『アセビは羊を中毒死させる 樹木の個性と生き残り戦略』(書評)
植物に関心があっても、樹木について知ることがあまりない人は多分多いと思います。私も、ハーブや野菜、野草への関心は高いですが、樹木についてはイマイチです。ただ、私が4半世紀ほど前、群馬県西部の山間部で暮らそうと思っていたとき、ある樹木を一目見て、初対面なのに「ああ、これはコウゾだ」と解ったことがあります。そしてコウゾは私の山暮らしのパートナーになりました。コウゾを使った「和紙作り」=「紙漉き」の実践。
コウゾ
でも、なんで一目でコウゾだとわかったのでしょうか?自問するに東京に住んでいた最後の期間、正確なことは思い出せませんが、やはり樹木関係の本を読んでいたとしか思えません。樹木の場合、葉も識別の要素になりますが、幹の模様も、重要なものです。この模様で識別出来ると、葉の落ちた冬でも識別が可能になります。・・・そしてコウゾの幹には「だんだら模様」があり、一度見たら忘れない特徴なのです。
さて、今回は『アセビは羊を中毒死させる』(渡辺一夫:築地書館:2010初版・税抜き2000円)について書きます。表題に出て来るアセビは毒を持ち、葉を食べる動物に大きなダメージを与え、以後葉を食べさせないことで生き残りを図るわけです。アセビはツツジ科の植物で、花が可憐でドウダンツツジにそっくりです。毒のあるツツジ科植物に、レンゲツツジも挙げられます(群馬県の県花)。
この本は、常緑広葉樹(10種)、落葉広葉樹(10種)、針葉樹(8種)の3章構成で、全28種の樹木の興味深い特性が綴られています。また彼らの生き残り戦略も興味深いです。
樹木の戦略によるタイプ分けの概説は以下のように書かれています。
1) 植生のない空いた土地(撹乱地)にまっさきに侵入し定着するタイプ(先駆的なタイプ)
2)他の種との競争に打ち勝って優占するタイプ(競争に強いタイプ)
3)先駆的ではないし、競争に強くもないが、劣悪な環境条件に耐えられるタイプ(ストレスに強いタイプ)
62P
ここでは1)のタイプに属する「アカメガシワ」を取り上げます。この樹木は典型的な陽樹で、太陽光を有効に利用するため、葉の成長が速く、古くなって光合成効率が落ちた葉は惜しげもなく切り捨て、新しい葉でさらに光合成を進めて、背丈もぐんぐん伸びていきます。この樹木の特性として、面白い点が2つあり、
@1:葉の葉柄が長く、揺れることにより、二酸化炭素を有効に葉に導くことが出来る。(そう見ると、風は植物の行う光合成に不可欠なものだと解ります。)
@2:若い葉には赤い毛が生えていて、それは光に慣れていない新葉を覆って保護するという目的があると言うこと。しばしの保護のあと、成長した葉は酷使する・・・
今日のひと言:『アセビは羊を中毒死させる』、各樹木の記述は6ページくらいでとても読みやすく、目からウロコの記述も多く書かれていて、樹木初心者にとって、うってつけの本だと思います。ただ残念なのは、カラー写真は本の始めに纏まっていて、各論での挿入写真はモノクロであることは、ちょっと残念です。(本文中、コウゾ、アカメガシワの写真は私の撮影。)

- 作者: 渡辺一夫
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2010/10/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る

身近にある毒植物たち “知らなかった"ではすまされない雑草、野菜、草花の恐るべき仕組み (サイエンス・アイ新書)
- 作者: 森昭彦
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2016/06/16
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (3件) を見る

- アーティスト: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: Robot Voice Books ?乱歩朗読?
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
今日の一品
@豆苗(とうみょう)と卵の炒め物
弟作。エンドウ豆の芽生え(スプラウト)の2番穂(豆苗は根元で切って、2回収穫できます。3回は無理)と卵を炒めます。この場合 ナンプラーと胡椒で味付け。
(2019.04.25)
@コンフリーのバター炒め
コンフリーのツボミ
コンフリーはコーカサス地方原産のハーブ(ムラサキ科)。美味しくて栄養価も高いのですが、唯一ピロリジジン・アルカロイドという毒成分を含むので、季節のものとして旬の時期にだけ食べるのが賢明です。この4月から5月にかけてはツボミとか花が甘く、以前私は花を摘み、蜜を味わっていました。この時期が適期でしょう。なお、本当の毒草のジギタリス(致命的な心臓毒。ただ医学的には薬にもなる、専門家の処方が必要。)とよく似ているので、注意が必要です。コンフリーは葉に毛があり、葉のヘリにギザギザがありません。(ジギタリスは葉に毛がなく、葉のヘリがギザギザしています)
(2019.04.26)
@チャービル入りフキ
フキのアクを草木灰で抜いたあと、醤油、昆布だし(ヤマサ)で煮込み、仕上げに刻んだチャービルの葉を加えてひと煮たち、火から降ろします。チャービルは花が咲き始めたので、種を取るため、今季の収穫はこれで終わりです。チャービルの風味がアクセントになり、美味しい。
(2019.04.27)
@ツユクサのポン酢和え
青い花が梅雨時に咲くツユクサは、なかなか美味しい野草です。今回は本葉が出たあたりのものを、湯がいてポン酢で和えてみました。モッチリしていて美味しい。なお、ムラサキツユクサとは違います。
(2019.04.28)

- 作者: 甘糟幸子
- 出版社/メーカー: 神無書房
- 発売日: 2004/06/01
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
今日の五句
春菊の
ツボミほころぶ
皐月(さつき)まえ
春菊を食用にするのは、世界広しと言っても、日本だけなようです。
(2019.04.26)
忘れられ
石楠花(しゃくなげ)咲くや
住まぬ家
(2019.04.27)
赤・緑
紅梅見せる
補色かな
花期の長い紅梅。花びらの赤と葉の緑がよいコントラストになっていました。
(2019.04.27)
新緑が
包むカジノキ
朗らかに
(2019.04.27)
現れた
鎌首もたぐ
赤い蛇
これは、ヤブガラシのこと。つるさきは食べられますが、勢いが強すぎる野草で、ほっておくと、庭を支配してしまいます。
(2019.04.28)