PM2.5の実態〜黄砂との相乗効果
昨年あたりから、主に中国・北京の大気汚染物質として有名になってきたPM2.5。どんなものかと、「ここまでわかったPM2.5本当の恐怖―謎の物質を科学する」
(井上浩義:アーク出版)を読んでみました。(2013.7月10日 初版)
まず「PM2.5」という呼称についてですが、PはParticulate:微粒子状、MはMatter:物質の頭文字で、大気中を漂う固体、液体などの小さな「粒子状物質」のことです。そして2.5というのは「大きさが2.5μm以下の微粒子」であるという意味です。μm(マイクロメートル)とはmm(ミリメートル)の1000分の1で、極めて小さな物質なのです。環境汚染物質としての濃度の単位は「μg/m^3」です。花粉と比べても、相当小さい物質です。
ここに、PM2.5という括りは、大まかなもので、その物質が固体であるか液体であるかは問いません。また、自然由来であるか人為由来であるかも問いません。自然由来のものとしては中国の黄砂(ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠、黄土高原由来)、火山灰、塩・海藻、人為由来のものとしては自動車排気ガス、ばい煙、タイヤ磨耗粉塵、タバコ、野焼きのばい煙など。PM2.5はたとえば食材をミキサーにかけるとか、髪をドライヤーに当てるとかでも発生する、ある意味人間が活動すれば出てくる要素も多いのです。
PM2.5は固体の場合と液体の場合があると書きましたが、固体の代表・黄砂の場合の健康障害としては、あまりに小さな粒子であるため、例えば肺に入ると、粘膜にくっ付き、表面張力によって肺の水分を吸上げ、粘膜を傷つけ、その肺細胞は死にます。肺という器官は、傷つくと肝臓のようには再生は出来ず、肺機能は次第に低下します。
人体のなかでPM2.5に弱い器官を弱い順に挙げると、肺、目、腸の順番になります。そのメカニズムは黄砂の場合は同じですが、液体状のPM2.5の場合、その中身はSOX(硫黄酸化物)やNOX(窒素酸化物)など、大気中の光化学反応で硫酸、硝酸などの強酸になる厄介な物質で、これらは酸性雨の原因物質として以前から知られていました。もちろん、体内に取り込むと危険な物質たちです。
中国の場合、このような人為由来の液体状PM2.5が自然由来のPM2.5の黄砂と一緒くたになり人間を襲うのです。中国でのPM2.5汚染の場合は、日本やアメリカのような厳しいガソリンの成分基準の15倍は緩く、硫黄の含有量の多いガソリンが使われています。中国当局は改善しようとも思っているらしいですが、日本なみの基準をクリアーするには莫大な設備投資が必要なので、二の足を踏んでいて、その付け・・・PM2.5は朝鮮半島を経て、とくに西日本の九州地方、山陰地方に流れ込んでくるのです。もっとも、PM2.5はアメリカにも飛んでいくので、日本全土での危険性は棄却できません。当の中国人には、危機感がありません。でも、以下のようにあります。
清華大学等の発表によれば、2010年度に中国で寿命をまっとうできなかった人の約15%が、大気汚染が原因として疑われています。内訳は、脳血管疾患が約60万人、虚血性心疾患が約28万人、肺疾患は約20万人、呼吸器系がん約14万人、呼吸器感染症が約1万人で、合計では約123万人に上っています。
P97
では、当面の対策は・・・
@注意報が出ているときは外出しない
@口腔に付着したPM2.5は外出から戻ってきたら「うがい」で取り除く。PM2.5が付着した手は流水でよく洗う。
@マスク・・・ガーゼでも不織布でも、多重の布でできているマスクを着用。一重のものでも、いったん水に湿らせてよく絞ると効果的。
@目は洗浄液を使うより何度も洗うほうが良い。ただし、水道水には塩素が含まれているので洗いすぎない。(顔にもPM2.5が付着しているはずだから、顔から洗う。目の保護が大事)
@PM2.5で引き起こされた病状には、対症療法しかない。だからこそ、肺とか目はよくケアすること。
@空気清浄機は換気量よりフィルターの性能で選ぶ・・・たとえば「HEPAフィルター」を備えた空気清浄機は0.3μmまで取り除けるのでPM2.5にも効果的。
@分煙の徹底・・・PM2.5を職場に持ち込まない、発生させない
今日のひと言:最後に挙げた「分煙の徹底」に関して、タバコ吸いには耳の痛い議論が展開されています。いわく
35m^2の密閉した室内で、1人目がタバコを吸い始めたら、それまで30μg/m^3の濃度が400μg/m^3に跳ね上がり、2人目が吸ったら800〜1200μg/m^3になり、さらに3人目が吸ったら2000μg/m^3に跳ね上がった。(中国・首都医科大学環境衛生実験室)
P157−158
この本の中では、受動喫煙の問題点も鋭く突いています。タバコ吸いには耳が痛いです。
なお、PM2.5に関する情報について、複数のサイトが挙げられていますが
http://soramame.taiki.go.jp/DataMap.php?BlockID=08
環境省・そらまめ君
などが参考になるでしょう。
また、花粉とPM2.5の関係に触れたブログを引用しておきます。
PM2.5の大気汚染有害物質がスギ花粉にくっつくと、雨などで水分を含んだ花粉が爆発して粒子が小さくなり肺の奥まで入り込み、喘息や気管支炎などを引き起こし重症化すると言われています。
症状が軽いからといって、花粉症も軽視できないですね。
http://d.hatena.ne.jp/miyotya/20140301
:ほのぼの日記・「春は嬉し、辛し」より・・・花粉はかなり強固な物質ですから、それを破壊するというのは、大変なパワーを PM2.5は持っているようです。
もう一つ、hatehei666の日記では、PM2.5と糖尿病の関連性について書かれています。
http://d.hatena.ne.jp/hatehei666/20140318
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今日の料理
@リッツのナムル乗せ
私はヤマザキナビスコのリッツクラッカーが好きなのですが、チーズを乗せたり、ジャムを乗せたりして食べるのが定番ですが、今回は韓国料理のナムルを乗せてみました。コチュジャン込みで美味でした。韓洋折衷。
(2014.03.11)
@まるごとウドのショウガ炒め・アオサ添え
葉と茎の区別なく切りそろえたウドをしばらく酢水に漬け、ゴマ油+ショウガのすりおろし+醤油で炒め、仕上げにアオサを振りました。弟作。案外ウドの風味はショウガよりも強かったようです。
(2014.03.11)
@かき菜の和え物
かき菜(かきな)は、アブラナ科アブラナ属の野菜。北関東(特に栃木県佐野市など両毛地域)で栽培される伝統野菜で、「なばな」と同系統だが、セイヨウアブラナではなく、在来種のアブラナまたはその変種と見られる。
秋口に播種し、厳冬期を過ぎて春先に収穫するため農薬の使用頻度が少なく、1株から3回ほど収穫でき、高齢化が進む農家にとって比較的身体への負担が少ない特長を持つ。かき菜とは成長中の植物の若芽を掻き取って食用とする事から名付いたもので、万葉集に「佐野の茎立」として登場するなど、アブラナ属の植物が延ばす花芽は、古くから春先の野菜として重用されてきた。
3〜4月の旬にしか出回らない伝統野菜ならではの特徴を持つほか、栄養価(ビタミンやミネラル)は最近のF1ホウレンソウやコマツナを上回るうえに、1把が100円程度と安価である。
今回は、かき菜を茹でて、マヨネーズ・オイスターソースで和えました。思いのほか甘い=美味です。
(2014.03.12)
今日の一首
解体を
今にもされる
古屋敷
いくつのドラマ
なんじ見てこし
昔からの商店街の一角を占める建物が、解体されそうなのを見て。
(2014.03.11)