NUMOのネコババ・・・原子力行政の今
ここに、図書館から借りてきたDVDがあります。「知ってなっとく!地層処分」(48分)というもので、経済産業省と資源エネルギー庁の外郭団体であるNUMOが資料を提供し、経済産業省と資源エネルギー庁が制作したものです。
ここに、NUMOとはNuclear waste Management Organization of Japan ・・・原子力発電環境整備機構という長い名称を持った団体です。このDVDは、原子力廃棄物の地層処分について一般国民を啓蒙する趣旨で作られたもののようで、4章構成からなり、1章(ナビゲーター:萩尾みどり)は廃棄物を地層処分することの必要性を語り、2章(中村浩美)では地層処分の実際を述べ、3章(ダニエル・カール)では海外の核廃棄物の処理事情を述べ、4章(大山のぶ代)では廃棄物の処分場が決まるまでの手続きとその後の展望が語られます。
問題の核心は、地層処分の方法です。高レベル核廃棄物をガラスと溶融して閉じ込めた「ガラス固化体」をステンレスの筒(キャニスター)に入れ、ベントナイト(粘土の一種)に包み、地下300mの深さに埋め込むというのです。この深さは東京タワーの高さに匹敵するほどの深さです。
このように廃棄すると、(地表に比べ)水の流れが遅いので、水による腐食を受けにくく、また土が核廃棄物を吸着し、また酸素濃度がほぼ0ppmなので酸化もおこりにくい・・・といったようなメリットが謳われています。こうすれば以後、放射能が減衰するまで、人の手は要らない・・・このように杤山修(とちやま・おさむ)・元東北大学教授は説明しています。
ただ、そんなに理想的な処理になるのでしょうか?たとえばガラスは数百年で流れます。たとえばステンド・グラスは作った当初は平たくても、数百年で下の部分にガラスが流れます。それでキャニスターが腐食することはないでしょうか?なんといっても数万年保管して放射能レベルを下げるという発想ですから、先が長いのです。それほどの期間、ガラス固化体がもつのでしょうか。もし、数万年の管理の途中でキャニスターから放射能漏れがあった場合、どう対処するのでしょうか。また、処分地は深く穴を掘るため、それだけに地下水脈を絶つこともあるのではないでしょうか。
地震や火山による破局(カタストロフ)についてはどうでしょう。このDVDでは日本に最終廃棄場の適地はいろいろあると主張していますが、いやいや、どうして、活断層や火山は至るところにあるでしょう。
このDVDを作った経済産業省と資源エネルギー庁は、昔から(改組する前から)人をだます宣伝をしてきました。たとえば「Pu(プルトニウム)は、飲んでも体を素通りするから安全」とか。
でも、プルトニウムは極微量でも、肺に入ると、100%に近い確率で肺がんになる、恐ろしい元素です。このような不都合な情報は隠蔽(いんぺい)する体質を、原子力業界、原子力行政の当事者は持っているのですね。こんなのが彼らのやり口なのです。
また、最終処分場に選定された自治体は、豊富な交付金が得られ、この事業に関して雇用が生まれ、さらには観光地にもなる(!!)、と謳っていました。そんなアホな・・・建設自体、この処分場は100年かかるそうです。
今回の経済産業省と資源エネルギー庁の戦略は、原発反対派の「いったん出来た核廃棄物の管理には数万年かかる、そんな負担を後の世代に背負わせていいのか」という論点に答える形で練られたもののような気がします。「ああ言えばこう言う」ですね。
今日のひと言: でも、私は思うのです、「ネコババ」とは「ネコがウンチをした後、糞の上に土とか砂とかを撒き、そ知らぬ顔で行ってしまうこと」で、派生的には「物をこっそり盗むこと」という意味があります。こんどこのブログでは、さだめしNUMOがネコで、核廃棄物がウンチである、と思われてしまって、しょうがないのです。たとえ300mの覆土があったとしても。まあ、今度の福島第一原発の事故で原子力行政は修正か見直しを必要とされるようですから、この地層処分も行われなくなる可能性もありますね。
今日の一句
麦の穂の
風に揺られて
縞模様
強風のなか、揺れる麦の穂が、全体でなんだかカスケード・ラインを見せているのを見て。
(2011.04.27)

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