男は家屋を作り、女は家庭を作る(散文詩)
上に挙げた格言は、以前どこかで読んだものですが、なかなか穿った格言だと思います。男女の役割分担をうまく表現していると思います。家庭は、主婦の常日頃の努力で維持されるものですからね。また、家屋は男性の建築技術と体力で建てられるものですから、これもいかにも男性向きです。(「男は橋をつくる、女はそれを渡る」という格言もあります。この格言の場合、男が知恵と体力一切を使い、愛しい女のために橋を架けるが、女はその成果を気楽に利用するといった意味にも取れるでしょうか。)
だから、その分、夫(男)は貧乏くじを引くことも多いと思います。いつか、地元の豚カツ屋に食事に行ったところ、3歳児くらいの男の子が、さかんに電話をオモチャにして遊んでいました。その店を切り盛りしていたのは、もはや老年の夫婦でした。妻は三歳児の孫(おそらく)に「電話をいじってはいけないよ」としきりに注意していましたが、男の子はいたずらを止めません。最後に夫(三歳児からみれば祖父)が強制的に電話を取り上げました。男の子は泣きじゃくりましたが、夫はそのままにしていました。ここで妻(祖母)は、しきりに男の子の肩を持つような言動をしていました。この一幕を見た私は、一見さんだったですが、それ以後、その豚カツ屋には行かなくなってしまいました。
電話遊びをしてはいけないのだから、夫の取った強硬な措置は当然でしたが、妻の言動はどうなのか、と思うのです。悪い言い方をすれば、「ひとりいい子ちゃんをしている」というかのように、私には思えたのです。これはとてもずるい態度だと思うのです。男の子を泣かせた責任をすべて夫に押し付けようというような。
こんな格言もあります。「女は歳をとるほどまわりの人が増え、男は歳をとるほど孤独になる。」さきほど挙げた夫は、この格言の深層を見て暮らしているかも知れません。あああ、男って、損な役回りです。一方の妻はもう成長した孫に、いまでも慕われているのかも知れません。夫のほうは、敬遠されるかも・・・男は、優しい言葉によって考えを伝えるより、実力行使をする場合が多いのかと思います。
かつてのNHK朝ドラの「あすか」は、竹内結子が主演して話題になりましたが、実家の京菓子屋が一家離散の憂き目に会いかけたとき、祖母(有馬稲子・演じる。またナレーションも兼ねる)が「女の出番です」といい、その通り、一家を纏めるのに成功したという逸話もあります。
戦争を止めさせるのも、女の仕事です。「世界史こぼれ話」(三浦一郎)によると、ローマ軍が他国と干戈(かんか:戦争すること)を交えようというときに、女たちが「わが子よ!」「わが夫よ!」と叫びながら戦場に「乱入」して、兵士は戦う意志がなくなった・・・とあります。これが女が家庭を作るという言葉の醍醐味ですね。
男と女、この相容れない両性がともに暮らす不思議さよ。
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