虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

アルフレッド・ジャリと『超男性』:20世紀の機械VS人間



アルフレッド・ジャリと『超男性』:20世紀の機械VS人間


AI特集その1


私は一時期アルフレッド・ジャリに惹かれ、代表作のひとつ『超男性』を読みたいと思っていて、実際に現物を読めたのが最近のことでした。ジャリについて:


アルフレッド・ジャリ(仏: Alfred Jarry, 1873年9月8日 - 1907年11月1日)は、フランスの小説家、劇作家。ブルターニュ地方に近いマイエンヌ県ラヴァル生まれ。母方からブルトン人の血を引く。
代表作は戯曲『ユビュ王』(Ubu Roi, 1896)、「現代小説」という副題を付けた小説『超男性』(Le Surmâle, 1901)。自転車の愛好家でもあり、『超男性』などに題材として取り入れている。
ジャリは悪趣味と退廃に満ちた生活を送り、アルコールや薬物のために結核が悪化してパリで死去した。34歳。

Wikiより抜粋(アルフレッド・ジャリ

『ユビュ王』についても読みたいのですが、これはまだ叶っていません。


『超男性』、これはジャリの分身ともいえる主人公:アンドレ・マルクイユが、自らを一種の機械として、ビルド・アップし、実際の機械と対峙するよう行動します。マルクイユは自分で運転する自転車と蒸気機関車とで耐久レースをして、勝利を収めますが、最後に残ったのが恋愛(セックス)でした。


マルクイユは、某科学者の娘:エレンと恋愛関係になりますが、彼女を相手にセックス・マシーンとしての行為を行ないます。その交歓の場で、マルクイユはなんと82回達します。さすが「機械」です。ただ、彼女はマルクイユが2人の恋愛にまだ没入していないと難じ、純粋に愛のための行為に誘います。


彼女にしてみれば、彼は情人を愛していなかったのである。何となれば、彼はまだ自分のすべてをあたえていなかったからであり、もはやあたえるものがなくなるまでに、あたえつくしていなかったからである!


『超男性』(澁澤龍彦:訳:白水社) 155P


それまで一方的に「性の饗宴」に浸っていたマルクイユは、ある意味新鮮な男女の愛に目覚めます。ところが延々と続いた行為が元でエレンは死んでしまいます・・・(あとで仮死状態だったと解りますが)悲しんだマルクイユも、意識を失います。


それまで経緯を見ていたエレンの父などの科学者は、マルクイユをエレンに繋ぎ留めるよう、即席で、ある機械を作ります・・・「愛の機械」。ジャリ本人の説明を読むと、これは正に死刑の道具:電気椅子なのです。でも、その効能は、ポテンシャルが自分より高い者からエネルギーをもらって、エネルギー差をなくする機械なのです。超男性のほうがポテンシャルが高かったのです。


彼ら科学者たちはマルクイユ、すなわち「超男性」という機械に、愛という名の機械を娶わせたといったところでしょうか。・・・超男性はこの「お見合い」の結果、死亡しました。


これが『超男性』のあらましです。



今日のひと言:20世紀初頭に生きていたジャリにとって、メキメキその数を増やしていた機械なるもの、彼にとって対立の象徴だったのか、隷属の象徴だったのか、よく解らない部分もありますが、「愛の機械」は脅威ですね。彼の生きた頃からほぼ100年経った現在、機械は「AI」と名を変えて、人類の前に立ちふさがっていると思います。すくなくとも、AIは、人類に「バラ色の未来」をもたらすとは限らないでしょう。


なお、ジャリには多くのエピソードがあります。その一つ・・・


ジャリは所かまわず拳銃を発射していました。近所の母親が怒鳴り込んできて、


母:子供に当たったら、死んじゃうじゃないのよ!


ジャリ:そうなったら、私とあなたで子供を作れば良いではありませんか。


・・・こんな愚行も、ジャリにとっては芸術だったのかも。




超男性 (白水Uブックス)

超男性 (白水Uブックス)

アルフレッド・ジャリ―『ユビュ王』から『フォーストロール博士言行録』まで

アルフレッド・ジャリ―『ユビュ王』から『フォーストロール博士言行録』まで





今日の一品


@はんぺんのコンソメ煮・粒マスタード添え


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以前も取り上げたはんぺんの煮物に粒マスタードをディップとして添えました。

 (2019.02.18)



ガンモドキの煮物・チャービル風味


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ガンモドキを切り分け、鍋に昆布ダシ(ヤマサ)とオイスターソースを入れて水で薄めた液にガンモドキを入れて煮て、仕上げにちぎったチャービルを振り、軽く火を通して完成。

 (2019,02.20)



@鶏皮の焼き鳥


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弟作。串を打った皮を、醤油、砂糖、みりんの混合液に3時間漬け、オーブントースターで180°、20分焼きました。美味。

 (2019.02.21)



@鰈(カレイ)大根


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魚の鰈の煮汁を捨てるのがもったいないので、無人販売で一本10円で買ってきていた大根を煮込みました。保温調理鍋で5分火に掛け、ふたをして2時間。味も滲みました。ブリ大根ならぬカレイ大根。

 (2019.02.22)





今日の詩(2編)


@エクセレントな横顔


右折待ちの自動車、
ドライバーは女性。
カフェラテらしきものを
飲みながら待っている。
その横顔――エクセレント!
見ればそれは軽自動車で、


しばし私は見とれた。
そして車は動き出し
彼女は私の視界から
消えていった・・・
二度と目にすることも
ないだろう。

 (2019.02.20)




荒畑寒村(あらはた・かんそん)


いかにもさびれた田舎風景
このペンネームを使ったのは
社会運動家だ(1887-1981)。
足尾鉱毒事件を調べ
立派な本を書いた。


さて、この畑はいかにも荒畑寒村だ。
ニラは枯れ、白菜1、2個
あとネギの畝があるばかり。
でも、今が底で、春本番
野菜が活動再開するだろう。


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本名は勝三、足尾関係の著作は『谷中村滅亡史』。


谷中村滅亡史 (岩波文庫)

谷中村滅亡史 (岩波文庫)


 (2019.02.23)

「心を打つ怪我」~レトリック=トリックの妙



「心を打つ怪我」~レトリック=トリックの妙

表題の文句は、私が考えたものですが、これは通常「心を打つ」という言葉のあとには肯定的な文言がくるものですが、このフレーズの場合、「怪我:けが」と書くことによって、一瞬混沌(カオス)のような感じが味わえるようになっています。来てはおかしい言葉がくることによるギャップが面白いです。このような言葉は、私の語彙のなかでは数が少ないのですが、あと2つばかり挙げてみます。


「人の嫌がることをする」:これは劇作家の野田秀樹さんが彼の著『この人をほめよ』で展開していたものですが、この場合、寒い冬の朝、道路に水を撒くという行為がそれに当たります。たしかに
こんな行為をされたら、人は嫌がるでしょう。滑り易いこと、この上ない。もちろんこのジョークにはカラクリがあり、英語でいう能動態・受動態を巧妙に置き換えているのです。水撒きの場合、「他人が、されて嫌なことを自分が実行する。」:他人は受動態的(される)という形になります。一方、普通に言う意味では「人が、他人がすることを嫌がることを・自分が率先してする」:本人は能動態的なワケです。


野田秀樹について、wikiより


野田作品の大きな特徴は「言葉遊び」と「リメイク」である。使い古された言葉、古典と呼ばれる作品に新しい命を吹き込み、独創的でスペクタクルな舞台を創造する。俵万智は、彼の作品について「これは古典と呼ばれることになるだろう」と評している。


もう一つ・・・「甘い甘いお話だ・・・虫歯になりそう」と言った表現。これは堀井憲一郎さんがよく使う話法で、話の前半と後半が本来独立な事態なのに、あたかも共通するかのように繋げるレトリックです。

これもwikiより(堀井憲一郎


1984年(昭和59年)から文筆業を始める。週刊文春のコラム『ホリイのずんずん調査』を中心に、奇抜な発想に基づく調査を実施して、その結果をまとめるという独自のエッセイのスタイルを確立した。松任谷由実に倣い、デニーズの盗み聞きを元に歌詞をつくってみたり、スキー場の女性比率を調べたり、吉野家の店舗ごとの牛丼のつゆの量を調べたり、といった独創的な切り口で知られる。万歩計の取説に書いてある「○○歩で東海道横断」という記述を確かめるために、実際に東海道を踏破して万歩計の歩数を調べたが、京都目前の山科付近で「使用者の歩幅に依存する」ことに気づくという失態を犯している。キャッチフレーズは「何でも調べるフリーライター」。


今日のひと言:今回のテーマについて、私の語彙はこれだけですが、多分お茶の水女子大学教授の土屋賢二さんの著作を読めば大量のレトリックが目に出来るはずです。(例えば『土屋の口車』:文藝春秋

ついでにwikiより(土屋賢二

研究の傍らユーモアエッセイを執筆。一見哲学的な深い洞察をしているように見えながら実は論理的に奇妙な文章になっているという、学術論文をパロディ化したような独特の作風。そこからついたあだ名が「笑う哲学者」。趣味はジャズピアノ。ライブで演奏する曲は『ラカンの鏡』『オッカムの髭』など哲学と関係したタイトルになっている。漫画家の柴門ふみお茶の水女子大学での教え子。ときおり著書にイラストを描くいしいひさいちは小学校の後輩で、『ののちゃん』の中に「ツチノコ教頭」として土屋を登場させている。


PS:ただ、土屋さんのエッセイは、読んでいると「飽きます」。まあ、小手先の文章だからです。土屋さんは週刊文春にコラムを連載していましたが、同じころ週刊新潮に連載していた池田晶子さん(故人:慶応大学哲学科卒)の正統的な哲学的思考に惹かれたものです。




この人をほめよ (新潮文庫)

この人をほめよ (新潮文庫)

野田秀樹と高橋留美子―80年代の物語

野田秀樹と高橋留美子―80年代の物語

いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書)

いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書)

ツチヤの口車 (文春文庫)

ツチヤの口車 (文春文庫)

41歳からの哲学

41歳からの哲学




今日の一品


フキノトウ(蕗の薹)入り味噌汁


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フキノトウ一個収穫できましたので、さっそく刻んでいつもの味噌汁に入れました。一個でも際だつ香り、苦い味。春の息吹ですな。

 (2019.02.12)



@ニラーム


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弟作。ニラとラム肉を炒めました。「ニラ」と「ラム」で「ニラーム」。ニラレバ炒めの応用ですね。味付けはタンドリーチキンの素。

 (2019.02.13)



@モーカの湯葉


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弟作。モーカ(サメ肉)を2時間ヤマサの昆布ダシに浸し、ナツメグを振って湯葉で覆い、フライパンでオリーブオイルを使って炒めました。湯葉は焦げましたが、発想が面白い。味はまずまず。

 (2019.02.13)



イワシのかば焼き


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コープで購入してレンジでチンしただけ。案外脂が乗っていて、ウナギのかば焼きの代替食になりうるか、と思いました。私はウナギが好物ですが、絶滅の危機を脱するまでは食べないことにしています。そんな状況でイワシのかば焼きは優れています。

 (2019.02.15)





今日の一首


白い土
雨が降る度
黒くなる


:水の色とは
黒色なりき


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陰陽五行論的発想。

 (2019.02,17)





今日の三句


梶の木
かすかに萌えり
雨水にて


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 雨水は24節季の一つで春の訪れを実感する時期です。



注:私ははじめはこの時期を「清明」と混同していました。私の不明でした。

 (2019.02.16)



晴れの日に
備え葉の延ぶ
ヒガンバナ


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秋の華麗な花を支える葉を見て。

 (2019.02.16)



冬寒に
咲くや水仙
2、3株


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 (2019.02.17)