虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

ヤクザの禅〜黄檗・臨済の系譜:これで悟れるの?

過去、3回ほど書いてきた禅(中国の唐代)の傑僧特集の一つです。思い出したように書いています。今回取り上げるのは黄檗(おうばく)希運(?−856)と弟子の臨済(りんざい)義玄(?−867)の逸話です。(なお、黄檗は巨匠・百丈の弟子で、これまた巨匠であるIZAN(潙山:いざん)と兄弟弟子です。百丈は、二人の傑僧を生み出したのです。)


 黄檗のもとで修行していた臨済、「悟り」までもう一歩のところで大きな壁にぶつかってしまいます。師の黄檗に聞いても、警策で打たれるだけ。これが何回か重なって、とうとう臨済黄檗の元を離れようと決意しますが、黄檗臨済に大愚という僧の元に行くように取り計らいます。


 さて、大愚のところにきて、黄檗のところでの経緯を臨済が話すと、大愚は「お前は大ばか者だ。黄檗のお前に対する扱いは、まるでおばあちゃんが孫を可愛がっているようではないか」と言います。


 この言葉を聞いた臨済、ふっと悟り、「黄檗の仏法も大したことはない」と呟きます。大愚は「先ほどは解らんと言い、今度はそんな大仰なことを言う、どっちなんだ」と詰め寄ります。すかさず臨済は大愚の腹を殴打しようとしますが、大愚が言うには「待て、お前を仕上げるのは黄檗の仕事だ。戻るが良い」と諭します。


そして、戻ってきた臨済黄檗が言うには「お前の回って来方はべらぼうに速かったな」これに対し臨済、「お師匠さまがおばあさん可愛がりだからでございます」
黄檗「大愚の奴、そんなことまで話したのか。おしゃべりめ。今度来たら痛棒を食らわせてやる」
臨済「なに、それほど待つ必要はありません。今すぐ打って差し上げます」と黄檗に平手打ちをかますのです。黄檗は満足して呵呵大笑した・・・という具合です。


 弟子が師を打ち、師がそれを喜ぶ、ということ、にわかには信じられませんが、実際こんなやり取りが行われたのですね。私なりに解釈すると、行為の主体が、彼我の間である場合、「行為をする・される」はコインの表裏みたいなもので、主体・客体を入れ替えても同じ行為を行う限りにおいて「等価交換」であるわけです。だから、黄檗臨済のような地位の交換が行われても不思議ではないわけです。あえて師を殴った臨済、殴られて弟子の成長を喜んだ黄檗。これも一つの師弟関係ですね。


 その臨済の弟子に定上座(じょうじょうざ)という僧もおり、この人も黄檗臨済の系統に繋がる人ですが、3人の僧に出会い、その内一人が「禅河は深いというが、どうしたら底まで窮められますかな」と皮肉たっぷりに定上座に訊きますが、定上座はその僧を目より高く持上げ、川に投げ込もうとします。


 これを見てあわてたのこり二名が必死に定上座をなだめ、川には落とされませんでしたが、定上座はこう言います「お二人のとりなしがなければ、この人に河の底まで窮めてもらうところでした」


 臨済といい、定上座といい、やることが非常にパワフルであり、ある意味ヤクザをも連想される悪辣な行為をやってのけています。


私が禅僧について書いたことの種本はいずれも「禅  現代に生きるもの」(紀野一義:NHKブックス)です。


禅僧シリーズの過去ログ
 
 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20060505  百丈
 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070425  IZAN

 http://d.hatena.ne.jp/iirei/20081003#1223017954 徳山



今日の一言:禅宗は、仏教と老荘思想の合の子のような性格を持つので、私が老子を読む際にも、参考にしています。なお、主体・客体の逆転的な事例は、老子にも出てくると思われます。私は、コインの表裏のような表現として老子の文章が書かれているように思うのです。たとえば「良く人を使う者は、これが下になる」と言った言葉。(68章)



禅―現代に生きるもの (NHKブックス 35)

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禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)

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今日の料理


ラタトゥイユ







フランス風野菜煮込み。暑い夏には冷製スープとして重宝します。今回使った食材は
ニンジン、タマネギ、ニンニク、ショウガ、トマト(ミディ)、ジャガイモ、オクラ、ナス、ベイリーフ(ローリエ)1枚、コンソメ2個、塩


タマネギ、ニンジン、ニンニクはフライパンで炒め、適量の水を張った鍋に移す。あとの食材は順次投入する。トマトの風味が効いていて、美味しいです。

 (2014.07.28)



バイアムのお浸し






ヒユ科の野菜で、「ジャワホウレンソウ」とも呼びます。野草でいえばアオゲイトウイヌビユの仲間ですが、味は繊細です。色も後者2つより薄緑色です。出来上がりの色も、これらより薄めです。シュウ酸を含むので茹でたあと、15分から20分ほど水に晒します。味付けは、シュウ酸をマスクできるカルシウムを多く含むカツオ節、ゴマなどと和えるとよいです。この野菜は、私が自然食系の八百屋でアルバイトしていた30年前ころから知っていましたが、さほど世間には浸透していないようです。

 (2014.07.29)






今日の三句


キャベツ畑(はた)
次に作れる
スベリヒユ





キャベツの収穫後、特に後作なく、スベリヒユが茂っているのを見て。スベリヒユは食べられる野草です。

 (2014.07.29)



この木,何の木?
ムラサキシキブなら
いいのにねえ。




それらしいもの

  わが家に生えてきたもの


破調の句。定型に纏まりませんでした。

(2014.07.29)




今年また
一番乗りの
出穂か





近辺の水田で、最も早く田植えをする農家の田で、やはり一番にイネの穂が出てきました。この農家は篤農家です。

 (2014.07.31)





我が街の花壇


本日、この通りを通りがかったら、私が(アイコンの画像にするほど)好きな「ランタナ」の鉢植えがあったので、他に何があるか見てみました。


ランタナクマツヅラ科。よく色が変るので「七変化」とも呼ばれる。



日日草ヴィンカ)。キョウチクトウ科。これがもっとも多い。色とりどりの5弁花は美しいが,毒草です。




ホウセンカ。ツリフネソウ科。これは案外珍しい。



マツバボタンスベリヒユ科。案外美しい。スベリヒユがお化粧したような草。



@ヴィンカ+ヒマワリ。これは組合わせが悪い気がする。



(2014.08.01)