ウサギは慈悲心を持つ菩薩(ぼさつ)だ・・・ピーターラビットの耳
http://www.worldfolksong.com/songbook/japan/usagi.htm
仏教説話集ジャータカに綴られた献身ウサギの運命は?
むかしむかし、インドにサルとキツネとウサギが仲良く暮らしていた。ある日三匹は、やつれて倒れている老人に出逢った。三匹は老人を助けようと考え、サルは得意の木登りで木の実や果物を集め、キツネは素早い駆け足で川から魚を獲り、老人の所へ運んできた。
ところがウサギだけは、どんなに苦労しても何も採ってくることができなかった。何とか老人を助けたいと考えたウサギは、サルとキツネに火を焚いてもらうと、「わたしは何も持ってくることができません。せめて私の肉を召し上がってください。」と言い残し、火の中へ飛び込んだ。
倒れていた老人は、実は帝釈天であった。ウサギの捨て身の慈悲行に感心した帝釈天は、ウサギを月へと昇らせ、永遠にその姿をとどめさせた。月に見えるウサギの姿の周囲に煙状の影が見えるのは、ウサギが自らの身を焼いた際の煙だという。
「うさぎ 日本の童謡・唱歌・わらべうた 歌詞と視聴」より
なんと、「うさぎうさぎ、何見てはねる・・・」という唱歌には、ここで触れたような深い意味があったのです。また、月にウサギが住むという話も、この仏教説話がもとになっているのですね。これは、唱歌の世界のお話ではなく、現実の自然界でも起きうる現象です。ここに私とブログ仲間FTGFOPさんの間で交わされたコメントを持ってきます。
http://d.hatena.ne.jp/FTGFOP/20100329/1269815723 から。
FTGFOP:しかしネズミやウサギの、他の動物に食べられるのが前提で、子供をたくさん産むっていうのは、これは生存競争が激しいというのか、それとも激しくないというのか、激しく気になるところではあります(笑)
iirei:最近読んだ本「性器の進化論―生殖器が語る愛のかたち」(榎本知郎:化学同人)によると、ウサギやネズミは一回の性交で、確実に子を宿し、妊娠した最中でも交尾―妊娠ができるとか。
かれらは「捕食される」のを前提にこのような多産システムを作ったのであろう、とありました。生存競争の激しさをかたる話だと思います。なお、この本、いやらしいエロ本ではなく、ちゃんとした啓蒙書でした。
また、人間の場合、女性が排卵するとき、卵子は9割がた間引かれるといいますし、精子は精子で、卵子にたどり着くものはほんのわずかなのだそうです。このように厳しい性細胞の競争があるというのは、人間がそれほど増えない、厳選した子を産むための戦略かも知れないですね。
FTGFOP:iireiさんはずいぶんと色々な本を読んでいるんですね。「性器の進化論―生殖器が語る愛のかたち」とか、自分は間違いなく手に取らないと思います。夏休みの宿題かなにかで、無理やり読まされるのでもない限り。
もちろん普通のエロ本なら、よろこんで手に取りますけどね。むしろ「なんで図書館にはエロ本ねーんだよ」って、文句を言いたいぐらいです。だってやっぱり、エロ本には男子の夢がたくさん詰まっていると思うし・・・・・(笑)(注:私、森下もそう思います。)いや、エロ本じゃなくて、ウサギやネズミの話しでしたね。「捕食される」が前提って、つまりは「私を食べて・・」って、そういうことなんですかね。自分を犠牲にして他の生物を生かすとか、ここまで心が広いと逆にどうなんだろう・・・・・って考え込んでしまいます。自分なんかは。しかし、ウサギが妊娠中にさらに妊娠できるとか、ちょっとすごいですね。なんかエイリアンみたいだ。そこにビックリしてしまいました。
以上のように、ウサギは、「食べられること」を前提にした生活を営んでいるのです。そうでなく、体に武器を備えたウサギに進化してもおかしくないのに・・・現実のウサギの姿は「まさに私を食べてください」といった、冒頭に挙げた、慈悲心の強い、まるで「菩薩(ぼさつ)」のような生き方を選んでいるのです。
今日のひと言:ビアトリクス・ポターの「ピーターラビット」でも朝いた家族が人間に捕まり食べられるという残酷な話もありますし、ピーターラビットも、その耳を全開にして、生存を期さなければなりません。そのような生活にも喜びを見出すのがウサギという生き物でしょうか。
BGM:ピーターラビットとわたし(大貫妙子)
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さて、2010年の本ブログは、これにて終了。来年は「うさぎ年」ですね。皆様によいことがありますように。