建物の左右対称性と権力・・・官製建物と民間建物
ベルギーの住宅のファサード(正面)→
かつて、宇井純氏が主宰する東大自主講座に、元京都大学助教授(当時京都精華大学教授)の槌田劭(つちだ・たかし)氏を招いたとき、御茶ノ水駅から歩いてこられたのか、自主講座の部屋に着くなり、「東大の建物は左右対称のものが多く、威圧的だな」と仰られました。
確かに、言われてみると、東大の建物は、東大病院、安田講堂と、左右対称の(シンメトリーな)ものが多いです。これは、人民を気押しし、権威であるという威圧感を与える底のものでしょう。
ほかにも左右対称で有名なたてものにどんなものがあるか考えてみると、平城京の大極殿、宇治の「平等院鳳凰堂」(藤原頼通;当時最高の権力者)、また近世では国会議事堂などがありますね。とかく、権力者は左右対称な建物に執着しますね。
ここに2010.8.23日付けの朝日新聞に、実現はされなかったけど、「韓国統監官邸」の設計図が見つかったという記事が載っています。この建物もクッキリするほど左右対称です。「朝鮮人民を屈服させるための建物」の計画だったのです。初代の居住者が伊藤博文の予定だったそう。ただ彼は安重根という反日青年に暗殺され、以後このような建物は朝鮮人民をいらぬ反感に導くと思ったのか、建設はしなかったわけですね。
統監府の設計図(↑)
ところで、ヨーロッパの世紀末を彩った芸術運動として「アール・ヌーヴォー」がありますが、この運動は絵画、工芸品などのジャンルに限定されたものではなく、建築の分野でも花開きました。ベルギーがトップランナーでしたが、ここに挙げた住居、窓が左右非対称で配置されています。建物自体も。設計者はL・ドゥリュヌ。こんな建物に住む人はどう感じるでしょうか。一種の「安心感」が得られる?先に述べた官製の建物が威圧的なのに比べ、庶民の美的感覚には馴染む気がします。なお、岩手県盛岡・遠野地方に伝わる「曲り家(まがりや)」は、人と馬が共生するための住居で、非対称なL字型の建物であり、ここには威圧感はありません。
http://www.bunka.pref.iwate.jp/seikatsu/jyutaku/data/nouka1.html :「曲り家」
参考文献:図説 アール・ヌーヴォー建築 華麗なる世紀末 橋本文隆
(河出書房新社)1800円+税
アール・ヌーボーに関する記述
アール・ヌーヴォー(フランス語: Art Nouveau)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に開花した国際的な美術運動。「新しい芸術」を意味する。花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式に囚われない装飾性や、鉄やガラスといった当時の新素材の利用などが特徴。分野としては建築、工芸品、グラフィックデザインなど多岐に亘り、生活の隅々にまでアール・ヌーヴォーを行き渡らせることが可能であった。
今日のひと言: 建物というのは、見慣れた人にはどうってことないのでしょうが、初めて見る人には大きな精神的インパクトが与えられれるものかと思います。国会議事堂もこけおどしの姿なのかも知れません。また、逆に毎日議事堂に通う国会議員などは、しらずしらず国民に対し、「驕る」ようになるのかも知れません。
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今日の一句
昔はいわゆる庚申信仰の対象だった庚申塔も、歴史をしらぬ児童たちにいじられ、破損させられることも多くなりました。でもこの庚申塔は大きいので、そんな被害を受けずにきたようです。
もう一句
定家蔓は、キョウチクトウ科のツル性植物で、この科に属す植物に並び、有毒です。ただ香はジャスミンの香りをやや重くしたような良い芳香があります。
この植物の名前の由来については(wikipediaで)和名は、式子内親王を愛した藤原定家が、死後も彼女を忘れられず、ついに定家葛に生まれ変わって彼女の墓にからみついたという伝説(能『定家』)に基づく・・・とされます。
↓この花の名前をどなたか教えてください。(特典はないですけど)
なんとなく「ヒメハギ」のようにも見えますが、そうでもないかも。花は4弁花で赤からピンク色の色になります。葉は互生。
**ある方が情報を下さり、この花の名前は「アカバナユウゲショウ」であることが解りました。感謝・感謝。(2011.05.23)**