資本主義が変な点は、数え上げればキリなくあるでしょうが、その一つに「右肩上がり」の経済成長をやり続けなければならないという不文律の存在があるようです。昔、音楽家の山本直純さんがTVのCMで「大きいっーことはいいことだーー森永エールチョコレートっ!!」と歌っていましたが、まあ、そんな感じですね。
この前、NHKの経済番組を見ていたら、「キリンホールディングス」と「サントリーホールディングス」の合併話が話題になっていまして、日本の人口(=消費者)数が減少するだろうから、「右肩上がりの」経済成長を続けるために、海外、とくに東南アジア、オセアニアの需要増をもくろんでいるというわけです。
でも、「右肩上がり」の経済成長を維持して、どんなメリットがあるのでしょうか?温室効果ガスは確実に排出量が増えるでしょうね。そして海外に工場を展開して、国内の事業がおろそかになれば、デフレになるし、失業者も増えます。これまでの自動車、家電業界で起きたことが飲料業界でも起きるのは確実です。
それにしても、中国のリーマン・ショックからの立ち直りは早い。昨年2009年の第四4半期の経済成長率は前年同時期の10.7%増し、10%超。この勢いはだれにも止められません。この国では資本主義が、世界で一番機能しているようです。そして軍事費も毎年10%の増強ぶりで、いずれは沖縄を傘下に入れてしまうでしょう。こうなると、日本もただではすみません。一国二制度・・・この世界に類を見ない施策は、うまく回転しているようですね。畏るべし、中国。
他にもおかしな点があるので、列挙してみましょう。
2)「釣り三昧」で生きているひとに、会社の経営を奨める人がいて、だんだん段階的に会社を大きくして、最後に会長に収まれば、毎日釣りができるぞというお話です。「なーんだ、俺は今すでにその釣りをしている」という落ちです。「会社拡大」が単なる茶番になってしまいます。これには、同様の意味の別ヴァージョンがいくつもあるようです。
3)ただ穴を掘って、また埋め戻すという「無意味な」行為も、給料の対象となる点。まあ、水道管を埋めて戻すという行為は、意味あることですが、それなしに工事をしても、給料がもらえるということが変です。
4)市場経済・・・「キャベツ」が豊作なら、素直に喜ぶべきに、市場価格を維持するために、トラクターを畑に入れ処分する。そして少なくなったキャベツを高く売る。豊作なら、皆で分け合えばいいのですが、それをしないことがおかしい。
5)商品の差別化。ほとんど中身は変わらなくても、表面的な包装で差別化し、より良いと消費者に思わせ、高く売る。客は、相対評価でのみ、商品を選び、その商品の絶対評価にまで眼が行かない。「あほ」な消費者が増える。=本当に必要とする商品が何なのか、解らなくなる。エコカーという商品もこの種の違いを狙ったものに過ぎないと思います。
6)資本家は、より人件費の安い国や地域に工場を移転させるのが鉄則。その際、国内の中小企業はもとより、国民たる労働者の生活の糧を奪っても、意に介さない。
7)会社の労働組合は、たとえば「水俣病」などの深刻な公害問題が起きると、社会的正義のためではなく、企業をサポートする立場に立つことが多い。むしろ、問題の解決の邪魔者になる。
8)自由と平等がキャッチフレーズなのに、いざ自由競争をすると、平等な結果にはならない。貧富の差が生まれ、ジニ係数はかぎりなく1に近くなる。(ジニ係数とは0−1の間で変動する指標で、0なら格差なし、1なら超格差社会であることを示す。)
これについて、過去ログ「竹中平蔵の再就職」
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20091112
をご覧ください。
マックス・ヴェーバー(マックス・ウエーバー)の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に書かれているように、禁欲的なプロテスタントが、利潤を追及する集団に変化したあたりから、世界中、資本主義の矛盾が招来されたのかな、と思います。もともと、「宗教的な思いいれのある資本主義」ですから、この世界観から抜け出すのは大変だと思います。そして、右肩あがりは、資本主義が崩壊するまで奨励されるのでしょうね。
ラテン民族には、昼にゆっくり休みをとる「シエスタ」という風習がありましたが、見習いたいものです。
今日のひと言:200年前の産業革命、それとそのころできた諸制度はすでに制度疲労を起こしているようです。共産主義でもなく、資本主義でもない制度の構築が望まれます。そのためには、「停滞・穏やかな衰退する国家経済を織り込んだシステム」が必要になるでしょうね。
それには、ノルウェイの政策が参考になるようです。かの国は産油国であり、枯渇したあとのことも考えて国づくりを進めているそうです。それこそ正に「停滞・穏やかな衰退」を前提とした国つくりです。
ちょっと関係ある過去ログ:超地域流通貨幣・ガロア
http://d.hatena.ne.jp/iirei/20070704
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