虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

「この世界の片隅に」:戦争が人を成長させる??

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック



劇場公開から1年経って、やっとレンタルDVDを借りて視聴してみたアニメ映画「この世界の片隅に」。同時期に公開され大ヒットとなった「君の名は。」は全く観る積もりはありませんが、中ヒットだった「この・・・」は貸しDVDで観る積もりでいましたので、その宿望が叶った形です。あらすじはwikipediaから。(抜粋)


(前略)

太平洋戦争中の1943年(昭和18年)12月、18歳の浦野すずが草津の祖母の家で海苔すきの手伝いをしていると、突然縁談の知らせがくる。急ぎ帰宅したすずが覗き見たのは、呉から来た北條周作という青年だった。翌年2月、呉の北條家でささやかな結婚式が挙げられ、すずの新しい生活がはじまる。すずは周作とどこかで会った気がするが思い出せない。傍目には不器用で、いつもぼんやりしていて危なっかしく見えるすずは、北條家で失敗を繰り広げては、小姑の黒村径子に小言を言われる毎日を過ごすが、径子の娘である姪の黒村晴美には懐かれる。戦時下で物資が不足し、配給も乏しくなる一方、すずは持ち前のユーモアと生活の知恵で、食料に乏しい日々を乗り切り、次第に北條家やその近所の人々に受け入れられていく。


(中略)

やがて日本の戦況が劣勢になり、軍港の街である呉は1945年(昭和20年)3月19日を境に、頻繁に空襲を受けるようになる。それでも戦時下の日常を明るく過ごそうとするすずだったが、同年6月22日の空襲で、通常爆弾に混ぜて投下されていた時限爆弾(地雷弾)の爆発により、目の前で晴美を亡くし、自らも負傷により右手を失ってしまう。意識が戻ったすずは、晴美を守れなかったことを径子に責められる。絵を描くための右手を失ったすずが認識する世界は、左手で描いた漫画のように歪んで見えるようになり、同時にすずは、人の死が日常となったこの世界に順応しつつある自分こそが歪んでいるのだという思いを抱く。


同年7月1日の空襲では呉市街地が焼け野原となり、郊外にある北條家にも焼夷弾が落下する。見舞いにきた妹のすみは、江波のお祭りの日に広島の実家に帰ってくるように誘う。周作との間柄も、リンに対する嫉妬でぎくしゃくしており、すずは北條家での居場所を失いつつあった。一度は広島に戻ることを決断するすずであったが、帰りの汽車に乗る予定であった当日の8月6日の朝、すずは径子と和解して翻意し、北條家に残ることを決意する。


結果としてすずは、その日に広島市へと投下された原子爆弾による被爆を免れるが、爆心地から約20キロメートル離れた北條家でも閃光と衝撃波が響き、故郷の広島方面から立ち上る巨大な雲を目撃する。8月15日、ラジオで終戦詔勅を聞いたすずは、一億玉砕の覚悟とは何だったのかと激昂して家を飛び出す。それまで正義の戦争と信じていたものの正体が、ただの暴力に過ぎなかったことに思い至ったすずは、「何も知らないまま死にたかった」と独白し泣き崩れる。

(後略)

主人公の声を担当したのは「のん」。聞きなれない名前ですが、NHK朝ドラ「あまちゃん」のヒロイン:能年玲奈(のうねんれな)が芸名を変えたというわけです。なにやら所属芸能事務所と揉めて、干されていた彼女が復活したのがこのアニメ映画なのでした。


この映画で、私が興味を持ったのは、すずの精神的変容です。ボーとしていて、どこか間の抜けたすずは、多分少女時代からそんな風だったのかも知れません。絵を描くのが得意だった彼女が無心に軍艦の絵を描いていたら、憲兵に「スパイ扱い」され、絵を没収されます。いくら鈍い彼女でも「これはこれまでの平和なころとは違い、戦時色に世界が変わっている」と認識するしかありませんでした。そして「女性として・生活をすることが、私の戦い」であると思い至るのですね。


ですが、空襲で可愛がっていた姪の晴美を殺され、すず本人も右手首を失うのです。絵が描けなくなるかも知れず、失意の状態になるのです。そして彼女も協力していた戦争が極めて理不尽であることが解った時、彼女は号泣するのですね。


ところで以前、稲田朋美:元防衛大臣が「戦争は人の魂を浄化する」と言っていたようですが、これは相当にきな臭く、危険な主張だと思います。幾分か、ナチズムの臭いがします。それに照らし合わせると、すずは理不尽な世界に囲まれ、その中で、精神的に成長しているのだと思います。結果として浄化があったにせよ、それは他人、特に政治家には云々する資格はないだろうと。



今日のひと言:この映画の題名「この世界の片隅に」は、映画の最後にすずが夫といる時に発せられた言葉です(「・・・私を見つけてくれて、ありがとう。」と)。なお、このアニメ作品は、wikiの編集者たちに気にいられているようで、一度閲覧したあと、もう一度閲覧してみると、解説の分量が大きくなっていました。私は後者から、長めになったあらすじを引用(これでも一部抜粋)しました。地味なアニメとは言え、見る人は観ているのだな、と思いました。





今日の一品


ターメリック葉の香り酢


ここ25年以上、庭で栽培しているターメリック(ウコン)、通常は利用しない葉に麗しい香り成分があることに気づき、ホワイトリカーに漬けてお酒を楽しんできましたが、今回酢に漬けてみて金時草の和え物に使ってみました。金時草の香りも強いので、ちょっとカスミましたが、この香りも感じられました。次はもっと香りの穏やかな食材を漬け込んでみます。なお、葉や花などの食材は漬けて1週間で取り出します。



和え物

 (2018.10.23)



@ホッケの塩麹焼き



ホッケの開きの内側に塩麹を塗り、半日置く。身を閉じて電子レンジ500wで5分。再び開いてオレガノ(矯臭のため)を振ります。

 (2018.10.24)



@鶏手羽元のガーリック、オニオン焼き



弟作。手羽元にスパイスを振り3時間。オーブントースターで180℃、25分。


 (2018.10.24)



@オカカ入りヤマトイモ



弟作。ヤマトイモ(大和芋)を食べると、長芋、山芋との粘り具合での、ヤマトイモの卓越性を感じます。とにかく、箸で挟んでも「落ちない」。感動的です。

 (2018.10.24)






今日の詩


@道


道をみていると、
人を含む動物が通らなくなると
草が生える。


高村光太郎も詠んだ通り
「僕の前に道はない
僕の後に道はできる」と。


すれば道は動物の所有物であるように思われる。
でも老子は「道(タオ)は天地の前からあり」と説いた。
多分この場合、道は宇宙を統べる法則なのだろう。



 (2018.10.21)





今日の二句



カジノキの
葉裏の白さ
冬告げる


 (2018.10.21)




ヒメツルソバ
川の法面(のりめん)
陣を敷く


別名:ポリゴナム・ビクトリーカーペット。園芸用に導入した植物です。タデ科

 (2018.10.21)