虚虚実実――ウルトラバイバル

森下礼:環境問題研究家、詩人、エッセイスト:色々な事物を取り上げます。

アニメ・「豆しば」の含み笑い


 あなたは、テレビを見ていて、こんなコマーシャル・アニメを見たことがあるでしょうか。

1)美味しいワインを飲みながら、その風味をなにかに例えるグルメの女性。そこにスープが運ばれてくる・・・そしてそのスープに入っている「ひよこ豆」が「ボンジュール!」と声を掛け、女性も「ボンジュール」と答えるが、その豆が「ねえ、知ってる?ナマズは全身に味覚があるんだって。」・・・食欲をなくす女性。 「ひよこ豆しば」の回


2)ある夜、バーで、女性が男性にしなだれかかってくる・・・「しめしめ」と思いピーナツを一口食べようとするとそのピーナツが、「ねえ、知ってる?キスをすると、1秒間に2億個の細菌が口のなかを行ったり来たりするんだって。」・・・萎える男性。 「ピーナツ豆しば」の回。


 これまでこんな話が十数話くらい作られていますが、大抵の場合、「豆しば」の教える豆知識によって、食品を食べる気を登場人物がなくします。そして、画面が変わり、意地悪な「豆しば」の含み笑いが響きます。

 これらのシニカルなキャラクターは一括して「豆しば」と呼ばれ、私の知るかぎり、テレビ朝日系のアニメ「スティッチ/怪談レストラン」(火曜日19:00−20:00)とかテレビ東京系の「ドーラ/ヒーローマン」(木曜日17:30−18:30)などを視聴すると見られます。


 ただ、ユニークなのは、その番組のスポンサーが入れるCMとは別枠で放送されることです。それでスポンサーが怒らないか、というと、そうでもないらしく、この豆しばCMの続編を見たくて視聴する子どもも多いかと思われます。小学生女子の90%は、「豆しば」を知っているそうです。

こう言うCM形態をPT(Participation)と呼ぶようです。

パーティシペーションとは、日本の放送局において番組中に番組提供の広告主以外のCMを放送する事を指す。スポットCMの一種である。語源は、「関与」「参加」を意味する「participation」から来ている。
タイムCMと異なり、番組制作費を負担する必要がなく、セールス料金が比較的安価である。この場合、番組枠では提供クレジットを入れず、CMを放送する。複数の企業がランダムに流れるものもあれば、タイムCMと共存して流れるものもある。後者はタイムCMを1社流した後に複数の企業がランダムに流れるものもあれば、タイムCMと紛れて1社だけ流れるものもある。中には、時間帯を限定して特定の広告主のCMを放送するものもある(いわゆる「固定取り」)。番組表などでは、前述の「participation」から採った「PT」、もしくは「各社」と表記される場合が多い。

Wikipediaより。

そして大手公告代理店の電通が創作したのが「豆しば」なのですね。「豆しば」は「豆」でも「柴犬」でもないとされています。電通がこのキャラを作り出したきっかけは以下の通りです。

 電通には、テレビ関連のCMや企画を扱うテレビ局という部門がある。これまでアニメーション番組では「NARUTO」や「BLEACH」などに携わり、そのキャラクタービジネスにも取り組んできた。そしてネットなどの台頭によって、地上波のメディアパワーが以前よりも落ちている現状を打開しなければならない。そこで、電通テレビ局企画推進部プロデューサーの山西太平氏らのメンバーに、当時のテレビ局長から新しいビジネスモデルにも果敢に挑んでみろという話があったことに端を発している。
  昨今放映されているアニメ番組は、ほとんどが原作ありきのものだ。著作権の問題もあり、原作者・出版社と関わる人も会社も増え、キャラクタービジネスの自由度はどうしても低くなる。そしてもう一つ、少子化によってキャラクタービジネスの市場自体が縮小しているという問題がある。これらが、このプロジェクトを立ち上げる動機の一つとなった。

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20080820/1017752/
より。


 今日のひと言:さきほどの例で豆しばのために気分を害された男性の場合、「細菌=ばっちい、汚い」というイメージがまず浮かんでしまい、キスをする勇気も萎えてしまったのですね。でも、その2億の細菌こそ、彼女が彼に渡せる最高の贈り物であるかもしれません。2億もの細菌があれば、男女お互いにとって有益であることだってあるのでは?と思います。細菌が「悪玉」だけとは限らないのです。このCMは、「現代の超清潔社会」を助長するので、あまり良いCMではないかもですね。

「豆しば」のHP(テレビドガッチ):
http://dogatch.jp/anime_kids/mameshiba/top.html
ここを訪問すれば、TVアニメを見ないでも「豆しば」を見られます。

なお、「豆しば」は現在、書籍の世界にも進出していて、「主婦と生活社」より、5巻ほど市販されています。(冒頭の画像)B6判のこのシリーズのうち「豆しば  豆しばとアラスカの冷蔵庫」を入手しました。その中から面白い話をひとつ。

「ねえ知ってる?日本がアメリカと大平洋戦争に突入したとき、なにか勇壮な曲をラジオで流せといわれたNHK鹿児島支局の職員は知らずに、アメリカの国歌を流しちゃったんだって。」
うん、必ずしも食べ物の話だけではないんだな。


なお、先に触れたキスに関して、唾液には抗老化作用もあるとこの本の中で触れられていました。