私は、大学には理科系として入学しましたが、すぐさま幻滅し、文科系を志向するようになりました。あまりにも数学の教授の授業が詰まらないのを超えて「有害」なようにも見えましたし、物理学演習実験で、慣れない分析機器の扱いに悲鳴を上げる毎日でしたから。
そんなわけで私は評論家の栗田勇さんの著作とか、柳宗悦さんの民芸に関する著作など、いろいろ読んで、ガウディ、アナトール・フランス、ボードレールなどの芸術家とか、民芸の先にある「円空」という江戸時代の、諸国を仏像を彫って渡り歩く遊行僧に大きく関心が湧きました。柳さんの建てた駒場(キャンパスの近くにある)の日本民藝館にも足を運びました。
そして、大学1年目の夏休み、私は中部地方を周遊する旅に出ました。長野県→岐阜県→福井県→石川県→新潟県→長野県と渡る、電車に乗っての、案外な大旅行でした。各県の見所についてのパンフレットも持参していたので、岐阜県にある「円空博物館」と言った施設にも寄り、円空仏を間近に観ることが出来ました。・・・その圧倒的な荒削りの「パワー」に圧倒されたのです。その一例が以下の画像です。(wikiから)
また、円空のプロフィールとして、wikiから引用します。
円空(えんくう、寛永9年(1632年) - 元禄8年7月15日(1695年8月24日))は、江戸時代前期の行脚僧であり、全国に「円空仏」と呼ばれる独特の作風を持った木彫りの仏像を残したことで知られる。
円空は生涯に約12万体の仏像を彫ったと推定され、現在までに約5350体発見されている。円空仏は全国に所在し、北は北海道・青森、南は三重県、奈良県までおよぶ。多くは寺社、個人所蔵がほとんどである。その中でも、岐阜県、愛知県をはじめとする各地には、円空の作品と伝えられる木彫りの仏像が数多く残されている。その内愛知県内で3000体以上、岐阜県内で1000体以上を数える。また、北海道、東北に残るものは初期像が多く、岐阜県飛騨地方には後期像が多い。多作だが作品のひとつひとつがそれぞれの個性をもっている。円空仏以外にも、多くの和歌や大般若経の扉絵なども残されている。
円空の作品は、木材の筋目を大切にして、あたかも材料そのものが「仏」であるように思いなして、さほど材料に装飾はせずに彫り上げた作品が多いです。「生成り」を大切にするということだそうです。(あとで参考文献とした「NHK 美の壺 円空と木喰」の記述から)
さらに、円空の死後20年ほど経って、また作風の違う仏教彫刻家があらわれました。木喰(もくじき)です。彼の作品は、「にっこり」笑顔を湛えたもので、民衆を安楽の境地に導くようです。作品についてwikiから
概略もwikiから・・・
木喰(もくじき 1718年(享保3年)- 1810年7月6日(文化7年6月5日)は、江戸時代後期の仏教行者・仏像彫刻家。
日本全国におびただしい数の遺品が残る、「木喰仏」(もくじきぶつ)の作者である。生涯に三度改名し、木喰五行上人、木喰明満上人などとも称する。特定の寺院や宗派に属さず、全国を遍歴して修業した仏教者を行者あるいは遊行僧(ゆぎょうそう)などと称したが、木喰はこうした遊行僧の典型であり、日本全国を旅し、訪れた先に一木造の仏像を刻んで奉納した。
木喰の作風は伝統的な仏像彫刻とは全く異なった様式を示し、ノミの跡も生々しい型破りなものであるが、無駄を省いた簡潔な造形の中に深い宗教的感情が表現されており、大胆なデフォルメには現代彫刻を思わせる斬新さがある。日本各地に仏像を残した遊行僧としては、木喰より1世紀ほど前の時代に活動した円空がよく知られるが、円空の荒削りで野性的な作風に比べると、木喰の仏像は微笑を浮かべた温和なものが多いのも特色である。
円空仏や木喰仏は、彫られたあと、どんな運命を辿ったかについては、「NHK 美の壷 円空と木喰」に面白いエピソードが書かれています。たとえば、お堂から、悪餓鬼たちが川遊びの道具として持ち出したりして、ぼろぼろになるケースが多々あるそうです。
特に、木喰仏の場合、「あれほどの人が作ったのだから、ご利益があるに違いない」と、仏像の頭を削り、煎じて飲んだため、頭のない木喰の自画像があるのだとか。この2つの事例は、いかに彼らの彫った仏像が庶民に受け入れられたかを、語っていると思います。
そして、権威主義的で頭の硬い美術界は、あまりに庶民的になった円空仏や木喰仏を美術の対象と見なさなかったのかもしれません。鎌倉期以降の彫刻で、単独で国宝になった例は、ないようです。
今日のひと言: これら、国宝とみなされない経緯を書いたブログを参考までに挙げておきます。
http://yamatokoji.blog116.fc2.com/blog-entry-349.html
http://nespace.blogspot.jp/2010/02/blog-post_26.html
木喰

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今日の料理
@ツイステッド・ササミ
弟作。ササミを縦に切れ込みをいれ、小麦粉をまぶして焼き、ついでに茹で、マヨネーズ・ゆかりで和えました。色あいが微妙です。(焼く前にササミに切れみを入れ、「曲げて」加熱したことから名づけました。)
(2015.08.11)
@メカジキのフェンネル酢マリネ
以前作ったフェンネル酢を使って、フライパンで焼いたメカジキを漬け込みました。汁は酢・醤油・トウキビ糖に。なかなか鮮烈な風味で宜しい。
(2015.08.15)
@手羽元の角煮風
いつか作った豚スペアリブのように、角煮の冷凍保存汁を煮汁にして2時間ほど煮込みました。肉と骨を分離しやすくするためですが、肝心の肉の味はぼやけてしまったようです。
(2015.08.15)
今日の詩
ミンミン蝉
近所の
森が道路で2分されたところを
自転車で通る時。
頭上から降り注ぐ
幾匹ものミンミン蝉の
鳴き声。
ついこの前、立秋になったが
既に蝉は夏の終わりを
告げている。
(2015.08.14)
上の詩を俳句で・・・
蝉しぐれ
夏の終わりを
大挙告ぐ
(2015.08.14)