狂言サイボーグ〜野村萬斎と「型」
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私の某友人は多才な人で、演劇についても、面白いことを教えてくれました。例えば「悲しい」場面を演じる場合、「過去の悲しかった経験を思いだし」、そのときの感情を表出すれば、自然に涙がこぼれてくること。また、彼が俳優採用のコンテストにエントリーした際、選考人から「あんたは、役者ではなく、監督に向いているのではないか」、と言われたらしいです。
実は私も大学時代、ちょっとの間某劇団に所属していましたが、マグカップを使って(正確には素手で)コーヒーを飲むとき、普通に飲むことを再現できませんでした。セリフもなかなか覚えられないのにも悩み、私はこの劇団を退部しました。体を使ってなにかを表現するのは、私では難しいと思ったのです。
さて、今日取り上げるのは、狂言師・野村萬斎さん。「狂言サイボーグ:日本経済新聞社
:2001年初版:本体1905円」。この本は、20代から30代にかけての野村さんの演劇論・随想録になっています。
そして単刀直入に「型」について書かれた部分を引用します。
例えば、「笑い」にも型がある。笑ったり悲しんだりといった感情表現は、西洋的にはそれなりの感情があった上で起こる行動と考えるのが一般的だが、狂言の場合はおかしくなくても、「型」というソフトを使えばスイッチが入ったように笑える。とにかく大きな声を出して笑う型をすれば、自己を発散できる。自然と気持ちがよくなっておかしくなくなってくるのだ。
まさにプログラミングなのだが、最初は意味がわからなくても手段を教わってしまえば、だんだんそれを使いこなした人のものとなり機能し始める。表現する行為は知識で教えられるものではない。日本の古典芸能はこうした洗練された手段を持った一つの文化なのだ。
12P
以後、体の各部位と所作の関係性がいろいろ綴られています。この視点からすると、以下の記事もなんとなく理解できます。
英国留学中、私はロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)にお世話になった。その劇団の作品中、ある女優が許婚の浮気に激怒して出てくる役を演じるのだが、声は荒げても身体、ことに歩き方が怒っていないのに興醒めした。我々能楽師・狂言師は「運び」といってスリ足のテンポ・強弱で感情をも表現するし、感情の変化に必ず身体的変化を伴うので、自然それを彼女にも期待してしまったからだ。
89P
狂言初心者の稽古は、まず理屈からではなく指導者の演じる「型」の模倣から始まるということですが、そこで習得された「型」は万能の演技を保障するものなのですね。「型」とはデジタルなもの、それを狂言師が演じる際、それに命を吹き込みアナログで・血の通った表現で・聴衆にプレゼントするのです。この本、「サイボーグ」という表現は、このような芸習得の結果出現したデジタルでもありアナログでもある狂言師・野村萬斎自身のことを語っているようです。冒頭に挙げた友人のお話も、一種の「型」について語っているように思います。
関連過去ログ:http://d.hatena.ne.jp/iirei/20131006#1381002952
「のぼうの城」〜人の和
今日のひと言:ともかく、身体を自在に使って演劇をするという行為は、素晴らしいと思います。生まれ変わったら狂言師になろうかしらん。「狂言サイボーグ」という野村萬斎さん自身の詩が巻末に載っています。良い詩ですよ。
型といえば、中国拳法の套路(とうろ)をも思い浮かべますが、模範的な運動にこだわる段階では「喧嘩に弱くなる」そうです。十分にこなして初めて拳法が生きるという意味で狂言に似ているかも知れません。
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今日の料理
@パセリ入り味噌汁
弟がパセリ・モスカルード(縮れた葉のパセリ)を買ってきました。日本では、刺身や牛肉に「オマケ」のように付いてくるけど、あまり使う人のいないパセリ。でもサイモン&ガーファンクルの「スカボロ・フェアー」では「♪パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」と歌われるほどの価値あるハーブです。これからいろいろ試してみようと思いますが、手始めに、味噌汁にトッピングしてみました。――美味しかったです。
(2014.11.29)
@縮みホウレンソウの胡麻和え
以前にも書いたように思いますが、冬場のホウレンソウは、霜に当たって甘さが増します。今回買ったのは、群馬県北部のJA利根・沼田が生産したものです。寒い群馬県と言えど、今の時期に縮みホウレンソウが取れるのは、この地方ならでは、でしょう。
(2014.11.30)
@パセリ入りさば缶・にゅう麺掛け
パセリを入れて卵とじにしたトッピングを、茹でたてのそうめん(にゅう麺)に掛けて食べました。美味です。
(2014.12.01)
@パセリ入りホットケーキ
パセリを使いついでに、ホットケーキに入れて焼いてみました。パセリの風味はあまり目立たないようです。
(2014.12.02)