虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

空海と理趣経(りしゅきょう):その無意味性~コイツは馬鹿だ

空海理趣経(りしゅきょう):その無意味性~コイツは馬鹿だ


初めに:私は無宗教です。もし死んだら、葬式はせずに、県内の国立大学医学部に遺体を提供し、研究用に解剖してもらい、あとは共同遺骨置き場に置いてもらう:「献体」の契約をしています。私は、どんな宗教であれ、どんな宗派であれ、葬式をしてもらう積りはありません。そんな立場で、以下の文章を書きました。なお、我が家は真言宗でしたが、私と弟の代で、無宗教になったのです。


かつて学生の時、『空海の風景』という司馬遼太郎さんの伝記小説を読んだことがあります。宗教家を主人公にするという意欲的な作品でしたが、読後、人生経験を重ねる度に「あそこが変、こちらも変」というような感慨に囚われたものです。その違和感をブログにしてみましょう。


空海が創設した流派は、密教の「真言宗」というメジャーな流派で、日本各地に寺院が分布しています。あるとき、私の居住域の真言宗の祭礼を見にいったことがあります。ひと言:豪華絢爛!燈明を効果的に使い、実に映える儀式でした。


さて、それを見てからツラツラ考えるに、これは「華美すぎる!!」という結論になりました。真言宗という宗派は、もれなく華美な祭礼を行うようです。思い返せば、空海密教の盛んな唐の都・長安で、師匠の恵果から相伝の儀式を受けた際の風景は、華美だとしか言い様がありません。色鮮やかな装飾品に囲まれ、花を仏達に向って投げ、当たった仏が投げた本人の守り神=その仏と合体するという、子供じみた趣向で、空海密教最高神大日如来になったというわけでした。


悟りの境地を伝達するのなら、もっとささやかな儀式でいいはず。そうしないのは、「国家護持」という、個人の救い(悟り)をすっ飛ばして国家の命運に関与したい、という色気のように見えます。国家の権勢を示すに真言宗は最適なのです。つまりは「こけおどし」ですね。



f:id:iirei:20201017000038j:plain

双身歓喜天(wiki)



もう一つの論点、それは真言宗の根本経典のひとつ「理趣経」のおかしな記述です。(このお経は、大日経金剛頂経に並び重要なお経とされます。)どんなことが書いてあるかと言えば、若い男女が知り合い、愛が芽生え、天にも昇る感情を抱きあうのは、「菩薩の位:ぼさつのくらい」(清浄だ)ということが書いてあるのですね。通常の仏教では、男女の恋愛感情は排斥するのが常ですから、理趣経の記述は際立っています。


でも、こうも言えると思います:若い男女の恋愛の交歓は、一種の不安定な状態であって、ちょうど山の上でボールが保たれていることに喩えられますね。ちょっとでもずれると、ボールは転がり落ちます。ちなみに谷の底では、ちょっとやそっとボールを動かしても本の位置に戻ります。仲睦まじい夫婦というところ。このお経で触れられた、出合ったばかりの男女間の愛情は脆いものだと思われます。好事魔多しで、人間の恋愛には2人きりで片がつくことはマレで、往々にして三角関係という怖い事態が起きます。愛する異性を、同性に掠め取られる、その刹那、当事者は天国ではなく、地獄に落ちるのです。菩薩が地獄の罪人に速変わりする。


私は、この苦い三角関係を体験した者として、理趣経というお経はマヤカシであると断言します。以上2例から結論を引き出すと、信仰するに足りないこの宗教について、舶来のこの教えを無条件に日本に移植した、という意味で「空海は馬鹿だ」と言えることになります。真言宗は、「現在の隆盛」だけを記述する宗教だと思います。そんなアブナイ境地は危険だとも思います。太陽にだって、死ぬときが来ることを顧慮していない。得恋の嬉しさは、一時的なものです。そもそも、そんな「宗教」に存在価値があるのでしょうか?


!最近の美術シーンでは、頻繁に空海ゆかりの文物が公開されて人気ですね。「東寺の秘仏」がどうたら、こうたらと。華美であるのはもちろん事実でしょうね。私はそんなガラクタ、観に行くつもりはないですが!



今日のひと言:『空海の風景』の出だしに、呪文あるいはマントラと言うべきものを唱える空海の姿が描かれています。「虚空蔵求聞持法」だったか、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)を思い、この呪文を唱えると、記憶力が増すと言われていて、空海は実際、この呪文には習熟していたようですね。私もやってみましたが、当然ながら、記憶力は増進しませんでした。


なお、空海が若い頃(中国に赴く前)書いた『三教指帰:さんごうしいぎ』では、儒教道教、仏教の3つの教えが比較検討され、仏教がもっとも優れている、という「青い」結果が導かれます。でも、私が思うに、たぶん空海も存在くらいは知っていたであろう、儒教道教共通の経典、易経のほうが、仏教のお経のように勿体ぶりもせず、あらゆる事物を語りえる点、優れていると断言します。


また、綜芸種智院という教育機関を作ったり、各地で住民の益になる溜め池など土木事業をやったり、という万能の天才ぶりは際立っていて、その点文句はありません。もっとも、優秀な人材として選抜されて遣唐使に行った他の人たちも、その気になれば、空海のような事業を行えたでしょう。吉備真備(きびのまきび)とか阿倍仲麻呂なんかそうでしょうね。


真言密教の根本経典「大日経」について、wikiから。


大毘盧遮那成仏神変加持経』(だいびるしゃなじょうぶつじんべんかじきょう)、略して『大毘盧遮那経』(だいびるしゃなきょう)、あるいは『大日経』(だいにちきょう)は、大乗仏教における密教経典である。成立時期には諸説あるが、7世紀の中頃が穏当な説である。

(中略)

内容は、真言宗のいわゆる事相と教相に相当する2つの部分から成り立つが、前者である胎蔵曼荼羅(の原形)の作法や真言密教の儀式を説く事相の部分が非常に多い。また、この部分の記述は具体的であるが、師匠からの直接の伝法がなければ、真実は理解できないとされている。

教相に相当するのは「入真言門住心品」だけといってよい。構成は、毘盧遮那如来と金剛手(秘密派の主たるもの)の対話によって真言門を説き明かしていくという、初期大乗経典のスタイルを踏襲している。

要諦は、下記の、毘盧遮那仏如来の一切智智について説明する部分において、菩提心とは何かを説くところにある。


さらに金剛頂経


日本では、普通に「金剛頂経」と言う時は『初会金剛頂経』(『真実摂経』)、特に、不空訳『金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経(大教王経)』(大正蔵865)のことを指す。
『初会金剛頂経』(『真実摂経』)は金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)の典拠となる経典で、真言宗天台宗では密教の「即身成仏」の原理を明確に説いているとしている。真言宗東密)では特に根本経典(最も重要な経典)とされ、この『金剛頂経』と『大日経』の密教経典を「両部の大経」という。
真言宗で唱えられている『理趣経』(『百五十頌般若』 梵: Adhyardhaśatikā prajñāpāramitā)は、「金剛頂経」系テキストの内、第六会に含まれる『理趣広経』とよばれる文書の略本である。
空海(774年〜835年)は、唐の長安において青龍寺の恵果(746年〜805年)の弟子となり、密教の伝法灌頂を授かり、『初会金剛頂経』の教理と実践方法を伝授(大日如来―金剛薩埵―龍猛―龍智―金剛智―不空―恵果―空海と付法)される。806年に日本に初めて、『初会金剛頂経』に基づく実践体系を伝えている。



大体、『空海の風景』で読み取れる通りです。


私は、山暮らししていた時、真言宗の寺の住職と懇意になり、得度して、真言僧になろうか、と考えたことがありますが、やっぱり止めにしたことがあります。それで良かったのでしょう。


なお、西日本には、空海にまつわる行事があります。「おせったい」。Weblio辞書より。


お‐せったい【御接待】
四国八十八箇所を巡る遍路に茶菓や食事などをふるまったり、宿を提供したりする風習。
弘法大師空海)の入定(にゅうじょう)日に、民家が空海像をまつり、客に料理や菓子をふるまう行事。山口や大分などでみられる。


・・・素朴な民間信仰ですね。さすがに、この行事とそれを支える心をも否定はしません、できません。





密教 (岩波新書)

密教 (岩波新書)

バイクdeお遍路〜第一章

バイクdeお遍路〜第一章

奇跡の四国遍路 (中公新書ラクレ)

奇跡の四国遍路 (中公新書ラクレ)





今日の一品


@マロンケーキ


f:id:iirei:20201017000300j:plain


先日作った「マロンとキャロットのグラッセ」の一部がグズグズになったので粒を小さくし、小麦粉と混ぜて、お好み焼きのように焼きました。もっちり。

 (2020.10.11)



@牛バラ肉焼き・紅芯ダイコンのスプラウト乗せ



f:id:iirei:20201017000402j:plain

紅芯ダイコンのスプラウト


f:id:iirei:20201017000442j:plain

乗せた状態、完成。



エノキダケ塩麹炒め



f:id:iirei:20201017000520j:plain

いしづきを取り、2つに分けたエノキを塩麹で炒めました。ほかにネギ、仕上げに胡椒。

 (2020.10.13)



@赤菊花の酢の物



f:id:iirei:20201017000606j:plain

弟作。むかしなら定番だったのに、この美味は忘れられています。芯から外した花ビラを茹で、醤油、梅サワー漬けで和えました。(梅サワー漬けは梅:酢:砂糖を1:1:1で漬け、半年熟成させたもの。)

 (2020.10.14)






今日の四句


増した水
押し倒したる
ヨシの束



f:id:iirei:20201017000647j:plain

 台風14号の影響です。

 (2020.10.11)



ピラカンサ
時を違えず
赤くなり



f:id:iirei:20201017000722j:plain

 (2020.10.11)



化粧花
蝶々が群れ成し
遊びけり


f:id:iirei:20201017000802j:plain


 化粧花=オシロイバナ

 (2020.10.13)



アワダチの
仁王立ちして
自滅する


f:id:iirei:20201017000842j:plain


セイタカアワダチソウアレロパシー物質を出して他の植物を駆逐するが、自分もその毒に当たり、あとは自由に植物たちが生える。

 (2020.10.15)





バンクシー小劇場


*蜘蛛(クモ)


お尻の4つの肉玉で糸の出を制御して、
キシ麺のような糸の束で獲物を捕らえる。

 (2020.10.13)







写真集



f:id:iirei:20201017000929j:plain

これぞ正しく稗田阿礼(ひえだのあれ)。



f:id:iirei:20201017001012j:plain

ブドウ科タデ科?(タデ科イシミカワとは明らかに違います。)


f:id:iirei:20201017001051j:plain

キョウチクトウに巻き付くアサガオアサガオの種は毒を含むので、似たもの同士。)





口上


虚虚実実――ウルトラバイバル」の英語版を立ち上げました。過去ログから良いものを選び、主にグーグル言語ツールを活用して。題名は「Diamond cut Diamond--Ultra -Vival 」にします。ダイアモンド・カット・ダイアモンド」は、ほぼ「虚虚実実」に相当する言葉です。・・・「鎬を削る:しのぎをけずる」ですね。「秘術の限りを尽くして」戦うということです。


過去16年にわたり日本語でブログを発信してきましたが、最高1日3000ヒットあった訪問者数が、最近は200ヒット程度。これは、ある理由でグーグル・アドセンスを脱退したことと、なにより安易にやれるSNSの普及がもとになっていると思います。そうすると、日本語のみでブログを続けても、じり貧になってしまうでしょう(今、まさにその状況です)。私はある意味、日本を捨てます。世界共通語とも言える英語で、世界の人々に向けて発信するのです。ただし、従来の「虚虚実実――ウルトラバイバル」は、今まで通り続けます。



Declaration

I have launched the English version of "False Reality--Ultra Vival"(虚虚実実――ウルトラバイバル). Choose a good one from the past logs and use mainly Google language tools. The title should be "Diamond cut Diamond—Ultra Vival". "Diamond cut diamond" is a word that is almost equivalent to "false truth". ... It's "fight desperately". It means fighting "with all the secrets".


I have been posting blogs in Japanese for the past 16 years, but the number of visitors who had a maximum of 3000 hits a day has recently reached about 200 hits. I think this is due to the fact that I left Google Adsense for some reason and, above all, the spread of SNS that can be done easily. Then, even if I continue to blog only in Japanese, I will be poor (now, exactly that,The situation is.). In a sense, I abandon Japan. In English, which can be said to be a universal language, I send it to people all over the world. However, the conventional "False Reality--Ultra Vival" will continue as before.


新ブログのURL:

 https://iirei.hatenadiary.com/

“Diamond cut Diamond--Urtra-vival”


ダイアモンドのほうは、週一回、水曜日か木曜日に更新します。
英語版ブログには、末尾に日本語ブログも付記します。記事は
虚虚実実――ウルトラバイバルとはダブりませんので、こぞって
お越しを。