ウェブはバカと暇人のもの(書評)
中川淳一郎の作品。フルネームは「ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言」(2009年4月:光文社新書)。でも、この種の本は過大な表題をつけることが多く、この本もその例に漏れず、「ウェブ上のマーケティング論」というあたりが妥当ではないでしょうか。
あくまでネットビジネスに携る者の視点から現在のウェブ環境を切っているのです。
まず、「バカ」と「暇人」の反対語として「リア充」という言葉が当てられます。これは、「実生活(リアル・ライフ)が充実した」人たちに被せられる、半ば侮蔑的な言葉だそうです。これらの人びとはブログをいかにお金に交換できるかをまず考える人だといいます。
「暇人」がやることと言ったら、なんだか非難の声の上がっているブログなどに行って、自分もネガティヴな書き込みをしてそのブログを「炎上」させるという行為を連想しますが、確かにこの本でもそのような事例が上がっています。「バカ」という言葉についてははっきりこういう人びとのことだとの明言はないですが、文脈から伺いしれます。
例えば、ネットはテレビを超えた・・・と言いつつも、実際にはネット上ではテレビネタが満載で、どこにもネットの良さが解らないのだそう。一方、週刊誌などの雑誌からはほとんどネタが取られない・・・私は結構雑誌をネタにしますが、大部分のネットユーザーにとっては、より手軽に情報を得られるテレビのほうが優れているのでしょう。このような人は、テレビでなにかの商品が推奨されると、なだれを打つようにその商品に殺到します。この辺が「バカ」である証(あかし)なのでしょう。
そしてブロガーの大部分が好むネタは、雑談と・それをする居酒屋のようなもので、決して高尚なものではない。いわゆるB級のものが好まれる。商売のターゲットをこのレベルまで下げなければネットビジネスは成り立たないというのです。
そのための注意5か条が挙げられています。(P158)
1) ネットとユーザーに対する性善説・幻想・過度な期待を捨てるべき
2) ネガティヴな書き込みをスルーする(注:やりすごす)耐性が必要
3) ネットではクリックされてナンボである。かたちだけ立派でも意味がない。そのために、企業にはB級なネタを発信する開き直りというか割り切りが必要。
4) ネットでブランド構築はやりづらいことを理解する
5) ネットでブレイクできる商品はあくまでモノが良いものである。小手先のネットプロモーションで何とかしようとするのではなく、本来の企業活動を頑張るべき
これらの心得は、ネットユーザーをターゲットとする企業戦略のためのものだと言えるでしょう。
今日のひと言:中川氏は、ネットユーザーに働きかける仕事を選んでしまい、現在のネットユーザーの質にえらく落胆してしまったのでしょう。だから副題に「現場からのネット敗北宣言」という言葉を当てたのでしょう。
特にマーケティングを商売としてやっていない1ブロガーの私としては、それほど悲観的ではありません。確かにネットの世界には「バカ」も「暇人:私も現在このカテゴリーに入ります」もいますが、クリック数(PV)の多寡によって、すべてのブログがランク付けできるとは思っていません。優れたブログが、あまりPV数が多くない状態で埋もれているかもしれません。そんな素敵なブログ、またブロガーに出合える愉しみもあるというもの。
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ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
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今日の一首
犬二頭
虚空にしゃべる
主なり
大事な時も
ケータイするか
犬の散歩中、ケータイを使っている男性を見て
(2010.12.05)