虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

詩経:世界最古の詩集のひとつ~イーリアスと並ぶ古さ

詩経:世界最古の詩集のひとつ~イーリアスと並ぶ古さ

@おおばこ、とれとれ


おおばこ、とれとれ
ちょいと、それ、とった
おおばこ、とれとれ
ちょいと、それ、あった


おおばこ、とれとれ
ちょいと、実を拾え
おおばこ、とれとれ
ちょいと、実をむしれ


おおばこ、とれとれ
つまどって入れよ
おおばこ、とれとれ
裾(すそ)はさんで入れよ


 (46P-47P)


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・・・これは古代中国の世界最古の詩集の一つ、『詩経』に収録された詩です。ここで「おおばこ」とは、日本でもよく見られる・食用・薬用になる野草で、踏み固められた道に好んで生えるので「車前草」とも呼ばれます。この詩、なにやら現代詩みたいですが、これは紀元前770年ころには成立したものと見られます。(孔子が編纂したとの説もありますが、違うようです。紀元前500年頃活躍した孔子とは、年代がまったく違いますね。)抒情詩集ですね。同じころにはホメロスの『イーリアス』、『オデュッセイア』がギリシャで成立しています。これは英雄叙事詩


現存しているのは305編で、漢字4文字が一行(一単位)になり、五言絶句や五言律詩などとは形式が違います。行数は任意です。兮などの虚字が多いのも特徴です。(音調を整えたりするため)


また、昔は『毛詩』と呼ばれてきましたが、宋代以降『詩経』と呼ばれていました。


内容としては恋愛歌が多く、次の詩は、戦場に行った愛する夫の帰還を待ちわびる妻の姿が、憐みを湛えながら活写されています。



@君はいくさに


君はいくさに出でましぬ
帰り来まさん日を知らず
帰り来まさん日を知らず
鶏は塒(ねぐら)に帰り着き
日の暮方は野面より
牛や羊も帰り来る
君はいくさに出でましぬ
心憂えであるべきや


君はいくさに出でましぬ
今日も昨日も戻られず
また会う時はいつの日か
鶏は塒に帰り着き
日の暮方は野面より
牛や羊も帰り来る
君はいくさに出でましぬ
餓や渇に遭わざらめ

 (70P-71P )


種本は『詩経の鑑賞』(村山吉廣:二玄社)(2005年初版:1300円)でした。



今日のひと言:人間の持つ喜怒哀楽は、時代が変わっても変わらないものですね。古い詩には、むしろ現代的なテイストが充満していると考えます。恋しき夫を戦場に送り出す妻の悲哀、これは今でも変わりませんし、「おおばこ」の律動感は、まさしく現代詩としても通用します。


@『中国古典名言事典』(諸橋轍次講談社学術文庫)を読んでいたら、『詩経』由来の言葉として、次のような記述がありました。


周は旧邦なりと雖(いえど)も、其の命(めい)維れ(これ)新たなり。


周雖旧邦、其命維新。 (大雅 文王)


周は古い国家ではあるが、天命はいまでも新しく、これからも栄えていく。
「維新」の言葉の出所。

  『中国古典名言事典』181P


現在の「維新」なる言葉とは、意味がまったく違います。国家の安寧を謳った言葉が、いつの間にやら「革命」肯定の意味にすり替わっていますね。外国語を安直に導入すると、こんな恥ずかしい解釈を生んでしまうのでしょう。






今日の詩(2編)


@恋の終わりに(Never More)


私は今「あいみょん」の「裸の心」を
聴いている、繰り返し、繰り返し。
終わった恋の忘れ形見にと。


亀のように動作の遅い彼女と、
蛇のように速い私とでは、
所詮、合わなかったのだ。


歳の差21歳というのも障壁だったが、
私は自分も知らぬ間に、彼女に致命傷を与えていた。
――ああ、多分人生最後の恋は終わった。


 (2021.12.15)



老子を講義する(散文詩


ある日、精神障害のある青年を我が家に呼んで、『老子』を説き聞かせた。しばらく聴いていた彼だったが、「解った!!」と走って我が家を後にした。優秀な人かな?


以上は昨晩の夢のお話。

 (2021.12.14)






今日の6句


朝の凪
仕事に急ぐ
車たち


ああ、日本人は勤勉です。

 (2021.12.10)



散る被毛
たぶん飼い主
櫛削り


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 (2021.12.10)



河原にて
へばりつくのは
青菜かな


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 (2021.12.10)



木立の間
ひと際大きな
赤城山


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 (2021.12.13)



荒れ野だが
もとイチジクの
ハウスなり


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変われば変わるもの。

 (2021.12.15)



乱杭歯
そこに音階
聴けるかも


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 (2021.12.15)






今日の写真集

「天神山古墳」写真3枚



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写真1 遠景



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写真2 やや接近



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写真3  間近から

太田天神山古墳(おおたてんじんやまこふん)は、群馬県太田市内ケ島町にある古墳。形状は前方後円墳。国の史跡に指定されている(指定名称は「天神山古墳」)。
東日本では最大、全国では第28位の規模の古墳で、東日本では墳丘長が200メートルを超す唯一の古墳として知られる。別称を「男体山古墳」とも。

太田天神山古墳(wiki)より

iirei.hatenablog.com




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土木事務所の怠慢:街路樹の脇芽、草が伸び放題。

          (2021.12.15)








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“Diamond cut Diamond--Ultra-Vival”



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