二人の女性科学者:コワレフスカヤとロザリンド・フランクリン
ジェンダーと芸術・科学シリーズ その3 (科学)
(ジェンダー:gender:社会的、文化的意味づけされた男女の差異・三回シリーズ・最終回)
特に、科学の分野では、女性は男性より劣っている、という世界共通認識が抜きがたくあります。でも、例外もかなりあって、その彼女たちは、男性顔負けの活躍をすることがあります。
物理学・化学のマリー・キュリーが代表的な天才女性学者ですが、「諸科学の女王」である数学にも、超ど級の天才女性数学者がいます。その名はソフィア・バシリーブナ・コワレフスカヤ(1850−1891)。大数学者ワイエルシュトラスの薫陶を受け、1874年「偏微分方程式論」でゲッチンゲン大学の博士号を取ります。これは、数学史に残る大論文でした。
ソフィアは、若い頃、6歳上の美人の姉に、両親の愛情が集中し、愛に飢えて育ちます。(もっとも、ソフィア自身相当な美人だったそうですが)たまたま壁紙に数学、たとえば教科書の三角関数のページが無造作に張ってあるのを見て、それらを暗記し、三角関数の諸性質を「だれにも教わらず」理解したといいます。
そして、彼女は数学を究めるために、偽装結婚をして、ロシアを出ます。(その当時、才能のある女性がとる選択肢の一つが、この偽装結婚なのでした。)
ただ、彼女は数学のほかにも詩、小説の才能があり、恋にものめりこみます。奔放な性格・・・愛されたいという渇望の上に?なお、彼女の小説「ラエフスキー家の姉妹」も評価が高いそうです。
ソフィアの場合、女性数学者であること、しかも超一流の数学者であることに、男性の嫉妬の念が向けられましたが、本人のもつパワーと少数の理解者に支えられて数学者として生き抜いたというわけです。
さて、もう一人とりあげるのは、ワトソン・クリック・ウィルキンスらによるDNAの二重ラセンという、相対性理論、量子力学とならぶ発見とよばれる研究について関わった女性科学者です。ロザリンド・フランクリン。
舞台はイギリス、ケンブリッジ大学とキングズ・カレッジの間です。生化学者ロザリンド・フランクリンは、キングズ・カレッジでDNAのX線解析の研究をしていましたが、研究室のウイルキンスとは仲が悪く、ロザリンドはワトソンやクリックにも冷たかったですが、彼女がいない隙に、ウィルキンスは彼女の研究データをワトソンに見せてしまいます。お宝をもらったワトソンはケンブリッジに戻り、クリックたちとDNAの二重ラセン構造を決定し、三者でノーベル賞を分け合うことになりました。
ノーベル賞は3人までの共同受賞が認められ、また、死者には与えないことになっていたので、発表当時すでに死んでいたロザリンドには授与されませんでした。・・・これって大いに不平等です。ロザリンドはDNAがラセン構造をしていることは認めませんでしたが、そのデータは、直接的に大理論のもとになったのですから。イギリスでは科学はあくまで男性のやるものという固定観念があり、ロザリンドは、その犠牲者といえるかも知れません。研究一筋・・・彼女がやった仕事は、地味な研究であり、このような我慢強さを要求される分野では、男性より女性のほうが勝っているようで、科学と一口に言っても、向き・不向きがあるのですね。
今日のひと言:女性科学者については、フランスがもっとも寛容であるらしいですね。
今回は「科学者の女性史 コワレフスカヤからマクリントックまで」宮田親平:創知社・1985年初版に基づきました。なお、表題にあるマクリントックは、アメリカの遺伝学者で、トウモロコシを使って、「DNAは、環境の変化に対応して、形や位置を変えることがある」という新発見をして、1983年のノーベル生理医学賞を単独で受賞した、コツコツ研究をするタイプの女性学者でした。ちょうど日本の今西錦司氏のような視点の研究結果でしたね。
科学者の女性史―コワレフスカヤからマクリントックまで (1985年)
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蒲公英(たんぽぽ)の綿毛
蒲公英の綿毛
飛ぼうか、飛ぶまいか
迷っている。
このふわふわした綿毛、
同じキク科の植物の中でも
群を抜いて美しい。
いったい、この白い手毬、
何面体なのだろう?
自然という数学者が作ったのか?
(俳句で)
蒲公英の
造化(ぞうか)の妙や
白綿毛
(2011.04.24)