青年マンガ雑誌の創造性度(C値)
(4回に渡るマンガ特集。途中インターミッションが入ります。)
マンガシリーズ その2
幾つかの青年マンガ雑誌を比較してみます。今回基準にしたのは、ストーリーマンガの絵柄の創造性度(C値)です。Cとはcreativityの略です。一つの掲載作品について、アニメ絵ぽかったら0ポイント、だれかどこかで別の作者が書いているのを見たような絵柄なら0.5ポイント、作家独自の絵であれば1ポイントにします。C値は、マンガがどんなテーマかに拘わらず決まります。絵柄だけで評価します。だから基本的にテーマは問いませんが、例外として内容について、「性的行為の描写のある」エロマンガはエ、オカルト・ホラーマンガはオと表記します。マンガの特徴を強力にキャラクタライズするからです。(以下あくまで森下の主観での値ですが、私はマンガを相当読み込んでいます。)
①ヤングジャンプ(06年36号)
ブラッドラインズ 0.5・オ サラリーマン金太郎 1
華麗なる食卓 0.5 カウンタック 0.5
夜王 0.5 キャプテン翼 0
タフ 1 嘘喰い 0.5
いぬばか 0.5 孔雀王曲神記 0.5・オ
72 0.5 Wネーム 0
士道 0.5 ギミック 0
キングダム 0.5 アラス 0.5
アニマート 0.5 世界のすべてに 0・エ
Liar Game 0.5 野獣は眠らず 0.5
C値の平均 0.45(標準偏差 0.28)
独創性のあるマンガの比率 10%
エロマンガの比率 5% オカルトマンガの比率 10%
②週刊モーニング(06年40号)
関東昭和軍 1 常務 島耕作 1
クッキングパパ 0.5 ジパング 1
特上カバチ!! 0.5 神の雫 0.5
イカロスの山 0.5 Tower of Terror 0.5
はるか17 0.5 深海に帰る 1
ドラゴン桜 1 踊るホスト 0.5
刑事が一匹 0.5 ナースあおい 0.5
War is over! 1
C値の平均 0.7(標準偏差 0.25)
独創性のあるマンガの比率40%
オカルトマンガの比率 6.7%
③ヤングサンデー(06年36−37号)
クロサギ 0.5 ジャパファイブ 0.5
江夏の21球 1 日本一の男の魂 1・エ
Dr.コトー診療所 0.5 都立水高! 0
Rainbow 0.5 下北Glory days 0.5
格闘美神ウーロン 0.5 Speed 0.5
土竜の唄 0.5 お笑いの神様 0.5
キャプテンどんかべ 0.5 ほしのふるまち 0.5
さくらんぼシンドローム 0.5 ひかりの空 0.5
鉄腕バーディー 0.5
C値の平均0.53(標準偏差0.21)
独創性のあるマンガの比率11.8%
エロマンガの比率 5.9%
④ヤングキングアワーズ(06年、8月号)
水惑星年代記 0.5 エクセル・サーガ 0.5
Hellsing 0.5・オ ワールドエンブリオ 0・オ
超人ロッククアトラ 0.5 アニメがお仕事! 0
ピルグリムイエーガー 0.5・オ 朝露の巫女 0・オ
それでも町は廻っている 0.5・オ イノセントW 0・オ
Raise 1 ジオブリーダーズ 0.5
惑星のさみだれ 0 ウミヂ 0.5・オ
東京クレーターのあかり 0 ナポレオン〜獅子の時代〜 1
C値の平均 0.38(標準偏差0.43)
独創性のあるマンガの比率12.5%
オカルトマンガの比率 43.8%
C値が0というのは無価値という意味では必ずしもありません。アニメ絵は、読む人に安心感を与えることが出来るというメリットがあります。一方C値が1であると、読む人に不安感を与えることがあります。C値が1ばかりのマンガ雑誌の理想形はかつての月刊マンガ雑誌「ガロ」でしょうね。でも、一般には支持されません。一方、C値が0ばかりのマンガ雑誌は、読者を閉じた世界に繋いでしまいます。C値の平均が0と1の間で、どの位の値になるかで、その雑誌の姿勢が解ります。
創造性を重視している姿勢が顕著なのは週刊モーニングです。「独創性のあるマンガの比率」が40%というのは商業ベースの青年マンガ雑誌としては驚異的ですし、C値も取上げた雑誌の中では最高です。ここで取上げなかった雑誌では、ビッグコミックスピリッツのC値が高いです(06年35号:C値の平均0.62)。ヤングジャンプとヤングサンデーはほぼ同じくらいの「独創性のあるマンガの比率」です(C値の平均0.5前後)。比較的「安心感」のある紙面作りを志しているようです。エロマンガとかオカルトマンガとかは、雑誌のアクセントになるため、1つや2つは掲載されますが、その意味で驚異的なのはヤングキングアワーズです。オカルトマンガの比率が4割強というから、ハンパじゃありません。C値の平均はここで取上げた雑誌の中で最低ですが、オカルトマンガに活路を見出しているようです。
今日のひと言:私は以前東大マンガクラブに籍を置いていました。その当時からマンガを描いたり、マンガ評論をしたりしていました。で、このブログで導入したC値は、マンガ、マンガ雑誌の評価に有効だと思っています。ところで、マンガ「サルでも描けるまんが教室」(相原コージ+竹熊健太郎:小学館)では、持込みのマンガをひと目見て、「作家Aの影響が40%、作家Bの影響が30%、作家Cの影響が20%・・・」と分析できるマンガ雑誌編集者のお話が出てきます。大抵のマンガ家は、他作家の模倣から始めるようですが、私個人は、C値1の作品を読みたいですね。いつかどこかで見たことがあるような絵柄、ましてやアニメ絵では満足できません。
今日の一言2:児童虐待を放置した京都児童相談所の所長が「予想外でした」と言っていましたが、ソフトバンクの携帯CMのように「予想外どうええす!!(予想ガイ=野口五郎)」と言ったら、受ける・・・もとい・・・物議をかもすでしょうね。ちんぴょろすぽーん!!!