虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

私の一期一会:ある漢詩詩人との一夜(散文詩)


私は、東京暮らしをしていた時、頻繁に下宿を変えたが、2年ほど中野区野方町にいた。酒を飲むと虎になる(?)からか、虎は野に住むから野方に住もうと考えたのだ。


この野方や杉並区高円寺には古書店がたくさんあり、私も古書は好きなので、野方の店に入って、鵜の目鷹の目、本を物色していた。


不意にあるオジイサンが私に声を掛けてきた。曰く「お前の目は普通ではない、素晴らしい。私とちょっと付き合わないか」。


私が持っているとされた眼光・・・これって非行少年から見ても目障りな奴と取られ兼ねないが、この場合、声を掛けて来たのがオジイサンで良かった。



彼の居所は高円寺にあり、私も野方に移る以前は高円寺に住んでいたのでホームタウンのようなものだった。ほいほい、彼に同行した。


居所に導かれた私は、彼とお互いの素性を分かちあった。彼は漢詩を書く詩人で、実際に書いた漢詩を幾編か紹介してもらった。「英雄は英雄を知る」とも言っていた。


酒も出されたが、彼の心のこもった料理も食べさせてもらった。美酒・美食だった。そうしながら漢詩を私が朗読した。彼は私の朗読に満足したようだった。


そのように気持ちの良い交歓で、酒を少々飲みすぎた私は嘔吐してしまった。彼はそれを咎め、「折角の料理を吐き出しやがって、出て行け!」


私も、「ゲロを吐かれるのが嫌なら、わざわざ俺を呼ぶな!」と売り言葉に買い言葉で、オジイサンの家を後にした。お互い飲みすぎただけのこと。二人とも大虎だったさ。



以後は再会したことはない。でも、詩人と自称する今となり、あの出合いはなんだったかと振り返ることがある。あの漢詩が私のなかで根雪となり、詩作を支えているか。


あの時の出合い、それは成句でいえば「一期一会」というものだろう。詩に限らず、家事や料理を楽しくこなす彼のあり方も、いまの私の中で生きている。

 (2018.09.23)


(注:虎、大虎は、酒に酔い、羽目を外す人のこと。)



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書を学ぶ人のための漢詩漢文入門

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超簡単なので自炊やってみた。

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今日の一品


@豚肉とキャベツ、シメジの「トン丼のタレ」炒め



弟作。トン丼のタレ、胡椒、醤油で炒めました。シメジはブナシメジ。流通している”シメジ“は「ホンシメジ」ではなく別種のものですが、ブナシメジは味もよいです。

 (2018.10.09)



@ニラ砂肝炒め



弟作。砂肝を切り、オリーブオイルで炒め、ナンプラー。ニラを入れ更に炒め、最後にカレーパウダーを掛けて火から降ろします。

  (2018.10.10)



@アホスープ




スペインの料理。kkモランボン製。アホとはニンニクのことで、ニンニク・トマトをふんだんに使ったスープ。唐辛子も入っています。鍋にオリーブオイルを敷き、乱切り玉ネギ半分、ベーコンも加えて色がつくまで炒め、スープを加え一煮立ち。担担麺スープとカルビクッパの中間のような味。ちなみに多分アヒージョもニンニクの呼び名と関係があるでしょう。(アホ、アヒの同音性)

 (2018.10.11)



@子持ちニシンのコンソメコチュジャン



弟作。料理名だけで大体の雰囲気は解りますが、卵は煮えにくいのでシャトルシェフ(保温調理鍋)を使いました。

 (2018.10.11)



@菊花和え



秋の食卓には欠かせないもの。近場のスーパーにはないのでやや遠くで入手。花びらをばらして酢をすこし入れた鍋に菊花を入れ、かるく茹でて、醤油、梅サワー漬けで和えます。

 (2018.10.12)





今日の詩


@愛するということ


私は若い頃、愛だの恋だのといった言葉に冷淡だった。
間違えても口にしなかった。
だが生まれて5人目に好きになった女性が


愛とか恋を臆面もなく発言するたび、
私はこの言葉たちに注目するようになった。
彼女が言っていた言葉で


「貴方は淋しい人。貴方の愛し方は人も淋しくさせるよ」
というのが頭にこびりついた。
その後も恋愛遍歴を積むにつれ、


私も「愛」だの「恋」だのを平気で使うようになった。
今では、私もこれらの概念については大家かも。
でも、恋愛は成就しないのよね。オソマツ。

 (2018.10.10)




今日のニ句


ギシギシの
刈っても刈っても
生えにけり



野草のギシギシ。タデ科。食べられます。この写真では、中央の株とやや上の2つがギシギシの芽生えです。

 (2018.10.13)




戦いの
跡を語るや
軍手かな



川沿いの草たちを駆除しようと悪戦苦闘したひとが付けていたであろう軍手の力強さ。
とくにアメリカセンダングサの種はくっ付くと取るのが大変。
 
(2018.10.14)