虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

刑事コロンボ:倒叙推理の面白さ〜「あのー、もう一つだけ・・・」






ピーター・フォーク(Wiki)→



1970年代に青春を謳歌していた人なら、おそらく覚えているであろうのが「刑事コロンボ」ですね。このTVドラマの大きな特徴は、物語の最初に殺人が行われるシーンが現れ、通常の推理小説の世界では、とんでもない話で、「推理を楽しむ余地なんかあるものか!」とされるでしょう。でも、このような推理物とも思われない推理物も、「倒叙推理」というジャンルに入るのですね。「刑事コロンボ」がもちろん代表格で、日本の「古畑任三郎」はその亜流と言っても良いでしょう。このドラマはNHKで放送されました。NHKで放送が終了した後は日テレが金曜ロードショーで放送していました。(エビジョンイルナベツネの親密な関係以前から、この2局は仲が良かったのですね。)


刑事コロンボ」自体は、1968年あたりから制作が始まり、一期、二期と、全69話、バックナンバーがあります。そのうち、私が実際に放映されているお話を観たのは、4話だけですが、どれも素晴らしい出来の番組になっていました。2つ挙げてみます。



@1:二枚のドガの絵



美術評論家が、美術について無知で、コレクションの絵画をあたかもドブに捨てようとしていた(と思われた)叔父を殺し、物盗りと見せかけるため、コレクションから2枚のドガの絵を盗んでいきます。登場したコロンボはこの評論家が真犯人だとにらみ、「あのー、もうひとつだけ・・・」というおなじみの何時終わるかわからない質問攻めにあわせ(この手は、刑事コロンボ全編を通してコロンボ常套手段です)、追い込んでいきます。そして、そのドガの絵に行き着き、もって行こうとした際に、評論家が引き離します。・・・そして決着は、そのドガの絵を評論家が持っていることを探り当てた警察が、家宅捜査に踏み切り、コロンボも「ある買い物のために」少し遅れてやってきます。そして、絵を前にして・・・指紋を取るのです。


評論家:「これらの絵には、もともと私の指紋がついているので、私が盗んだ証拠にはならないぞ!」


コロンボ:「なに、私の指紋をさぐっているのですよ」(注:この前絵を触っていたから!)


評論家:「今、あなたが触ったのだろう!!」


コロンボ:(真っ白な軍手を嵌めた両手を挙げる)



・・・これで文句無く犯人は決定します。犯人の逃げる足掻き(あがき)と、それにトドメを刺すコロンボの明晰さ。いつもヨレヨレのコートを着ているくせに、実に切れ者なのですね。



@2:意識の下の映像


行動心理学者が、彼を提訴しようとしていたクライアントを殺害するのに、サブリミナル効果を使います。プロモーション映画の上映にクライアントを誘い、デザートに塩辛いキャビアを出し、放映している映画のフィルムのあちらこちらに清涼飲料水のカットを挿入し、果たして水分を摂るために上映室から出て来たクライアントを撃ち殺します。自分のアリバイは完璧にしたまま。コロンボは、この切れ者で狡猾な心理学者との対決には苦労するものの、心理学者と同じく、心理学者自身にとってさえしつこくて閉口していた「コロンボ自身の写真」を映画に埋め込み、心理学者に見せるのです。心理学者は、コロンボの手から凶器の拳銃が無事かどうか確かめたくなり、隠してあった現物を出したところで、「御用!」みごとその罠に嵌った心理学者も負けを認めます。この好敵手にコロンボは「もし犯罪オリンピックというものがあったら、貴方は自分で自分を捕まえた犯罪者として、金メダルが取れますよ」と「ねぎらい」ます。(犯罪者と刑事、不思議な友愛が形成されていたのですね。)


もっとも、現在では「サブリミナル効果」の存在は否定されています。でも、この回が放送されていた頃、新聞のコラムに、日本の刑事物は人情と「ひたすら走る」とか言った作品ばかりなのに(たとえば「太陽にほえろ!」など)、この「意識の下の映像」の独創性は光り、比べものにならないといった評価がなされていました。それは日テレで「太陽にほえろ!」を放送していたときの讀賣新聞の紙面に於いてです。自らのグループ企業の番組制作にいちゃもんをつけるという意味で印象的でした。



今日のひと言:主演のピーター・フォークは、認知症を患い、既に亡くなったそうです。惜しい「性格俳優」をなくしました。



刑事コロンボ完全捜査ブック

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太陽にほえろ!伝説―疾走15年 私が愛した七曲署

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太陽にほえろ!全曲集

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今日の一品


@鶏モモ肉のクルミコチュジャンはさみ焼き



弟作。挟んだ中身が出ないように、かたくり粉をまぶして焼きました。油濃さの二乗で、ちょっと多くは食べられませんでした。

 (2016.11.03)



@春菊のシーチキン和え



弟作。我が家の定番料理。茹でた春菊をシーチキン、塩、マヨネーズで和えます。この料理、ホウレンソウでもやったことがありますが、春菊でやるのが一番でした。

 (2016.11.04)



@パセリ入りモヤシ炒め




プランターから、密集して若葉の生えるパセリを、同時に生えていたアカザ、ハコベと共に刻み、モヤシ炒めに入れました。他にクコの実、味付けはオイスターソース。パセリが効きます。

 (2016.11.05)



@大根葉ご飯



ちょっと摘み取ってきた一枚の大根葉を刻んで塩を振り、炊き立てのご飯に混ぜました。「高貴な」香り。

 (2016.11.06)





今日の一句


神仙の
如くに花の
咲きにけり



この仙人掌(サボテンないしカクタス)は、岩のようにゴツゴツして棘のない珍しい品種です。さしずめ、高山に住む仙人の微笑み。花は見事です。

 (2016.11.05)




この度、潜血検査の結果、大腸にポリープが出来ているらしく 11月10日(木曜日)に内視鏡による精密検査、および問題のあるポリープがあれば切除することになりました。おそらく大事には至らないだろうとは思いますが、不測の事態もないわけではないので、ここに拙ブログにいらしてくださる方々に「ご挨拶」しておこうと思います:一時さようなら。またお会いしましょう。