女をいたわりつつも私は正面を見つめた。未来を切り開く積もりで。


ここで、朗読会の2次会は、2手に分かれるが、私はG氏と話すこともあり、Uさんとは別れたが、彼女の知り合いがUさんがいるところの道案内をしてくれることになっていた。ところが、次に私を待っていたのは、急速なカタストロフィ。G氏がどう見ても、ナナオ氏の個人崇拝をしているように見えたし、また知人のWさんというナナオさんの大ファンという女性が「折角の朗読会を、あんなガラクタ(ビラ)で汚しやがって!!」と言ってきたので、私はこの呑み屋を飛び出した!「こんな連中の世界になど居るものか!」と思いながら。


そして、当然のことながら、私はUさんのことを、頭からすっかり忘れていた。Uさんも含む、いわゆる部族(ヒッピー)の人たちのことを。その晩、悲しんだ彼女は、私ではない、べつの男に慰められ、契りを結んだのだという。私はあの夜のことは、人生でも最大級の失敗だったと思っている。それは、自主講座の部屋での塗り絵が会場までずれ込み、私のひとつひとつのステップがすべて後手後手にずれ込んだ「魔の時間のずれ」に柔軟に対処できなかったことに私のミスがあったのだろう。また、私が最後に彼女の編集室に行ったとき、私は自分でも制御できなかった不実の言い訳をする気は・・・なかった。(自分で自分にツッコむと、「エエカッコしい」だった)


それぞれ自然とともに暮らすという視点で活動し、きしくもそれを実践していた山尾三省さんとかサカキナナオさんの詩の朗読会で知り合い、また別れた私たち・・・もしも、私があの時キレずにUさんと落ち合っていたら、今では子供も2、3人ほど自然児を育てあげていられたのかと思うと、実に残念な別れかただったと思う。彼女は、インドでいう、理想的な女性・・・パドミニ(蓮女)だったと今でも思う。(このパドミニという言葉は、インドの「カーマスートラ:愛の経典」に出てくる。)彼女は、桜吹雪の中、コンクリートの上に落ちた花びらが、もし落ちるところが土の上ならば、土に帰っていけるのに・・・と悲しむ女性で、その感性は私にも大きな影響を与えたのだ。


「パドミニ」については、以下のエントリーを参照して頂きたい。

http://kermasutora.blog27.fc2.com/blog-entry-1.html



これまで恋愛感情を抱いた他の女性にも、それぞれ破局に至るプロセスがあったが、自分は正直に付き合っているのに、この恋愛成就率0%というアベレージはどんなものかと思ってしまう私なのだった。




バートン版 カーマ・スートラ (角川文庫―角川文庫ソフィア)

バートン版 カーマ・スートラ (角川文庫―角川文庫ソフィア)

ここで暮らす楽しみ (山尾三省ライブラリー)

ここで暮らす楽しみ (山尾三省ライブラリー)

亀の島―対訳

亀の島―対訳



今日の料理


@桑の新芽のオイスターソース炒め






桑(クワ)という木は、なにも蚕(カイコ)の餌になるだけではなく、色々な意味で有用な植物です。漿果(しょうか)はマルベリーと言われますが、そのドドメは白いうちに収穫して、救荒食ともできますし、根の皮は漢方薬、幹は炭の材料、また葉にはDNJデオキシノジリマイシン)という糖尿病に効果のある成分を含みます。今回は、摘みたての桑の新芽のオイスターソース炒めを作りました。So Good !

 (2014.05.09)




今日の二句


芽が出でて
くさぐさの草
絢か(あやか)なり





植物の芽が出るのが楽しい季節。コリアンダーパクチー)も発芽し、これからいろいろ楽しませてくれるでしょう。

 (2014.05.11)



目を奪う
五色柳の
赤い葉や





農地の片隅で赤い葉を披露している五色柳。その姿、しっかり目に焼き付けたぞ。

 (2014.05.11)