虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト。森羅万象、色々な事物を取り上げます。元元は災害に関するブログで、たとえば恋愛なども、広く言えば各人の存続問題であるという点から、災害の一種とも言える、と拡大解釈をする、と言った具合です。

私がこの世で出会った最大のバカ(散文詩)


・ ・・「それは、私自身だ」という月並でありふれた言葉を吐く気にはなりません。確かにその言葉がよく似合う人物がいる(いた)のです。


 私にとっては、1年3ヶ月という長期に渡って勤めた「キノコ栽培・販売会社」・・・Uキノコセンターと呼んでおきましょう。


 この会社の専務がその人です。会社の実権を握っていたオッサンです。なぜ社長がこの専務に頭があがらないのか・・・それは昔の会社存続の危機の際、社長は雲隠れし、専務が陣頭指揮に当たったのですね。それで復帰後、専務に口答えできなくなったのです。


 専務のバカっぷりは、主に3つの行為からなっていました。


1) 社員をえこひいきする・・・なんだか色気のある女性パート職員にからきし甘い。キノコの仕事はいきものが相手なので、年末年始もあまり休みがとれません。でも、その彼女は堂々と連続して正月休みを取っていました。また、単なる1パート従業員なのに、ほかの部署の仕事にも口出しします。穏やかなおじさんも怒るほどに容喙(ようかい:口だし)するのです。

  また、パートの主婦従業員は、年間に稼げる給料の額の上限は決まっていて、それ以上には稼げないのですが、彼女はタイム・カードを2枚使うことで抜け道としていました。

  会社では、専務と彼女が「出来ている」と、定説になっていました。


2)間違えたキノコ栽培法に固執する・・・とくにシメジヒラタケ)の場合、栽培には湿気と(それに反して)風通しが必要なのに、自分の考え方にしがみつき、湿気ばかりかけていました。「マイタケ」や「エリンギ」の場合は、その栽培法でよいのですが。

 その結果、シメジは販売のときになると、腐って売り物にならなくて、なんと、「別のキノコ会社からシメジを買って」(!!)販売していました。


 これほど、シメジが取れないなら、自分の考えを改めるべきに、それをしない・・・バカのバカたる証です。

 当然、シメジ部門は大幅な赤字になっていて、専務は自分の田畑を売ってしのいでいました。でも、それほどの財力があることを、なんだか誇らしげでした・・・

 それにしても、絶対腐るに違いない栽培をやらされる社員の身にもなってほしいですね。それは一切合切社員のやる仕事が無駄になるということでもありました。


3)ゲスのカングリをする・・・私がこの会社にいた時期、友達として親しくなった配送員の女性、私は彼女と県庁所在市にお酒を買いにいったことがあり、私が上述の理由をもって会社を辞め、ささやかなお別れ会に彼女と、もうひとり男性がひとり来てくれたのですが、この場でならいいか、と私は彼女と酒を買いに行ったことを明かしたのですが、この男性は粗忽もので、専務にこの話をしたようで、専務は彼女に「不倫をしているから首」と言い渡したそうです。私と彼女は「単に一緒にお酒を買いに行っただけのことであり」、やましいことはなにもしていませんでした。それを「不倫」と呼ぶのは専務がゲスのカングリをしていたからに違いありません。自分がそうだから、人もそうだ、と思い込むのでしょうね。彼女が不倫していたのが事実であるとしても、「首」はないでしょう、首は。筋が違います。


私は会社を辞めました。その後、専務は病院に入院し、彼の庇護下にあった色気のパートさんもそれと軌を一にして会社を辞めたそうです。理由は「健康を損ねたから」。
 もちろん、本当は専務の後ろ盾がなくなり、居場所にこまったからでしょうね。


今日の一句


木枯らしや
土に帰るか
木の葉たち

老子の言葉を思い出し・・・)