私が小学生中学年だったころ、男子生徒の間で、「切手ブーム」が巻き起こっていました。かなりの生徒が切手を収集していたと思います。その中で、もっとも男子生徒の心を捉えていたのは、おそらく「髪」という作品を使った切手でしたでしょう。女性が上半身をさらりと晒し、なかでもバストを隠そうともせずいるその絵、きわめて興味深いものでした。描いた画家の名前は忘れても、この絵は印象に残りました。その絵はこれ(↓)題名はもちろん「髪」。
きわめて写実的な絵でした。切手趣味週間シリーズの一枚で、切手が発行されたのは1969年、絵が描かれたのが1931年。この絵は、湯上りの姉の髪を妹が櫛けずっている風景なんですって。さわやかな絵と言えますか。
それで改めて画家の名前を書きますと、小林古径(古徑)(こばやし・こけい)さん、男性なわけです。この人の場合、大きく2つに分けて、写実的な絵と、空想的な絵を描くように思います。
例によってwikiから アウトラインを引用します。
小林 古径(こばやし こけい、1883年(明治16年)2月11日 - 1957年(昭和32年)4月3日)は、大正〜昭和期の日本画家。 本名は茂(しげる)。
1883年(明治16年)、新潟県高田(現上越市)に生まれる。1899年(明治32年)、上京して梶田半古に日本画を学び、39歳の1922年(大正11年)より前田青邨と共に渡欧留学。翌1923年(大正12年)、大英博物館で中国・東晋の名画「女史箴図巻」(じょししんずかん)を模写している。「蚕の吐く糸のような」と評される線描が特色のこの中国古典を研究することによって、古径は東洋絵画の命である線描の技術を高めた。
代表作「髪」は、このような古径の線描の特色をいかんなく発揮した名作である。簡潔に力強く描かれた線と単純な色彩で、髪の毛一本一本や美しく縁取られた顔の輪郭、半裸の女性の体温や皮膚の柔らかい感触まで、繊細に描き出している。「髪」は、裸体画として、日本で初めて切手のデザインとなった。1935年(昭和10年)、帝国美術院会員。1944年(昭和19年)、東京美術学校教授に就任。1950年(昭和25年)、文化勲章受章。
古径の住居として東京都大田区南馬込に建築された小林古径邸は新潟県上越市の高田公園内に移築・復原され、国の登録有形文化財に登録されている。古径は、「私が好きになるような家を建ててください。」と言っただけで一切注文を出さなかった、古径邸ができあがってもすぐには移り住まずに通ってきては眺めて楽しんだというエピソードが残っている。 また、古径は絵画における写生の重要性を認識しており、庭の植物や庭で飼育した鳥などを写生したという。
このように紹介されています。彼が「写生」という行為を重視していたのが解ります。ところでここに「楊貴妃」という絵もあります。この絵で驚嘆すべきは、絵の被写体・楊貴妃が「能面」を被っていること。絶世の美女であるなら、そのような美人を描けばよいものを、能面で隠してしまうのですね。思うに、中国でいう絶世の美人は「傾国」「傾城」と呼ばれ、例えば殷の紂王(ちゅうおう)の妃であった妲己(だっき)が国運を傾けたのと同じです。
この際、傾国の美人には、九尾の狐が化けていたのだ、とかまことしやかに語られますが、そうなると、むしろ妖怪というより一種の神ではないか、と言われうると思います。そうすると、個人個人のペルソナを超越した存在として、楊貴妃は捉えられるでしょう。・・・もっとも、古径は、このような振り付けの能舞台を見てこの絵の閃きを得たそうなので、ここで述べた論理は、必ずしも彼の独創ではなかったのでしょう。でも、能面をつけるという発想に共鳴して、実際絵を描く一貫性には優れたものがあります。
生き物についても、写実的な絵と空想的な絵があります。
まず、罌粟図(けしず)。観ても解るとおり、きわめて写実的な絵であり、解説によれば
・・・・一切の様式的な描法を排除している。
(中略)
原三渓はこの絵の前に立った時「茎を折れば青くさい草の汁が匂うようだ」と感嘆したという話が伝わっているが、この言葉には少しの誇張もない。
最後に「孔雀」。この絵はとても見ごたえのある絵で、きわめて豪奢な孔雀図になっています。ただ、ほんまもんの孔雀といえど、こんなに多くの「眼」を持つ羽根はもっていないでしょう。これは、古径の空想が生み出した生き物なのでしょう。でも、この絵を目前でみると、はっとすること請け合いですね。
今回参考にしたのは「カンヴァス 日本の名画 13 小林古径」(中央公論社)
(絵、解説について)でした。
今日のひと言:小林古径は、緩急自在の画家だったな、と思います。実力があるなあ。
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今日の料理
@牛肉こま切れのローズマリー炒め
今回は初心に戻って、牛肉とマッチするハーブ:ローズマリー(ドライ)を使って炒め物にしました。牛肉、ラム肉にはローズマリーがマッチし、豚肉にはセージがマッチするという口訣があります。もっとも、以前に寄った千葉県の「大多喜ハーブガーデン」のメニューでは、牛肉とバジルソースの組合せがありました。
(2015.01. 24)
@サツマイモの炊き込みご飯
ホームベーカリーで「石焼き芋」を作って、余った芋で炊き込みご飯を作りました。芋の美味しさでは電子レンジ< 炊き込みご飯< 石焼き芋の順番でしょうか。
(2015.01.25)
@ウド2題 この時期のウドはもちろん室で軟白栽培されたものですが、春の息吹を一足はやく味わえる優れものです。
@1:ウドのキンピラ
ウドの枝とか皮を炒めてキンピラにします。案外美味しく、ウドに捨てるところはないようです。
@2:ウドのスティック
ウドを30分くらい酢水に晒し(@1も同様)、短冊状に切り、いつかも作った「マヨネーズとケチャップを2:1にして、スリショウガを加えてソース状にしたもの」を使い、先端にソースをつけて食べます。ただ、ショウガとウドの風味が喧嘩をしているようで、どうもショウガは入れないほうが良かったようです。
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20141214#1418532673
(2015.01.27)
@聖護院ダイコンの擦りおろし
主に煮物にする聖護院ダイコンですが、擦ると味は辛くなるのか、とすりおろしてみました。直後には甘かったですが、5、6分もすると辛みが出てきました。さすが、ダイコン。
(2015.01.27)