虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

怪しい「工学」―遺伝子工学、金融工学、その他工学

警句箴言特集・中休み)



 私は都市「工学」の出で、工学とはなにか、よく考えます。その際、「遺伝子」「工学」と「金融」「工学」という2つの工学について長く考えています。そこで、まず「遺伝子工学」の話題・・・遺伝子組み換え植物についてです。

〜〜 大豆のはなし 〜〜            
 約95%が輸入。 輸送中に、虫がつくのを防ぐ為に、収穫後にも農薬が散布される。「米国で栽培される大豆の9割が遺伝子組換え。米国からの輸入の8割は、遺伝子組換えと考えられる。その大豆の大半は、食用油やしょうゆの原料、家畜の餌に利用されている。」<2005年4月5日毎日新聞より>

 Q 今までの品種改良と遺伝子組換えとの違いは?
 A 品種改良は、花粉とめしべを自然に交配させる方法によって行われていた。植物の基本であり設計図である遺伝子には、なんら手を加えていない。遺伝子組換えは、細菌や動物、昆虫など全く種の違う遺伝子を植物に組み入れる、自然界で起こり得ない技術。大豆を植えて、雑草を枯らす為に除草剤をまくと、大豆まで枯らしてしまう。そこで、遺伝子組換えによって、特定の除草剤をかけても枯れない遺伝子組換え大豆を開発した。

 Q 誰が開発したのか?
 A アメリカのモンサントという農薬製造販売メーカーなど。減農薬志向が強まる中で、農薬の売上が伸び悩むのを懸念して開発した。特定の除草剤に枯れない遺伝子組換え大豆とその除草剤をセットで販売し2重に利益を得ている。

 Q 健康への影響は?
 A 安全性が十分確認されていないので、影響がでる可能性がある。実際の所どうなるかわかっていないので、消費者は、モルモット状態。医薬品の新商品は、長い間動物に与え、人間に投与され、効果と安全性が確認されて市場に出る。食品は、医薬品と違って、不特定多数の人が食べるので、医薬品以上に安全性を確認が必要なはず。

http://www.rakutendo.com/m-tayori/0606.html より

  モンサント社・・・この会社が、自由に遺伝子を組み換えた作物を作り上げ、それを市場に出すことで、巨利を得ているわけです。でも、これって・・・自然への不敵な挑戦だと思われるのです。実際、ソースは失念しましたが、この組み換え大豆でマウスを育てたところ、次世代は半分に減り、次次世代はいなくなった・・・というお話が怖いです。



 つぎに「金融工学」・・・これは、アメリカが繁栄を謳歌する際に、つまりサブプライムローンの焦げ付きが起こり、リーマン・ブラザーズが破綻する前まで、数学を援用していろいろな金融商品を作り出してきたのですね。ゲーム感覚で数字を扱っていたな、と思います。確かに、数学の世界では「ゲーム理論」というのがあります。数学を現実社会にそのまま適用するのは、じつは非常にやばい行為で、どこかに矛盾が現れると思います。


これに似た例として、日本の公害の歴史のなかで、工場の有害な排気ガスの大気中への拡散にたいして、「サットンの式」という現実に起きるガス拡散をまったく反映しない数式を企業・行政側が持ち出し、この式に当てはめれば有害物質は住民に影響がない、と主張したことがありますが、これが真っ赤な嘘だと解ったといういきさつがあります。

 どちらの「工学」にも、腐臭が漂っています。してはいけないことをして、やがて神から天罰を下されるような。この2つの工学は同列ですね。


ほかの工学について、私は拙著「東大えりいとの生涯学習論」で触れていますので、引用します。


当初、水を専門とすれば、人を傷つけることはあるまい、と考えていましたが、そうではありませんでした。「水」こそ、世界最強の存在であり、その扱いを誤ると、とんでもないことになります。勿論、直接戦争用の兵器を作る機械工学、電気・電子工学、化学工学ほどははっきりしていませんが、都市工学も「工学」の一分科なのだから、殺伐とした性格を持っています。例えば「水俣病」。この公害病を引き起こしたのは勿論化学工業ですが、その問題の解決を長引かせたのは、紛れもなく「水」を専門とする衛生工学者の怠慢、あるいは行政、企業へのおもねりなのだと考えます。


 ところで、東大理科一類は主として工学部に当たり、理科三類は医学部に当たります。では何故工学部が医学部より先に来るのでしょう?東大でも医学部は狭き門なのだから、一類が医学部でもいいはずです。私なりに考察すると、良かれ悪しかれ人間活動の過半のエネルギーを占める「戦争」がキーワードになります。戦争の際、まず必要とされるのは優れた武器です。それを作るのは工学の仕事です。そして、戦闘行為で死傷者が出たときが医学の仕事です。だから、順序は変えられないのです。


工学とは、すなわち殺人学、いかに効率的に人を殺すかを研究する学問なのです。勿論、身障者用の補助器具を作るのも工学の仕事です。工学には、二面性があるのです。また、工学ほど現実に密着した学問も珍しいのです。現実から遊離した意味での数学を希求していた頃とは大きく違う立場に、私は立ったのでした。現実に密着した数学が必要になります。

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なお、太平洋戦争(学術的には15年戦争と呼ぶ)前後に、東大には「第二工学部」というのがあり、いかに優れた武器を作るか、と腐心していました。現在この研究施設は「生産技術研究所」として存続しています。それから、東大総長になった人の内、工学部出身者は2人おり、戦時中の「軍艦」の権威だった平賀譲(ひらがゆずる)氏(軍艦総長)、戦後の原子力発電で名を売った向坊隆(むかいぼうたかし)氏で、大学に研究資金が集まりそうだから総長にしたのだ、と思っています。



今日のひと言:工学部について、私は積極的に選んだのではなく、「何か大きな力」に選ばされたもののような気がします。漢字の意味では「工」という字は「天と地を結ぶ者」の意、縦一本は「人間」を示すということでした。(講談社:大字典による)


 なお、私の敬愛する教授・坂本龍一氏が東京芸術大学修士コースで専攻していたという「音響工学」の場合、このブログで取り上げたような問題点はないですよね、恐らく。


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今日の一首



花盛り
ペパーミントの
咲く庭で
ゆうゆう遊ぶ
ツマグロヒョウモン